米調査会社ギャラップによると日本企業の熱意にあふれる社員の割合は約6%であり、アメリカの32%に比べて大幅に低く、139か国中132位と最低ランクにある。人は人生の大半を自分や家族を養うために働くが、その仕事に多くの人がやりがいを感じていない現状は大きな問題であるといえ、将来的な日本の発展のためにも個々の仕事に対するやる気を向上させることは必要不可欠だと考える。

 

社員のやる気が低下している原因の一つとして賃金と時間がリンクしていることがあげられる。日本企業は短時間で結果を出しても9時から17時までは会社にいなければ賃金が控除されてしまう仕組みになっている。そのため仕事を早く終わらせても仕事に従事していなければならず、グダグダした極めて希薄な時間を過ごさなければならなくなり、社員の働くインセンティブの低下を招く。また、このように守らなければならないルールを増やし、社員の束縛を強化していくことをオーバーコンプライアンスと言い、こうした動きは社員が少なからずリスクが伴う新たなチャレンジに挑戦することを阻む。結果的に社員に成功の喜びを味わわせない組織を作り出し、社員自身も情熱ややる気を見いだせない状況になるのだ。

 

二つ目の原因として会社が人材の得意分野を最大限に活かしていないことがある。多くの先進国では人材の専門性を生かすために適材適所に人材を会社の部署に配置するが、日本企業は個人の強みよりも新入社員に「経験」を積ませるために会社が分野外の部署へ配置することが多くある。これでは効率性を欠くとともに、やりたいことができない社員のやる気は大きく下がり、近年顕著である若者の離職率の増加にもつながっている。私の知り合いは大学時代に理工学部で勉強をし、就職の際には強みを生かそうと技術部署を希望したにも関わらず、いざ入社すると営業に回され、やりがいを感じておらず退職を考えている。こういった現状は個人にかかわらず、日本全体の課題であると指摘ができる。

 

ここまで、私は社員のやる気がないことを組織のせいだと述べてきたが、原因は個人にももちろんある。日本は教育上、嫌なことを拒否してはいけない方針をとってきていて、その方針は日本人の細胞レベルにまで浸透しているだろう。しかし、やる気や熱意を感じられないような仕事を我慢しながら使命であると感じ、一生涯同じ事をやり続けることが正解だとは到底思えない。また、そういった人々がやりたくないような仕事はAIといったテクノロジーが取って代わろうとしている時代に我々は突入しつつある。このような時代に適応していくためにも今から多少のリスクが伴ったとしても、熱意の感じることのできない仕事に終止符を打ち、経済的に打撃があっても人生をより豊かにしてくれるような仕事を求める少しばかり楽観的な視野をも持ち合わせることも重要になってくるのではないだろうか。