イラストレーター村田峻治の日常 -456ページ目

負け続けのアメリカ軍【ハートロッカー】

この映画には勇ましい戦闘シーンも無ければ、明らかな敵も存在しない。

【The Hurt Locker (2008)】
アニメーター村田峻治の日常-Hurt Locker

英雄もいなければ、ただ淡々と死の恐怖に苛まれながら任務をこなしてゆく危険物処理班の姿を描いている。

ハリウッドの戦争映画としては極めて地味なのだが、映画が発する緊張感は本物だ。

雰囲気的には中東戦争を舞台にしたイスラエル映画『キプール』に良く似ている。

第二次大戦。太平洋を挟んで米軍は初めて文化も宗教も異なる日本と戦って勝利した。

思えばこれがアメリカの果てしない負けの歴史の始まりだったのだ。

朝鮮では痛み分けという形で未だに休戦という名の有事状態にあり

その後のベトナムでは日本にやった様に国を焦土にすれば勝てると思っていた。

だが、現実は未知のジャングルでそれまでの火器も戦術も戦略も役に立たず惨敗だった。

湾岸戦争では多国籍軍でイラク軍をクウェートから追い出す事には成功したが、フセインは健在だった。

ソマリアでは這々の体で撤退を余儀なくされた。

21世紀に入って、ジョージ・H・W・ブッシュ大統領の息子ジョージ・W・ブッシュは

父の果たせなかったフセイン打倒のために大義の無い戦争を始めた。

フセイン政権は倒れたが、イラクという国で米軍はその後疲弊し、ベトナム以来の戦死傷者を出している。

要するにアメリカは日本以後、戦争に勝った事はないのだ。

オバマ大統領はアフガンに注力するといっているが、結果は同じだろう。

第二次大戦には有った大義はベトナム以後の戦争にはなく、PTSDになる帰還兵を多数生み出し続けている。

この映画には少なくとも反戦や反ブッシュといったテーマは表に出ていない。

爆弾処理を通じて、イラクで何が起こっているのかを出来るだけ忠実に見せようとしているだけだ。

だからこそ重みがあるように思う。

はっきりいって、監督のキャスリン・ビグローは元夫のジェームズ・キャメロンより映画監督としての才能は上だろう。

キャメロンの映画は映像的には凄いし、カタルシスもあるのだがリアリティに欠けると思うのだ。

興行的には『アバター』の圧勝であるが、オスカーの頃には幾多の賞を総なめにした『ハート・ロッカー』の影に消えてしまった感がある。

余談だが、監督のキャスリン・ビグロー、女性監督とは思えない程のGUNフェチの様だ。

今作でのバレットライフルの描写もそうだし

初期の『ブルースチール』という作品のオープニングではこれ以上無いくらい銃をエロティックに見せている。