二度目の闘い-外国人より(第 2 部)
僕は出張で2週間ヨーロッパへ行くことになり、その間彼を一人置いて行くことが辛かった。僕は空港から彼に電話し、毎日連絡すると言った。ヨーロッパにいる間僕たちは毎日トーク。家族以外にも僕のことを思い、愛してくれる人がいることが僕は本当に嬉しかった。彼からはヨーロッパ土産は何も頼まれなかったが、僕は彼にたくさんのお土産を用意した。帰りのフライトでは彼のことしか頭になかった。東京に帰った翌日に彼と会った。お土産を渡していると、彼はチョコレートをあーんして食べさせられたがった。僕にはとてもロマンチックなことに思えた。 そうしている間、彼は違う仕事に挑戦し、そしてようやくいい会社に転職することができた。僕はそんな彼に本当に喜んだ。面接のときは彼のために祈った。前の仕事では彼はとにかくひどい状態で、ストレスまみれ、会社で寝ることもあったくらいだ。彼の転職が成功した時、僕は地上で最高の幸せ者だった。祈りを聞き届けてくれた自分の神に何千回も感謝した。お祝いに彼をゴーカートに連れて行くことにした。また仕事に休みをもらって、一日彼と過ごした。ゴーカートからの帰りは僕の提案でショッピングモールへ行き、転職のお祝いにフォーマルなシャツを買ってあげた。ドライブ中、カーナビに漢字で行先を入れてもらったのだが、急いで入力した彼は入力ミスをしてしまった。日本人が漢字を間違えたらダメじゃないかと僕は彼をからかった。(これはその前の晩テレビ番組で見たジョークで、僕はそれを真似てからかっただけ、その時は特に深く考えることもなかった。)次の週は彼を温泉に連れて行って、ディナーをご馳走した。帰り道彼は気分が悪くなり、僕の手を握って肩に寄りかかって眠った。その日も彼は僕に愛してると(いつものように)言って、キスをして別れた。まさかこれが彼との合うのはもこれで最後、その時の僕には想像さえできなかった。僕たちはLINEでトークを続けたが、3、4日ほどしてから彼が前のように返信してこなくなったことに気が付いた。次の週末、何があったのか彼に聞くと、彼は爆弾を投下した。僕と絶えずやり取りをすることに疲れた、と。少しずつ「フェードアウト」しようとしたが、しつこく聞いてくるなら悪いけどもう会うつもりはないと言うしかない、と言う彼。僕は夢でも見ているのかと思った。これはただの悪夢ですぐに目が覚めるはずだと。でも、現実だった。僕が何を間違ったのか、何をして彼を傷つけることになったのか聞いてみたが、文化と育ちが違うからもう僕とはやっていけないと言うばかり。電話をかけてもとってもらえず、できるだけ早く会って話し合おうというメッセージを何度送っても返事は一通も来なかった。彼は自分をオフ状態に切り替えてしまった。僕は裏切られ、恥をかかされ、拒絶され、失恋した。どうすればいいのか考えられなかった。彼に会うまでは、僕は自分の家族と幸せに暮らしていたのに。自分の生存が全て彼にかかっているかのようなこんな関係に、僕は自分で自分を引きずり込んでしまっていた。僕の家族のことや、文化や育った環境が違うという事を最初からわかっていたはずの彼が、なぜ今になってこんなことをするのか僕には理解することができず、近くの公園へ行って2時間ほど泣いて過ごした。僕は無力感でいっぱいだった。何が突然彼を変えてしまったのだろう。この瞬間まで全くそんな兆候はなかった。ちょっとした言い合いをした時でさえこんなことは一度もなかった。まるで生きたままナイフで心臓をえぐられるような痛み。かつて僕を救い、癌からも守ってくれた神様が、この状況から僕を救ってくれないことにひどい怒りを感じていた。気分は最悪で、その夜は催眠剤を飲んでも一睡もできなかった。その晩ずっとなぜこの関係が壊れたのかを考えるうちに、自分が彼の職場と住所をちゃんと知っていることを思い出した。僕は自分の弁護士に電話し、とある人物に金銭的に騙されたとアドバイスを求めてみた。(彼との関係の詳細は伝えずに。)翌朝僕は彼が実質僕を「殺した」のだというメールをした。その日生きながらにして僕の魂は死んだのだと思ったから。既に弁護士に相談したということ、彼の職場にこのことを知らせて彼の家族にも会いに行く予定だと伝え、金銭的利益のためにこんなことをしたんだろうと彼を責めた。(それが事実ではないということはもちろんわかっていたが、彼が僕とのコミュニケーションを拒絶する以上、こうして脅すのが彼から返事を得る唯一の方法だと思った。)前日は僕の電話を受けることも折り返してくれることもなかった彼だったが、このメールを受け取るとすぐに電話をかけてきた。心を傷つけはしたが、仕事や家族に害を成すようなことは何もしていないと彼は言ってきた。仕事や家族に迷惑をかけるようなことはないと信用していたのに、その信用を台無しにするようなことを僕がすべきではない、と。僕だって彼がこんな風に関係を壊すことはないと信用していたのだと言うと、彼からの返答はなかった。もし金銭的利益のためにこんな関係を持ったと思っていたのならお金は返すとも言ってきたので、僕の気持ちと一緒に過ごした時間にいくら支払うつもりなのかと聞くと、それへの返答もなかった。前に付き合っていた人が一人で映画を観に行くのをひどく自分勝手だと言っていたことがあったが、それに比べてこの彼の行為はどう思うのかと聞いたが、それにも返答がなかった。基本的に、彼は全く答えを持っていなかった。沈黙が全ての音をかき消していた。僕はかつてこれまで、こんなに急に誰かが行動を変える様を見たことがなかった。電話で話していた相手は、一週間前にデートしてさよならのキスをした彼とは別個の人間だった。どうしてこんなことになっているのかわからなかった。僕は完全に現実から目を背け、話さえできれば彼がきっと間違いに気づいてくれるはずだと思っていた。でも、そうではなかったのだ。月曜日、最悪の気分で仕事に出たが、高血圧状態に陥り、昼頃には意識が朦朧としていた。いつもはとても明るい自分がそんな状態になっていることに同僚達は皆驚き、とても心配してくれた。そして、4日間の入院。僕の家族は何が起こったのか知らなかったし、こんなことになってしまって家族に対する僕の罪悪感もひどかった。病院で僕は彼に、彼がしたことはひどい、関係を終える前にちゃんと話をすべきだったとメールした。僕個人だけでなく、僕の家族にも影響しているんだとも説明した。彼が入院した時は僕がそばにいたのだ、今度は彼が僕のそばに来てくれるはずだと期待してしまっていた。だが、彼からの返事は何もなかった。そんな非情な人間と関係をもった自分を呪った。退院後、僕は彼に電話し、この別れの「本当の」理由を聞いた。彼は、お祝いのシャツを買いにショッピングモールへドライブしていた時に僕が口にしたジョークが嫌だったらしい。そんなちょっとしたジョーク一つが理由になるとは思わなかったが、彼曰く、精神的な疾患があって投薬も受けており、こんな「ちょっとした」ジョークが彼にとって実際には「大したこと」になるのだそうだ。自分の耳が信じられなかった。彼に対する僕の気持ちも、彼のために僕がしてきたことも、すべて結局彼にとっては大したことでも何でもなかった。彼にとってはこのちょっとしたジョーク一つが大問題だった。ストレスのない生活をするために馬鹿げたジョークを勧めてくれたインドの医者達が恨めしかった。僕としては、ただ彼を愉快な気分にさせようとしていただけで、こんなことが別れをもたらすだなんて思いもしなかった。うちの会社では日本人の社員達は皆もっとひどい冗談を言い合っているけど何も問題はない。こんなことで別れるなんて馬鹿げている、僕はまだ彼を愛しているし彼のことを今も思っていると言ったが、彼は石のように黙ってしまった。これ以上彼に何を言っても無駄だった。彼のこの完璧な移り身の早さに僕は唖然としてしまった。彼は本当に人間なのか、それともどこか遠い星からきた異星人じゃないのか。彼は何の感情も見せなかった。(僕が前に癌になってこんなジョークを言うようになったという説明を聞いてもなお、彼は全くの無表情だった。)日本人は冷たいと聞いたことはある。でも、自分が経験するのはこれが初めてだった。自分が愛し思いを寄せる相手からの冷淡さに、僕は心を折られた。一夜明けて、彼は別人になった。声は自分の知っている彼のように聞こえるが、彼の口から出てくる言葉はまるで怪物のもののようだった。こんな別れの理由を受け入れることはできなかったが、僕の意見など役に立つわけがない。人との関係を築くには二人の人間が必要だが、一人が止めれば、その関係にはもう意味がない。もしそんなにそのジョークが嫌だったのなら、どうしてその後で僕からのプレゼントを受け取ったり、温泉に一緒に行って、僕の肩にもたれて眠ったりキスをしたりしたのかと聞いてみたが、答えはなかった。僕は彼の亡き父親(会ったこともなく名前すら知らない人だけど)の霊に、彼の正気を取り戻させてくれと祈り続けてもみたが、何の役にも立たなかった。答えをどんなに探してみても、僕にはわからないことだらけだった。どうやったら防げたんだろう。まだ二度目のデートでどうして手を握ってきたんだろう。僕が既婚者(しかも最初に会った時に恋人にはなれないとちゃんと言ってあったのに)だと知りながらなぜ愛を告白してきたんだろう。彼は僕にもっと何かを求めていたのだろうか。もしそうならそうと言ってくれれば、僕だってわかろうとするだろうし終わりを見出すこともできる。それなのに、どうしてそんな馬鹿げた言い訳をしなければならなかったんだろう。癌には勝てたのに、自分の心との闘いに負けてしまったような感覚。ゴールデンウィークが終わり仕事に戻ったがまるで集中できず、セラピストの所に通うことになった。日本人のセラピストはきっかり2分間僕と会話した後、うつ病だという診断をして抗うつ剤のSSRIを処方してくれた。抗うつ剤を飲み始めたら、高血圧のせいで動悸が激しくなり、症状は悪化した。抗うつ剤を止めて、英語が通じる精神療法科医の所に通うことにした。このセラピーに通うようになってから、症状の治療そのものよりも、別れの時彼の頭にあったことを理解しようとすることにより関心を持つようになった。セラピストの先生はこの話に驚きながらも、どうして彼がそういうことをしたのか考えられる理由を聞かせてくれた。僕が提供した限りある情報のみからではあるが、彼が自分から故意に失敗をセッティングしているのではないか。失敗することに安心を見つけようとする。自己評価が低く、自信がない。失敗する方法を自ら探し、自分が被害者であることを確認する。かつて虐待された経験が年月を通して知らぬ間に彼をうつ状態にしてしまった可能性もある。彼には、いい人間関係を築くために手本となるような素晴らしい人に会ったことがないのかもしれない。幸せや喜びを経験すると、そうした感情が彼にとっては生々しい恐怖となるのかもしれない。(そうした感情を知らないから。)もしかすると、彼が離れたのはそれが原因かもしれない。本当は彼こそがカウンセリングを受ける側なのかもしれない、と。この説明が僕の苦悩を終わらせてくれたかと言えば、答えはNOだ。自分がまるで他人の感情のゴミ捨て場のように感じてしまう。彼は、彼の感情のまま求めるものを満たすために僕を利用したのであって、それが終わった今僕はゴミ箱に投げ捨てられたことになる。僕は強く、自信もあり、一応成功もしていて、精神的に健全な人間だった。でもこの経験で僕は打ち砕かれ、悲嘆に暮れてしまっている。自信を全て失い、自分の価値を信じられなくなった。仕事でトップを走っていても、4週間ろくに仕事ができなかった。こんなことが自分に起こるのなら、誰にでも起こり得る。今も続くこの痛みは、癌との闘病生活に比べることすらできない。僕の家族にとっては理不尽なことであり、そのことへの罪悪感もまた毎分毎秒僕を苦しめる。後日、日本人の友人達とこの経験について話したところ、外国人という立場のせいで別れの「シグナル」を見逃していた可能性について指摘された。彼らの意見は尊重したいが、僕らの間に気まずさのようなものを感じたことは一瞬たりともなかった。上に書いたように、最後のデートの帰り道、僕が運転している間中ずっと彼は僕の手を握って僕の肩にもたれていたし(そうしてくれと彼に頼んだわけでもない)、家へ送り届けた後はキスをして「愛してるよ」と言ったのだ。それが1週間後に別れるという「日本的なシグナル」だったんだろうか? もしそうなら、外国人だからこのシグナルにまるで気付かなかった、ということになる。普段の僕はプライベートをしっかり守る人間で、自分の気持ちを話したりすることはないのだが、日本人読者に僕の経験を知ってもらい、それについて意見を聞かせてもらいたくて、今このブログを書いている。日本人の皆に、ストレート、ゲイ、バイ等問わず、是非考えてみてほしい。僕の考えでは、「フェードアウト」とか「Ghosting/ゴースト化」とかいうのは別れの方法としては受け入れられない。日本人が対立を嫌うことは知っているが、振られる相手の立場から考えてみてほしい。時間も気持ちも多くを費やし、時には必死に働いて貯めたお金すらも使い、相手との関係を築いているのだ。別れる時にはちゃんと終止符を打つ必要があるんじゃないか。生きていくために僕達はいつも相手を必要としている。だから、もしもあなたが何の理由も説明もなしに、誰かの人生からいきなり「フェードアウト」しようとするなら、その前にもう一度よく考え直してほしい。(特に、もしあなたがその関係を始めた側ならなおさら。)相手に対してフェアじゃないし、失礼な行為だと思う。あなたを「いい人」にしてくれる行為では決してない。逆にこんなことをするのは臆病者じゃないだろうか。愛し思いを寄せる相手にすら相対することができないのなら、人生において一体他の何に相対することができるというのか。僕はこの辛い経験をしてから、ネットで日本在住の外国人の女性やゲイの男性が書いた、日本人の恋人がいきなり何の前兆もなしに、跡形もなく去ってしまい連絡が取れなくなったという体験談を数えきれないほど読んだ。彼氏が誰かに殺されたんじゃないかと本気で心配して警察に行ったという人もいた。どの人も皆、長い時間をかけて乗り越えようと今も必死に頑張っている。文化や常識が違うというのはわかるが、これはあまりにも残酷な仕打ちだと思う。日本人らしくあることよりも、まず一人の人間であることを思い返してほしい。人として本当の思いやりとは何かということを考えてみてほしい。日本人はこれが普通というのはこんなことをする言い訳にはならない。愛してくれている人に理由も告げず突然関係を断ち切ってその人の人生から消えようとするなんてあまりにも非情じゃないだろうか。もし精神状態が悪いのなら、助けを求めてほしい。パートナーとよく話してほしい。最後まで先延ばしにして別れる時になって切り出すなんてことはしないでほしい。そんな気持ちはどうにもできないから。抗うつ剤や薬剤は全てを治療してくれたりしない。カウンセリングも必要になる。関係を断ち切るのは数分でできるけど、いい関係を築くには何年もかかる。関係を断ち切って一人になるのは解決策じゃない。人間関係は食べ物や水のような人間が根本的に必要とするニーズの一つで、このニーズをおろそかにしてはいけないと思う。こんなひどい経験を味わった僕は最初、日本人は皆こうなんだと結論づけようとしてしまっていた。日本人は感情を伴う関係を持つことができないんだ、と。でも、そんなステレオタイプは絶対に間違いだとわかっている。たった一人のひどい行為に対する僕の怒りや憤りを日本人全てへの憎しみに変えることはない。僕は意識して努力し、他のバイやゲイの日本人と話をし、この経験をシェアしたりしてみた。素敵な人達にも会う事ができ、一人はこのブログを日本語に訳すのを手伝ってくれた。(原文は英語。)こうして文章にするのはとても大変で痛みをも伴う作業で、これを書きながら何度も泣いたけど、こうして文章化して日本人の読者に読んでもらう必要があると思った。もし、たった一人でも、これを読んで自分のパートナーに本当の気持ちを正直に伝えてくれたなら、成功だ。もしたった一人でも、これを読んで関係を修復するためにカウンセリングに行ってくれたら、それも成功。僕は今でもまだ立ち直ろうとしている途中で、この喪失感は言葉にできるものではない。彼と過ごした短い時間で彼の存在はもう僕の一部になってしまった。彼の友情は僕にとってとても大きな意味があった。ヒューマニティを信じていた僕の一部は死んでしまい、もう二度と誰も信じられないんじゃないかと思ってしまってもいる。それでも、呼吸するたびに彼のことを思い出し、彼は新しい仕事でうまくやってるだろうかと考えてしまう自分がいる。毎日彼のために彼が成功するようにと祈る自分がいる。もし彼が今でも精神を患っているなら助けてあげたいけど、僕との対話を拒絶する彼をどう助けてあげればいいのかわからない。祖国へ帰ることすら考えた時期もある。でも、日本は今では僕のホーム。たった一度のひどい経験を理由に、何年もかけて苦労して築いてきたものを全て捨て去ることはできない。僕の家族にとってもそれはフェアじゃない。自分の人生の糸をまた少しずつ拾い上げて歩き出さなければならない。レインボーブリッジの写真を見るたび、ディズニーランドの写真や花火を見るたび、スターバックスのカフェモカを見るたび、セブンイレブンに並ぶ(彼がはいていた)トランクスを見るたび、彼のことを思い出す。彼との思い出から抜け出すことはできないけど、思い出と闘うのではなく、それと一緒に生きていく方法を学ばなければならない。自分の健康状態を思えばストレスは最悪だけど、今のところはそんなストレスとも付き合っていくしかない。それでも、僕はきっと乗り越えられると思う。以前も乗り越えたし、今度も乗り越えてみせる。とても長くなってしまったけれど、読んでくれてありがとう。コメント欄に是非コメントを書いていってください。Two things are very difficult in life. "Hello" for the first time to an unknown person and "Good bye" for the last time to whom you really love.人生では2つのことが非常に困難です。未知の人に初めて "はじめまして"とあなたが本当に愛している最後の時間に「さようなら」(終わり)