ダサイ子
「ダサイ」なんて今時 使わないよね。
これは僕が幼稚園の頃のお話。
その子のあだ名は「ダサイ子」
氏名からきている。「○田 サイコ」さん なんだ。
「彩る子」なわけだが・・・
約30年経った今でも僕は彼女を思い出す。
彼女は・・・
バナナの皮の白い部分を美味しそうに食べる。
「ほら ここも食べられるよ いっぱい食べられる感じでいいでしょ♪」
と ほんと美味しそうに 僕に勧める。
僕は食べたくなかったので
「そんなに好きなら 僕の分もあげるよ」とプレゼントした。
バナナの皮をもらって大喜びのダサイ子ちゃん。
ちょっとかわいそうになってくる。
何かのお遊戯の時間。
ダサイ子ちゃんと僕は向かい合って座った。
ダサイ子ちゃんはスカートだった。
そして大股広げていたのでパンツが丸見え。
僕は「パンツが見えてるよ」と教えてあげた。
(今の僕なら教えないで黙って観賞するだろう)
そしたらなんとダサイ子ちゃん・・・
「そんなに見たいなら見なさいよ!ほらほらほらっ!」
と パンツどころか 中身まで見せてくれた。
今の僕なら嬉しいことこの上ないのだが
当時の僕は困り果てた。
「そんなに見たいなら」 って 誰もそんな事言ってないしね・・・
いやぁ しかし 願ってもないチャンスだよね。
今なら頼んだって誰も見せてくれないよね。
そんなダサイ子ちゃんの将来の夢は女優。
叶ったかどうかは・・・
TVで見かけないから 叶ってないんだろうな・・・
キレイなおねーさんは好きですか?
答え 「YES!」
が、しかし・・・
僕の職場にいるキレイなおねーさんは例外。
僕の先輩のその人は、ホントにキレイだ。
そしてすごく我侭で、気分屋だ。
人の意見はまるで聞かない。
聞いたとしても、気に入らず怒る。
「相談があるんだけどさ」と言いつつ
彼女の中ではほぼ決定していることで
聞いて欲しいだけにすぎない。
家で嫌なことがあると職場であたりちらす。
僕が「今日も荒れてますね。あんまりあたらないでくださいね。」
などと言おうものなら、すぐさま一発殴られる。
言う僕も悪いんだけどね。
とにかく皆、彼女の機嫌を損ねないように必死だ。
「おはよーござーまーす」
この瞬間が一日を左右する。
自然と緊張も高まる。
機嫌がいいとその日一日和やかな空気で店は包まれる。
悪ければ・・・ 僕は一日で3キロ痩せる自信がある。
そんな彼女のいいところは
・・・・・
・・・
・
僕にはわかりません。
でも、いつも強がって肩肘張ってる彼女も
本当は弱くて、寂しがりやで、涙もろくて・・・
だったらいいな・・・と思う今日この頃・・・。
あれから僕は
高校生の頃、10年後の自分を想像して作文を書いた。
というか、書かされた。
若いとは素晴らしい。夢が叶うと信じて疑わない。
まぁ、将来を絶望的にしか描けない高校生もどうかとは思うが。
その頃の僕はいじめられっこだった、小学校からの筋金入りだ。
そんな僕が描いた将来は
「誰よりも幸せになる!」 だった。
漠然としすぎている。
あれになりたい、これになりたい、ではなく「幸せになる」だ。
で、その願いが叶ったかというと
10年以上経った今、まぁ・・・
「不幸ではない」かな・・・
金持ちどころか、連れの借金に悩まされる毎日。
そのおかげで贅沢すら許されない。
働けど働けど暮らしは楽にならず。
でもまぁ、住む所はあるし(賃貸だけど)
食べるものには困らないし(実家が農家だから)
着るものも困らないし(おしゃれには無頓着)
それなりに生きているので、よしとしよう。
ここだけの話だが、
本当はその作文には
「誰もが羨むくらい幸せになる」と書いてある。
同情されることはあっても、羨まれることはないので
大人な僕は「誰もが羨む」の部分は見なかったことにするんだ。
ナオトの恋の行方
ナオトは僕と同い年。
乙女チックな男だ。
優柔不断で人の上にたつような男ではないんだけど
あれでも一応店長だ。(僕は認めてないけど)
そんなナオトが恋をした。
相手は取引先の銀行の窓女性。
容姿は普通、声が少し鼻にかかってて可愛い女性だ。
なんとその女性、僕の同級生だったりする。
ナオトが思いを馳せ始めたのは去年の夏。
当時ナオトには長く付き合っている彼女がいた。
僕はその彼女と結婚するんだと思っていた。
時が経つにつれ、その女性への気持ちは増し
彼女への気持ちは薄れていった。そしてナオトはついに彼女と別れた。
それからというもの、ナオトは暇さえあれば
「同級生だろ?食事に誘ってくれよ」と繰り返す。
仕事も手につかない様子だ。
(元々、仕事が出来る方ではないんだけどね)
えーい、鬱陶しい!
仕方なくその女性を食事に誘った。
あまり親しくもないのでとりあえずメールでね。
が・・・。
返事きませんよ・・・?
やっぱ あれですか?定期の一つも組まなきゃだめ?
ナオトのために定期組んじゃうのか僕・・・。
返事が来ないまま僕はこれから出勤だ。
はぁ 憂鬱だ・・・。
その後のユウコ
ユウコが退社して数日後・・・
本社宛てにユウコからメールが届いた。
ちょっと抜粋
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仕事をさせて頂き感じられた面に
「お酒」には「叫び」いえ、「訴え」があると聞いています。
特に「ワイン」は良く聞きます。
「商品を目の前にし何を感じますか?会話ができますか?」
と自分に感じ取らないと実際に味わう事にはわかりません。
私には「お酒」には大幅に苦い思いはあり、
時折「お酒」に丸く人間が団体にわきあい合い、笑い
声の和を願いたいものと思っています。
仕事の個性の能力と同時に現実は
「何より自分が1番感じると思います」
体の作用にも適度なら度を越えると控えた事もあり、
ドクターストップもありました。
そして、言葉にするのは心苦しく言えませんでしたが今
「ワンカップ」に頼りにしているのは他ではありません。
人の個人差に理解はないと思いますが
魔よけ、除霊の効果あります。
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ん~。
ユウコが何を言いたいのか、僕には解りません。
僕の頭が悪いからでしょうか。
まぁ、スタッフ全員解らなかったんですけどね。
なんかコワイよね。ユウコ。
近付いちゃいけないニオイがするよ。
街でばったり会いたくないね。(政は会ったらしいけど)
この他にも、旦那が店に電話をよこすなど
何かとお騒がせなユウコ。いい加減勘弁してください。
このクソ忙しい時にあなたにかまってられないのです。
ユウコが去った後
店の前で交通事故があったり
店内の空調が壊れたり
熨斗紙ライターで「祭礼」が「祭霊」と変換されたり、と
なんだかちょっと怖いのは僕だけ?
そして一昨日、ユウコが作業着を返しにやって来た。
手土産にまんじゅうを持って・・・。
「皆さんで食べてください」
それだけ言って帰っていった。
他に言うことないのかよ。
そのまんじゅう、誰も食べてません。
だって怖いじゃん?
おなかこわしたらイヤだし。
ユウコなおばさん(2)
その日ユウコは具合が悪いからと早退した。
嘘っぽいとは思っていたが、やはり嘘だった。
昼過ぎにユウコから電話があった。
ユ 「ユウコです。今、お話してて大丈夫ですか?」
純 「あー。大丈夫ですよ。どうかされましたか?」
ユ 「あのぉ、私、何か迷惑かける様な事しました?」
純 「は?」
ユ 「みんなで私の悪口いってるでしょ!」
おぃおぃ、なんだこのおばさん。
純 「悪口なんて言ってませんよ」
ユ 「言ってるでしょ!人間性全部否定してるじゃない!」
「言いたいことあるなら直接私に言ってよ!」
純 「悪口ではありませんよ。あなたの仕事っぷりを上司に伝えてるだけです。」
「それにあなたの人間性をどうこう言えるほどあなたを知りませんし」
ユ 「毎日毎日、声が小さいっていうじゃない!私を否定しないでよ!」
純 「うちは接客業なんです。声を出してもらわないと」
ユ 「声が小さいのも、元気なさそうなのも、覚えが悪いのも、それが私なのよ!」
あーあ。居直っちゃったよ。
それから数十分、わけのわからない話が続き
「私が何をしたって言うのよ!」
プ、プー、プー、プー・・・
電話切られちゃいました☆
数時間後、ユウコはまた電話をよこした。
今度は僕じゃない人が対応した。
同じようなやり取りをしてるみたいだ。
僕は電話のわきで一部始終を聞いていた。
対応してる人も飽きてきたらしく、お絵かきしはじめた。
が、お絵かきの手が止まった。
「私もうそんなところで働く気ありませんから!」
そう言い残して、また電話きりやがったよユウコ。
一同 唖然・・・
翌朝、本社から電話があった。
「ユウクさんからこういう理由で辞めるってメールがきてるんだけど」
えぇー!? 店舗の問題であって本社は関係ないのに~!?
恐るべしユウコ。ごめん僕、ユウコをナメてたよ。
そこまでする人だったんだね。
まぁ、説明したら本社も解ってくれて御咎めなしだったけどね。
しかしユウコ・・・
僕の時間を返してくれ・・・
僕はやらなきゃいけないことを後回しにして
あなたの教育に打ち込んだんだ・・・
明後日の棚卸まで僕はきっと徹夜だよ・・・。
ユウコなおばさん(1)
今月16日その人はやって来た。
「はじめましてユウコです。宜しくお願いします」
新しいスタッフだ。歳は41歳・・・。
41歳のはずなんだけど、かなり老けて見える。
そしてなんとも言えない独特のニオイを発している。
かなり苦手なタイプだ・・・。
「はじめまして、純大です。宜しくお願いします」
ということで、新人教育が僕の仕事になった。
年上を教育するのは気を使うので嫌いだ。
物覚えも悪いし・・・。
しかしユウコは予想をはるかに超えていた・・・。
覚えが悪いとかいうレベルではなかった。
話は聞かないし、メモをとらせてもメモが間違っている。
僕はわりと気が長いほうなんだけど、さすがにキレそうだ。
熨斗の書き方を教えるのに「純大」と書いてみせると
「あら~ そういう字なのね~」って、おぃ。
「今は僕の名前の話をしているのではないので・・・」
ユウコはとにかく声が小さい。
訛っているので聞き取れない。
お客様から逃げる。っていうか お客様をシカト・・・。
お前、にわとりかよっ!ってくらい聞いたことを忘れる。
まったくやる気がない。
ほんと困ったユウコだ。
数日が過ぎてもユウコは相変わらずだ・・・。
僕はユウコが苦手というか、うけつけなくなってきた。
ユウコが発するニオイ、オーラ、全てが僕を切なくさせた。
一週間が限界だった・・・。
つづく・・・
同じ姓の男
僕には一緒に暮らしている男がいる。
僕は戸籍の上では女なので、所謂 配偶者ってやつだ。
とんでもない男だがそれなりに感謝している。
例えば、女らしさを強要しないところ。
今の僕にはそれが一番助かることかな。
それはさておき、昨日、仕事を終え家に帰ると
「ねぇねぇ、○○の近くに羊がいるんだよ!
草をもしゃもしゃ食べてたよ! これから見に行かない?」
おぃおぃ あんた今何時だと思ってんだ、21:00だよ・・・
羊も寝てるって・・・ っていうか、第一声がそれかよ。
「おかえり、お疲れ様」 だろ 普通。
そのあとも彼はずっと羊の話をしていた。
羊を見つけた興奮が冷め遣らぬ様子・・・。
今度の休みに、えさでも持って見物に行ってやろう。
羊の好物ってなんだろう?
涙の理由
夕飯を済ませウトウトしていた20:30。
滅多に鳴らないケータイから軽快な着信音が流れる。
某ビール会社のCMソンjグ・・・ 後輩のサチからだった。
おぃおぃ、休みの日くらい休ませてくれよ、なんて思いながら
「おっつかれ~!どうした~?」と爽やかに応答する僕。
「・・・・・・」
反応なし。 っていうか・・・ 泣いてる!?
困ったぞ 女の子が泣いている・・・。
話すこともままならないくらいしゃくりあげている・・・。
「今、何処にいんの?」
「み、店(職場)ですぅ・・ぅっ・・ぅぇ・・・」
「よし 今から行くから待ってろや」
「うっ、うっ、はぃ・・」
あ~ぁ、行くって言っちゃったよ。
ダメなんだよねぇ、僕って・・・ こういうの 突き放せなくて・・・
脱ぎ捨てられてたジーンズを穿き、Tシャツは・・・ このままでいいや・・・
急いで車に乗り込み、向かうはたばこ屋。
話が長くなると予想される場合、たばこは必需品だ。
服装OK! たばこOK! あ、寝癖! ま、いいや!(だめだろう)
ケータイが鳴ってから15分後、店に到着。
照明が落とされた駐車場にサチはいた。
泣きやんでいたように見えたが、僕を見つけた瞬間
また大粒の涙が溢れ出した。
政が絡んでいることはなんとなく予想していた。
政は根は真面目だけど気が短くアツイ男だ。
見た目怖そうでちょっと近寄りがたい感じなのだが
人なつっこい性格なのか、お客様にウケがいいのだ。
サチへ近寄り「どうした~?」と訊ねると
「ごめんなさい たいした事じゃないんですけど・・・」
またこみ上げてきたのか、言葉になっていない。
「ここじゃなんだから、車に乗りなよ?
あ、事務所のほうがいいかな?まだ空いてるよね?」
あっさり事務所へ向かうサチ。
そんなに僕の車に乗りたくなかったのか・・・?
まぁ、どっちでもいいんだけどね。
涙の理由は予想通り政だった。
政がサチに伝達したことをサチがもう一度
政に聞きなおした事が政は面白くなかったらしく
「同じこと二度言わせるな!!!」とキレらしい。
くだらない・・・ くだらなすぎる・・・
そんなことでキレるなよ っていうか、泣くなよ。
どっちもガキすぎるんだよ まったく。
そう思いながらもサチを慰める僕って・・・
それから一時間サチの愚痴をたっぷり聞いた。
最近家庭がうまくいっていない事、
何をやっても空回りしてしまう事などなど。
話し終えてすっきりしたらしく
「今度飲みに行きましょうね!」と元気に帰って行った。
はぁ・・・
その飲み代、どうせ僕が払うんでしょ・・・
「飲みに連れて行ってくださいね♪」の方がかわいいと思うよ・・・。
僕の名は
僕の名前は純大(じゅんた)。もうすぐ30歳。
戸籍上は女だけど、将来は男になるのが夢だ。
僕は酒屋に勤務している。スタッフ7名の小さな量販店だ。
僕の地位は上から三番目で、後輩が4人。いわゆる中間だ。
上司と後輩の間で胃を痛める毎日を送っている。
そんな僕の日常、甘く切ない恋のお話、家族の事を
気が向いた時にちょろっと書いてみようと思う。
ヘタレだから今日が最初で最後って事もあるかもねぇ。
