最近、各地で農産物を荒らしたり住宅地にまで出没するようになった獣類を害獣として駆除するという自治体が増えているそうです。
害獣といっても、鹿、猿、猪、狸、熊といった普段は山奥にいそうな野生獣のようで、山に餌が少なくなっていたり、農作物の美味さを覚えてしまったり、民家のゴミが餌になることを知ってしまったなどの事が原因のようです。
害獣と名指しされた野生獣は、特に人間様に危害を加える意図が有っての事では無く、ただ単純に生きるために餌を漁っているに過ぎ無いのですが、人間様に被害が発生すると、害獣と決めつけられ、駆逐され、果ては命まで奪われる訳です。
従来からあるカラス問題と似た側面も有りますが、カラスが主に生ゴミに集るのに比べ、害獣は農作物を荒らすという点で、両者は全く異なり、人間様にとっては駆逐すべき害獣と判断する要因となっているようです。
人間様にとって、民家の生ゴミや保管してある食料品を漁る熊は攻撃力も有りとても危険ですが、その他の大半は人間様を恐れ、逃げるようです。
言ってみれば、熊は強盗で、その他は空き巣、という感じでしょうか?
確かに作物を荒らされる農家にとっては駆除すべき害獣ですが、
果たして、駆除すれば問題は解決するのでしょうか?
何だか、そうは行かないような気がします。
まして、駆除のために猟銃を利用するとか。
それで、猟銃を使用できる免許保持者が足りないから、
俄か仕立てで狩猟人口を増やそうとしているそうなのですが、
そのためには従来の銃規制を緩和する必要も有るとか、
何だか、本末転倒ではないでしょうか?
一般に、問題が発生した時、
その根本原因を正確に把握しないで、対症療法ばかりでは、いつまで経っても問題は解決しません。
猟銃で害獣を駆逐するのは、云わば対症療法であって、根本治療では無いのでは無いでしょうか。
例えてみれば、インフルエンザに罹って、咳止薬やら鼻水止薬、抗生剤、解熱剤ばかり服用しているのと同じです。それら風邪薬の服用で胃腸が荒れるから胃腸薬まで処方されたのでは、最早、本末転倒でしょう。
インフルエンザの根本治療はインフルエンザウィルスを駆逐することです。
では、害獣対策の根本は何でしょうか?
異常気象や気候の変化で、野山に餌となる樹草木が減ったからでしょうか?
果実が豊富な広葉野生樹の雑木山を林業を営む針葉樹の植林地に変えたからでしょうか?
野生獣の縄張りにまで人間様が侵入したからでしょうか?
先ずはその調査と分析、そして解決策の立案が必要でしょう。
害獣駆除は、根本対策が効果を発揮するまでの一時しのぎにしか過ぎません。
一時しのぎのために、銃規制の従前法まで改正するのは、行き過ぎなのです。
まして、俄か仕立ての銃保持者を大量に作るのは、反って危険です。
野放図に銃保持者を増やせば、銃器犯罪が増えるのは米国の実情を見るまでも有りません。
かつて、日本には古来よりマタギとか鷹匠、猟師と呼ばれる専門の狩猟人がいました。
彼等には一般人が知らない独特のノウハウと倫理観や哲学などが有り、それらによって日本の野生世界は絶妙なバランスを守って来ました。
しかし、昨今、彼等の専門的な狩猟業では生活が成り立たないという事で、日本古来の伝統的な狩猟人口は減り続け、廃れて、今や絶滅の灯にあります。
彼等、日本古来の伝統的な狩猟人に学んでこそ、日本の自然風土に適した害獣駆除のノウハウが完成するのでは無いでしょうか?
また、害獣増加の根本原因を探る調査・分析と対策の立案は、被害が発生している関係自治体が連合して「協議会」を作り、資金を予算化して、大学や研究機関の専門家に依頼してはどうでしょうか?
害獣といっても野生獣類に人間様の市や県などの境界は通用しません。こちらが危険と感じたら、あちらに出没して餌漁りをするでしょう。
自治体毎に個別に調査や対策を講じることはあまり意味が無いのです。
日本全体をグローバルに野生獣類の生息域として観察し、調査して対策を講じないと正しい成果は得られません。
勿論、害獣個体の行動範囲だけを調査しても的確な対策は見えません。彼等の餌となる樹草木の現況と併せて調査・分析しなければ意味が有りません。
荒れ果てた餌樹草木を回復させるにしても、どのエリアにするのが最も効果的か、専門家のシミュレーションが必要です。
駆除した害獣は食肉として加工し流通させれば、狩猟人口も増える、との議論も有るようですが、通常、成獣に達した野生獣類はそれまで捕食した樹草木に特有な臭いが既に体臭として肉にまで着いており、一般的な調理ではとても食べれたものでは有りません。
現在、一般的に高級レストランなどでジビエとして食に供されている鳥獣類は、実は決して野生では無く、人間様が専門的に養殖したものなのです。
一方で、獣肉流通が目的の野放図な狩猟解禁は、反って、日本の自然環境を破壊し、絶滅危惧種まで死滅させる危険性がある上、銃による種々の事件が多発する危険も有ります。
では、当面の害獣駆除はどうしたら良いのでしょうか?
実は、専門家ですら誰も言っていませんが、簡単で最も適正な手段が有ります。
それは陸上自衛隊を利用する方法です。
自衛隊と聞くと、それだけで生理的に拒否反応する人達が一部にはいますが、世界中では、本来、このような任務は、このような人達が負っているのです。
一般的にはレンジャーと呼ばれています。本来の意味は猟兵です。詰まり、非戦時は猟を営んでいるエリート職業軍人の事です。
今は、自然保護官Ranger for Nature Conservationとも呼ばれますが、日本の場合はデスクワークが主な国家公務員で、本来の職種とは全く異なるようです。
テキサスレンジャーやグリーンベレーなども有名ですが、全然、意味が違います。
日本の陸上自衛隊には、西部方面普通科連隊WAiRというレンジャー部隊が有りますが、これは所謂、グリーンベレーで離島対処即動部隊の事です。
一般的に、陸上自衛隊は日本全国の各都道府県に漏れなく駐屯地が有り、現役の隊員が日夜、上意下達で訓練に励んでおり、法規遵守の意識は民間人よりも高く、銃器類の操作や管理には優れています。
詰まり、陸上自衛隊に猟兵部隊を新設し、日本古来の狩猟専門家を招聘して、そのノウハウを伝授してもらい、各自治体に協力して、害獣駆除と自然環境の保全に当たるのが最も適切では無いでしょうか。
そうすれば、日本古来の良識ある伝統的狩猟も絶えることが有りません。
厳しく文民統制された自衛隊の猟兵が関係する自治体からなる協議会が出した計画に従って害獣駆除と害獣対策の植樹などを行えば、余計な銃器事件が起こる可能性は排除できますし、決して食に供され得ない獣肉に起因する種々の流通事件も発生しませんし、余計な税金の投入も必要が有りません。