先日、あるパン屋さん(チェーン店)に立ち寄ったときのこと。
私は120円の小さなパンを一つ取り、レジに並んだ。
お金を支払い、商品をマイバッグに入れていると、耳を疑うような言葉が店員さんから発せられた。
「ただいま、パンをお買い上げの方に、ビールをプレゼントしておりますが、いかがでしょうか?」
(えっ…?)
意表を突かれた私は、脳を猛スピードで回転させた。
(なぜ、パン屋でビール?
このお店でこんなことは初めてだ。
新たな業界のコラボなのだろうか。
いや、それよりも、だ。
私は、たった120円のパンを一つ購入したにすぎない。
そんな客に、何の得があって200円もする缶ビールをプレゼントするのだ。
うむ、これはきっと、何かウラがあるに違いない。
ビールを受け取った瞬間に、「ご一緒にポテトはいかがでしょうか?」なんて言ってくるのではあるまいか。
ふっふっふ、そのような手には乗るものか。
ここは冷静に
「いえ、ボクはアルコールがちょっと苦手なもので…」
と、あくまで礼儀正しく断るのがクールだろう。
喉から手が出そうな気持ちは、グッと堪えてそう答えよう。
それが、賢い男というものだ!
いや、待てよ…。
ひょっとすると、だ。
こうも考えられるのではないか。
本当は、ビールをプレゼントする条件があるはずだ。
例えば、合計500円以上のお買い上げの方が対象といったように。
でも、彼女は新米のバイトで、慣れないキャンペーンのセリフをつい口走ってしまったにすぎないのではないか。
彼女も、実はこの人が120円のパンを一つしか買っていないことに、うすうす気がついている。
本当は「しまった」と恥ずかしい気持ちでいっぱいなのだが、差し伸べたビールを今更引っ込めるわけにもいかず、どうしてよいか困っているのだ。
もし、そうだとしたら?
そう、素直に受け取ってあげる方が、まさに親切というもの。
そうだ。
きっとそうに違いない。
ここは、笑顔で受け取ってあげる。
それが、ナイスな選択なのだー!!)
ここまで約0.5秒。
私は何事もなかったかのように、差し出された缶をにこやかに受け取った。
「パン一つで、缶ビールを得る。」
その違和感がもたらした認知的不協和。
こうやって書き出してみると、少しは解消したような、してないような…。
ま、呑んでしまえば忘れるか。