前回の記事 「Critical Period は本当か?」 から早5ヶ月。2の構想を温めまくってきましたが、ようやく時間ができたので、続きです。
ERPを使って、語学習得におけるクリティカルピリオドが本当にあるのかどうかを確かめる研究の紹介です。
前回紹介した研究は、大人になってから英語の勉強を始めた人でも、上達していけば、ネイティブと同じような脳の反応を示すということを明らかにしていました。
今回紹介する研究は、ポイントが2つ。
1.語学の学習法
文法などを教室で習うのと、文法説明なしで聞き覚えで学習するのと、どちらがいいのか。
文法などを教室で習うのと、文法説明なしで聞き覚えで学習するのと、どちらがいいのか。
2.学習効果の持続
一度習得した言語を、しばらく使わなくてもちゃんと使えるか。
一度習得した言語を、しばらく使わなくてもちゃんと使えるか。
この2つのポイントを調べるために、人工のミニ言語「Brocant2」という言語が使われます。「Brocant2」は、コンピューター上のボードゲームをするのに必要な単語と文法で構成されていて、例えば、「このマスのコマを別のコマと取り替える。」みたいな文が作れます。
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「Brocant2」の例文:
Blom neimo lu neep li praz.
(英訳: The square blom-piece switches with the neep-piece.)
Blom neimo lu neep li praz.
(英訳: The square blom-piece switches with the neep-piece.)
ちゃんと、名詞、動詞、形容詞、副詞、冠詞があるんだけど、単語は全部で13個しかないので、ちょっと練習すればすぐできるようになる。ボードゲーム上での動きの指示を聞いて、正しくコマを動かす聞き取り練習と、ボード上の動きを見て、「Brocant2」の言葉で動きを説明する発話練習の両方がある。
で、この「Brocant2」を、教室で文法を勉強するグループと、聞き覚えのグループに分けて、学習してもらいます。そして、学習したすぐあと、ちゃんと使えるかテストして、脳の反応も調べて、さらに、3~6ヶ月後に、もう一度、ちょっと練習して、テスト&脳の反応をチェック。
さて、結果。
何ヶ月か経っても、忘れてないか??
テストの結果、なんと、数ヶ月間、まったくその言語を使わなくても、語学力は全然落ちていませんでした。また、学習法による結果の違いは見られませんでした。
よく、言語をしばらく使わないと錆びる、などと言いますが、この結果からすると、使わなくても錆びない、ということになります。
ただし、この実験では、ミニ言語をほとんど完璧に習得します。なので、おそらく、言語を上級レベルにまで習得すれば、語学力はもう落ちないのではないか、ということなのです。
しかし、この実験の面白いところはこれからです。
脳の反応の結果を見てみると、、、
どちらの学習法のグループも、学習直後より、何ヶ月か後の方が、よりネイティブスピーカーに近い脳の反応を示しました。
(もちろんミニ言語のネイティブスピーカーはいませんが、例えば、文法間違いや語順間違いに気付いた時のネイティブスピーカーの反応というのが明らかになっていて、どの言語話者でも同じような反応が見られるのです。なので、それらの特徴と比べて、ネイティブっぽい反応かどうか、というのがわかるわけです。)
理由はこの実験からははっきりとはわかりませんが、おそらく、記憶の仕方が変わったんじゃないか、ということです。暗記の記憶(宣言的記憶: Declarative memory)に頼ってたのが、それを忘れることによって、より、体で覚えてるというような技能の記憶(手続き記憶: Procedural memory)に頼るようになった、ということなんじゃないか、と。
なるほどねぇ。しばらく離れて使わない方が、かえって良い場合もあるんですね。1年に1回ぐらいしかゴルフしなくても、なんとかなるもんねぇ。そういうことかな?
それはさておき、もうひとつのクエスチョン、
学習法による違いがあるのか??
はい。ズバリありました。テストの結果に違いはなかったのだけれど、脳の反応は違ってたんです。
聞き覚えのグループの方が、文法を勉強したグループよりも、学習直後も数ヵ月後も、よりネイティブっぽい反応を示しました。
これはおそらく、先ほどの説明と同様、文法を勉強したグループは、より、暗記の記憶に頼っているからではないか、と。
なるほどねぇ。つまり、できれば、教室で文法の勉強するところから入るより、耳で聞いて意味と文法を類推して、使ってみる、という学習の方が、ネイティブに近づくってことですね。ただ、実際の言語は、そう簡単に習得できるものではないので、教室以外で習得するにも時間がかかるし、トライアルアンドエラーを繰り返せる学習環境にいられるっていうのが難しいでしょうけれど。。
でも、しばらく使わなくても大丈夫、って思えたら、なんだか気が楽ですね。ばーっと勉強して、ぱーっと忘れて、それでも、脳ががんばってくれる。・・・ことを期待したい!
記事全文: Second Language Processing Shows Increased Native-Like Neural Responses after Months of No Exposure
NY Times の紹介記事: How Immersion Helps to Learn a Language
