第5話 ~なけなしは泣けない~
クビオ「妹を探せば、全てが解るんだな?場所はわかるのか?」
ミツコシ「さぁな、場所も知らねぇ、俺も妹さんを‘救いてぇ’が、俺が渡せる情報は確実な物しかねぇ、曖昧な物は渡したくねぇ、99%でもだ、100%が俺の信条だ」
クビオ「ヤクザにしては・・・いや、その方がありがたい」
ミツコシ「へっへっへっ、だから俺も付いていく、100%だ、俺は全てを知りてぇ」
クビオ「肝心な情報しかくれない情報屋か」
ミツコシ「おめぇの親父の事は1%も知らねぇしな、へっへっへっ」
ここでの親父は博士の事では無いようだ。
しばらく無言が続き、ミィがワンピースのポケットからカセットテープを取り出し、首から下げている再生機にかけた。
クビオ「なんだ?」
そこには博士と呼ばれていた男の声が入っていた。
博士「ミィがこのテープを再生したと言うことは、無事、情報を手に入れたと言うことだな。そして、探すべきはふたつ、母親を手に掛けた妹か、父親」
クビオ「どこまで知っていたんだ?」
博士「恐らくだが、妹さんは自分の意思では無いのだろう、それは今の君にはわかることかもしれん。親父さんは、何かを、全てを見てしまったのだろう、口を聞ける状態では無い様子だ」
クビオ「パパ・・・」
博士「残念ながら、居場所はわからん、次に何をすべきかもわからん」
そう言いテープは切れた。
クビオは、「あ、このテープ、なんの意味も無かったなぁ」と思った。
ミツコシもそう思った。
ミィも。
つづく
第4話 ~ざわざわのデパートメント~
クビオ「ここは」
ミィに案内され着いた場所は、所謂日本家屋のような、背中で鯉を飼ってるような人が集まりそうな場所だった。
クビオが戸惑ってるにも関わらず、ミィは木製の門に手をかけた。
その時背後から声がした。
背後の男「なんだぁ?お前ら」
背中で鯉を飼ってるかはわからないが顔に傷がある。
クビオはさらに汗が噴出した。
背後の男はクビオをだらりと睨み、ミィに目をやった。
背後の男「お前、うんこ味のカレーとカレー味のうんこの話知ってるかぁ?」
ミィ「・・・」
背後の男「カレー味のうんこはよぉ、便器にこびりついてたもんがカレー味だったのかもな、へへへ。でもよぉ、うんこ味のカレーはもはや、カレーじゃあねぇよな?にんじんやらたまねぎをコトコト煮込んでできたもんなのか?」
クビオ「ちょ、ちょっと!」
背後の男はふたたびクビオに目をやった。
背後の男「こげ茶色で、どろっとしてて、うんこ味。そりゃあもううんこだろ?あぁ?」
そう言い男はミィの手のかかった門から入っていった。
背後の男「俺はミツコシ、ミィだろ?入れよ」
ミツコシと名乗る男、言われるがまま門をくぐるクビオとミィ。
池や竹林がありとても広い庭園をミツコシの後に付いていく。
クビオ「知り合いなのか?」
ミィ「ミィは案内人、ミツコシは情報屋」
クビオ「なるほど」
客間のようなところに通され、それなりにもてなされているようだ。
客人になってしまったということか。
ミツコシ「話は、お前の親父さんから聞いてるよ、そいつの事も知ってる」
親父と言うのは博士のことだろうか、‘お前’と言うのはクビオなのかミィなのか、どちらにせよ産みの親は博士なのかも知れない。
一息おいて、クビオは自分の名前を告げた。
ミツコシ「クビオか、変な名前だな。お前も災難だったな。そして、これからも災難だ、お前のおふくろさん殺されたんだろ?犯人知ってるよ、親父さんの娘、お前の妹だよ、へへへ」
クビオは声も出なかった、信じがたいし信じたくも無かった。
それにこのいかにも胡散臭い男の言うこと、だがすぐに信じなければならなくなった。
ミツコシ「信じらんねぇのも無理はねぇ、けどよもうお前はいじられちまってんだろ?やるしかねぇだろうが、お前の優しい妹がなんでてめぇのおふくろを殺しちまったのか、それを知る必要があるだろうよ」
クビオ「・・・そうだな、落ち込むのは慣れた、驚くのは疲れたよ。ただ、そのあんたは情報屋だろ?金でも受け取ってるのか?」
ミツコシ「こんな時に言うのもなんなんだが、今がその時なのかもしれねぇな、俺は昔からヤンチャばっかしててよ世間からも煙たがられてたんだ。この組入ってからもオジキとの絆なんか感じたこと無かった。けどよ、お前の妹は優しかったんだ、誰も近づかない俺にポケットティッシュをくれたんだぜ」
クビオは苦笑いをし、でも情報屋なら力を貸して欲しいと思った。
ミツコシ「気質なのかな、なにがあったのかあの娘が自分の親をバラしちまうなんて」
クビオ「理由はどうあれ手を貸してくれるならお願いしたい、俺もあんたと同じだ」
ミツコシ「同じだぁ?ククク、お互い‘カタギ’の人間じゃあねぇもんなぁ!」
ミツコシは笑い、立ち上がり背を見せた。
ミツコシ「女ぁひとり救うのに理由なんかいらねぇだろ」
そこに鯉はいなかったが、心に龍を飼っていた。
ミィ「とりあえず、妹を探しましょう」
ミィは口の周りに付いたきな粉を一生懸命拭きながら言った。
まさか優しく可愛い妹が本当に自分の母を殺したのか、クビオは自分の理性や感情が次第に薄れていくような気がしてならなかった。
つづく
第3話 ~みっつの月を越えて~
かなりまぶしい日差し、なんだか久しぶりに外に出たようだ、てっきり郊外の廃墟のような所を想像していたがなんてことはないここ数年でにょきにょきと生えた高層ビル群、自宅からもそう遠くはない所のようだ。
もともとの性格だったか、いじられたおかげか自宅に戻ろうとは思わなかった。
なにしろ今の自分が帰る場所でもないような気がしたからだ。
しかしこのミィという少女、落ち着いているがまるで子供のよう、身長なんて‘僕’の腰ほどしかない。
会話も無いままミィの後を追っていると、ふと振り返った。
ミィ「おなか、空いてない?」
意外だった、まさか食事だなんて一番人間らしいことを聞いてくるとは、しかも心配しているのだろうか。
クビオ「う、うん!こんな身体なのに普通におなかは減るんだね」
クビオは少し明るめに答えた。
すると何も言わずまた歩き出したミィ。
着いた先は一軒の蕎麦屋、俗に言う立ち食いタイプのものだ。
贅沢暮らししか経験したことの無いクビオにとってその小汚い外観といかにも安っぽい匂いは新鮮であり興味にもなっていた。
暖簾をくぐり、黄ばんだ『お品書き』を手に取ると、ミィに遮られた。
ミィ「天ぷらうどん、ねぎ抜き玉子入りで。二つ」
クビオ「あぁ、ありがとう」
オススメなのか、好意だと受け取りそのことには触れず店内を見渡すクビオ。
あまりにも暗くおんぼろで、店員はふたり。
ミィ「クビオ」
呼ばれると、もううどんが目の前に来ていた。
速さと立って食べるということに違和感を覚えながらもきちんと玉子に麺を絡めて食べた。
クビオ「・・・まずいね」
と、言うとミィは少し照れくさそうに(見えただけかもしれない)。
ミィ「うん」
とだけ答えた。
会話としてはそれだけだが、少し温かみがあったかもしれない、などと思いながら店を出た。
ミィ「月見」
クビオ「?あぁ玉子のことだね、ありがとう美味しかったよ」
味なんかはどうでも良いが、これからしばらくこの子とやっていかなければならない、それが簡単で少し楽しいかも知れないと思うことが出来た。
ミィ「三日月も」
クビオ「三日月・・・?」
クビオは30分ほど考え、店員のひとりがしゃくれていたことを思い出し、吹き出してしまった。
そのときには小さな案内人の案内によって最初の目的地にたどり着いていた。
束の間の休息も、これから起こることへの不安と白衣についてしまったうどんのシミで一気に現実に引き戻されていた。
つづく
第2話 ~YOUがME~
地面に落ちた博士の頭。
男「・・・!いじられたのはっ・・・身体だけじゃないのか!?」
身体をいじられ、悪を倒す、そう思っていた、頭、理性だけは元の自分だと。
哀しさや恐怖ではなく、こんな状態で妹を助けられるのか?
たしかに力や身体能力はあきらかに常人ではない。
男「じゃあなんで頭まで・・・、手掛かりも何も無くなってしまった」
その時、薄暗い部屋に電気が灯った。
(そういえばここがどこなのかもわからないな)
当然のように何かが来るとはわかり、明かるくなってから存在を知ることになった小さめのドアがゆっくりと開いた。
息を飲む男、もはやなにが起こってもおかしくはない。
音も無く開いたドアから現れたのは、少女だった。
少女は男に近づくと水玉柄のワンピースについている大きなポケットに手を入れた。
警戒する男。
取り出したのはテープレコーダーだった。
いまだ何も語らない少女はテープレコーダーを再生した。
それは先ほどまで‘博士’と呼んでいた男の声だった。
そこにはまるで殺されることまで計算していたかのような言葉が入っていた。
そしてこれからの案内は少女に任せると。
男「僕に殺させたのか?」
独り言のように言ったのだが、心のどこかで少女が答えるのを期待していた。
まるでプラスチックのような子だ、ここまで来てしまうと少女の眼がレンズなんじゃないのかと思えてきた。
テープの最後に、「その子に名を名乗れ」と入っていた。
この子が案内人、ただの女の子ではないのはわかる。
男「僕は、クビオ」
博士の転がった首を見て適当に言ってしまった。
クビオ、変な名前だ。
少女「・・・クビオ、これから私があなたの案内人、私はミィ」
クビオ「ミィか」
自分が‘ロボオ’と名乗ればロボとミーだったな、なんて思ってミィを見た。
華奢な見た目に合ったか細い声だった。
男は微笑んだ。
ミィは突然屈み、床に倒れている博士の身体を引きずり部屋の隅にあったベッドに寝かせた。
そしてちぎれた首を掴み部屋を出るついでにゴミ箱へと捨てた。
クビオは、クビオで良いと思った。
おかしな名前じゃないとおかしくなってしまう気がしたから。
クビオは博士が着ている白衣を脱がせて羽織い、小さめのドアからミィの後を追った。
つづく
第1話 ~バイバイ人間~
頭の切れの速さから大人たちも一目を置いていた存在だ。
そんな男は誘拐された、そしてされなれていた。
暗い部屋、手錠まで、大袈裟だな。
男「(早く帰りたいな、パパ早くお金出してよ)」
のんきに考えていると男を誘拐したと思われる初老の男が。
初老の男「・・・目覚めたか」
男「目覚めた?目覚めたもなにも僕は・・・」
男は気付いた、誘拐になれたなんて馬鹿げた事を思っていただけでいつここに来たのかわからない、昨日?いや、こんなに髪のびてたか?
初老の男「お前が眠っている間実にいろんな事が起こった、起こりすぎた。」
男「お前は、誰なんだよ!」
初老の男「私は‘博士’だ、お前の。」
男「?」
男は気付いていた、目覚める前の自分の身体とは別のようだと。
手錠をみつめ、両手を放した、鎖はいとも簡単にちぎれた。
博士「説明は不要のようだな、さすがは天才と名高い御坊っちゃんだ」
男は不安よりもわくわくやドキドキが勝っていた、しかし最大の疑問は残っていた。
男「金が目的じゃないとしたら、なんなんだ?人の身体をいじくりまわして、それだけか?」
博士「いいか、よく聞け、お前の母親が死んだ、殺されたのだ。親父はそれきり意思をもたなくなってしまった」
男は汗だくになっていた、動揺などしてもなにも変わらないとはわかっていても両親を愛していた。
男「い、妹は?」
博士「妹さんは行方がわからなくなってしまった、簡潔に言おう、私はお前の親父と大の親友だった、復讐したい、真相を知りたい、それはお前も同じだろう?」
男「だからって、人の身体を!」
博士「お前しかいない!お前の家族だ、私が改造していなければ救うことなんか出来なかった」
男はわかっていた、わかっていても家族の訃報、まだ理解出来ない自分の身体。
だが心のどこか、はたまた身体のどこかに取り付けられてるかもしれないスイッチが入った。
男「わかったよ、博士。わかってなんかないけど、僕しかいない、僕にしかわかることは出来ない。・・・ママを殺したのも改造人間なんだね?」
博士「あぁ、おそらく私とお前の親父となんらか関係がある人物だ」
男「大丈夫だよ、人間じゃなくなった僕にしかわからない事がある」
博士「・・・」
男は立ち上がり、博士の首に手を掛けた。
そして、博士の首はいとも簡単にちぎれた。
つづく
プロローグ ~strobo~
高層ビル、地面は全てエスカレーターの様で歩かずとも目的地に行ける時代。
夜に逆らいネオンが灯る頃、ビルの一室での出来事。
ある男は苦しそうな顔をしながら「幸せだ」と口にした。
傍らには大人なのか子供なのかわからない女がいた。
ある男の体からは血にも似た何かが流れ出し、目を綴じた。
大人なのか子供なのかわからない女は「シャットダウン」とだけ言い、その場を離れていった。
それを別の男が影から見ていた、全てが終わったのを確認すると別の男はその場に倒れこんだ。
その部屋に人間はひとりもいなかった。
まえがき
はじめまして、ベロ朗です。
すこーしばかり長 めの話を書きたいなぁと思ったので書きます。
タイトルは『スーパー・ロボトミー』、スパロボとでも呼んで下さい。
奇妙で切なく、哀しみを持った主人公。
セリフの言い回しひとつひとつにも意味があると思って読んで欲しいです。
生きること、幸せ、小説にはいろいろなテーマがあります、このおはなしのテーマは‘その場その場のかっこよさ’です、活字の中で息をしている人物の考えを汲み取ってあげて下さい。
ちなみに、結末も途中も決まってません、書いてる中で変わっていきます、みなさんの意見で変わることもあるかもしれません。
だから観想やコメントは非常に頂けたら嬉しいです。
では、今までにあまり無かったジャンルのおはなし、スパロボをお楽しみ下さい。
