夕暮れのティネリール中心街をそぞろ歩く。




マラケシュやフェズなどの大都市に比べたら規模はうんと小さいけれど、この町にもスーク(市場)がある。


女性ストリート、男性ストリートがあって、香港の夜市の女人街、男人街みたい。


観光客向けの土産物屋はなく、衣類や日用品、電化製品など、地元民が生活に使うものが売られている。


屋根の隙間から、少しだけ降り注ぐ自然光。


スフェンジを揚げる音。油の匂い。


色とりどりのカフタンやジュラバやスカーフ。子ども向けの小さな洋服。


adidasやNIKEやアルマーニのロゴが入ったパーカーをぴったり着たマネキンたち。


ハマムで使うサボンベルディ(オリーブで作られた石鹸ペースト)、鮮やかな色の垢すりミトン、テラコッタ色の軽石。


職人がその場で作っている、パンを釜に入れるための木製トレー。


鮮やかで、怪しげで、リアル。


人びとの暮らしを支えるスークは、まるで生き物のようで。


なんとも色気のある場所だと思う。


そして相変わらず、「手仕事を感じるもの」に弱い。




この地域ではどこの家にもある、伝統的な「ふいご」を作る職人さん。


これは羊毛を梳かすための道具だそう。



いつか、この街に大型スーパーが建つ日がきても


モノづくり職人たちの居場所は残ると、信じたいな。