リッサニからは、エルラシディアまでバスで行き、そこから乗り合いタクシーでティネリールへ向かった。


遠回りになるのでは?と思ったけど、これが最短ルートらしい。


カスバ街道沿いに西へ進み、バスやタクシーの乗り継ぎ、数日かけて南部を目指す。


うまくいけば、ティネリールに着いたその日のうちに次の目的地スコーラへ向かうつもりだった。


結局、ティネリールに着いたのは、夜10時過ぎ。


仕方なく一泊することに。


人気は少なく、宿の情報も少ない。

そもそも、自分が今いるのはどのへんなのかも、よくわからない。


そうでもなければ通過していたはずのこの小さな町が、この旅一番の思い出深い場所となるなんて。


このときはこれっぽっちも、予期していなかった。



大好きな、イムジンの丘からの景色。


抜けるような青い空、赤茶けた大地、黄土色のカスバ、ナツメヤシやオリーブの木々の濃い緑。


自然の織りなす色の層が作り出した景色は、何度見ても飽きない。



トドラ渓谷に向かう途中に出会った、シャイだけど外国人に興味津々な様子の子どもたち。

ここの地域では、道で誰かとすれ違うと、必ず挨拶する。


知り合いでなくても、「こんにちは」「どうも」「調子はどう?」などと声をかける。


どんなにぶっきらぼうそうなおじさんでも、声をかければ必ず返事を返してくれる。


そんな小さなことに、ホッとする。


子どもたちも安心して暮らせるだろうなぁ。




豊かなオアシスが広がるティネリール周辺の村々。


アトラス山脈から流れてくるトドラ川の水は澄み切っていて、日本の山水を思い出させる。


ナツメヤシとオリーブはたくさんの実をつけて、収穫のときを待つ。

真っ青な空の下、太陽のパワーをたっぷり浴びて育った果物や野菜や植物たちが、なかよく共存している姿を見ているだけで、なんて幸せな気持ちになるんだろう。