あれから2週間程たったが、大場さんはまだ学校に来ていない。
同じ時間に英雄と神社で練習も何回かしたが、1度も来る事は無かったから習慣という訳でもないようだ。
「前に神社で見た子って、ホントに大場桜なの?」
「そう何度も聞かれると自信満々でそうだよとは言いずらくなってきた」
あれから英雄は何度もこの質問をしてくるのだが、最初は自信を持ってた返答も怪しく感じてきてしまった。なにせ情報が少ないのだ、隣の席とはいえ会話をした記憶もない、僕は女性との付き合い方がよく分かっていないし女性から話しかけられてもはい・いいえで済むような事しか聞かれない事の方が多い。
「英雄は、なんでそんなに気になるんだよ、ろくに喋ったこともないんだろ?」
「確かにないけどさ、前もいったじゃん5月なんて楽しんだもん勝ちなんだよ、それなのになんで学校にこないのか気になるじゃん?」
「それぞれの事情ってもんがあるんでしょ、少なくとも英雄には関係ないとは思うけど」
そんな会話をしていると担任の平内に呼ばれた。
「悪いんだが、このプリントを大場の家に届けてくれないか?」
プリントには今後の行事や中間テストなどの時期が書いてあった。
「前に一通り皆には口頭で説明したけど、大場はいなかったからな、悪いが頼んだぞ。」
こちらの返答も聞かず、平内は押し付けるようにプリントと大場桜の家の住所と簡素な地図の書かれた紙を渡してきた。
いつもの様にキャッチボールをして声出しをして部活の時間は終わりになった。
「玲士、今日も神社行って練習しようぜ」
「悪いけど、今日は用事があるからいけないや」
英雄は目を丸くして僕を見つめてきた。
「なんだなんだ?彼女でもできたのか?玲士もやる事やってんだな」
「そんなんじゃないよ、平内から大場さんにプリントを届けろって頼まれたの」
ニヤニヤしながらおちょくってきた英雄に少し冷たく答えた。
「悪かったよ、お詫びに俺もそれ届けに行くの付き合うからさ。」
そして英雄と一緒に地図を頼りに大場家を探す事にした。
「地図の場所に大場なんてねぇじゃんかよ!平内が間違ってんじゃねぇの?」
イライラしながら英雄が愚痴を言い始めた、確かに僕たちは地図の通りに家を探しているのだが、地図の場所はおろかその近辺にも大場の表札が無いのだ。
「でも、平内が間違ってるとも思えないし、試しに地図の家のチャイム鳴らしてみる?」
「そうするかぁ、はやくしないと暗くなって自主練する時間なくなっちゃうぞ」
「あぁ、まだ今日もする気でいたんだ」
地図の家の表札には「西田」と書かれており、純和風の一戸建てがあった。僕がチャイムを押すとビッー!という音がなり、奥の玄関から老婆が出てきた。
「どちらさまですかね?」しゃがれた声の老婆に尋ねられ。
「僕たち、高谷中学校の生徒なんですけど、担任の先生にプリントを届けるよういわれたんですけど、大場桜さんはこちらにいますか?」
老婆を相手に話す時の英雄はいつもと違い、なんとも頼りがいがあった。
「あぁ、桜のお友達ですか。すいませんね、わざわざごめんなさいね。」
老婆がそう言ったので、僕はプリントを渡し帰ろうとしたのが、英雄が老婆に質問をした。
「大場さん、体調が悪いんですか?」
その質問に老婆は戸惑っているようだ、それもそうだろう、1月以上がたっても登校しないという事は、ただの風邪なんかではないだろうし、心理的な物ならあまり答えたくないに決まってる。
「すいません、気にしないで下さい!。僕たちはもう帰りますから!」
僕は老婆にそう告げて、英雄の制服を掴み逃げるようにその場を離れた。
「なんだよ!せっかく理由が分かるかもしれなかったのに!」
「好奇心で人のプライベートに入り込むなよ、誰にだって人に言えない事情位あるだろ!」
英雄に悪気はなく、ただの好奇心で聞いたのだろうが、やはりあれはやりすぎだと思い、僕の口調も荒くなっている。
「学校にこれないような事情を詮索なんかされたくないだろ、それ位英雄にだって分かるだろ!」
「悪かったよ、明日謝りに行くから玲士も付き添ってくれない?一人だと気まずいし・・・」
自分が失礼な事をしたと分かったのか、英雄は随分素直に認めた。
「自主練って気分じゃないし、今日はもう帰るわ・・・」
英雄はそう呟いて走り、家に向かった。僕は明日の事を考えると気が重くなり、大人ならこういう時は菓子折りをもって謝るんだろうかと思ったが、そんな金銭的余裕が自分たちにないと気づき、明日は素直に謝ろうと考えていた。
