行政罰と刑事罰 | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

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弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。

コロナ特措法(新型インフルエンザ対策特別措置法)について、マスコミ報道は、入院拒否や営業継続した者に対して罰則を設けるかどうかが話題になっています。
その中で、自民党と立憲民主党が合意して、刑事罰ではなく行政罰を導入することになった、という報道がありました。

(ニュース概要)
感染症法の入院措置の罰則
 ・刑事罰から行政罰(50万円以下の過料)に修正する
感染症法の積極的疫学調査の罰則
 ・刑事罰から行政罰(30万円以下の過料)に修正する
特措法の罰則
 ・緊急事態宣言時 30万円以下の過料に引き下げる
 ・まん延防止等重点措置時 20万円以下の過料に引き下げる



これだけでは何を言っているか分からない上、きわめて不正確です。

まず、マスコミ用語を、正確な法律用語に是正する必要があります。

マスコミ用語は、
  ・刑罰(または刑事罰)


  ・行政罰

という2分類になっています。

しかし、行政法上は、
       ・行政上の刑事罰(行政刑罰)
    /
行政罰
    \
      ・行政上の秩序罰(秩序罰)

に分類されます。
法律上は行政罰は、刑事罰と秩序罰の2つを含む概念です。
マスコミ用語でいう行政罰というのは、行政上の秩序罰をさしています。

行政上の刑事罰
行政上の刑事罰は、行政上の犯罪に対して、死刑、懲役、禁錮、罰金、拘留及び科料が科せられる刑罰です。刑事訴訟手続によって、検察官の起訴と裁判所の判決により科されます。
マスコミの言う「刑罰」がこれに該当します。


行政上の秩序罰
行政上の秩序罰は、一般的に、「過料」の名称で呼ばれており、軽微な義務違反に対して科されるものです。刑事訴訟手続ではなく、非訟事件手続法の手続きにより裁判所で行われ、執行されます。
マスコミが言う「行政罰」は、秩序罰のことです。

このように、科される手続が異なりますが、それほど違いはあるのでしょうか。

行政法学者の説明によると、
・ 行政罰は過去の行政上の義務違反に対して罰という制裁を加えるものであり、秩序罰は行政秩序に障害を与える危険性があるものに対して科される制裁である。
・ 秩序罰は軽微な違反に対して科されるもので、行政罰はより重いものに科されるものである。

などという説明があります。

しかし、性質上、その線引きはあってないようなものです。
法律上は、手続が異なりますし、刑法総則の適用があるかないかなどの法律の論点もあり、秩序罰は前科になりません。なので、効果はことなります。
しかし結局、科料、罰金、過料とも、お金を払わせることで抑止効果を発揮するものであることに変わりありません。

刑罰でなく秩序罰になったからといっても、結果はあまり変わらないわけです。


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