きみは経営法曹の意見書に反論できるか? | 弁護士の労働問題解決講座 /神戸

弁護士の労働問題解決講座 /神戸

労働問題で活躍する弁護士が,
解雇・残業代・労災などを解決し
あなたの権利を,100%追求する
ノウハウをblogで紹介します。

弁護士の萩田です。いつもありがとうございます。
 
労働法上の賃金、退職金、有給休暇取得権などは、現在、短期間の消滅時効になっています。
これまで賃金は2年で時効になっていました。
 
ところが、2020年には民法が改正されて、時効が5年に統一されます。
 
そこで、厚生労働省は、検討会を設けて、労働法上の権利についても、時効期間を5年に延長することについて検討しています。取り上げられているのは、
・ 賃金、退職金
・ 年次有給休暇
・ 賃金台帳等の保存期間
・ 付加金

です。
 
これに対して、経営者サイドの弁護士グループが反論の意見書を作成しています。
その意見書を抜粋して紹介します。
 
1 「労働基準法(以下、労基法)115 条の時効(賃金等は2年間、退職手当は5年間)を見直し改正後の民法の時効に合わせるべきとの議論が見られるが、これは、労基法が刑罰(取締)法規であることを理解しない短絡的謬論である」
 
2 「労基法の時効は同法施行以来70年余を経過して、それを前提とした実務が社会的に定着し、特に不都合との声は聞かれず、労使間で機能しており、労基法115条を改正しなければならないという事情(立法事実)はない」
 
3 「民法改正で短期消滅時効が廃止されたのは、職業別の短期消滅時効を定めることの理論的、実務的な問題点を解消するためであり、賃金債権を念頭に、労使の利害が調整された結果である特別法たる労基法115条の消滅時効期間を覆すことまで意図していない」
 
4 「労基法の賃金請求権の時効(2年)が延長されると、それに合わせて賃金台帳等の記録の保存期間の延長ということが想定されるが、それは我が国の企業の大多数を占める中小零細企業にとって特に大きな負担となり、正に死活問題となる」
 
5 「年次有給休暇を繰越せる期間を延長することは、年休取得の促進に逆行し、年休消化率のさらなる低下を招くこととなる」
 
6 「労基法による付加金制度や賃確法による遅延損害金をそのままにして、労基法の賃金請求権の時効のみを取上げて変更する理由はない」
 
このように述べて、結論として、「現行の労基法の時効を変更する必要はない」と述べています。

さて、みなさん、未払賃金や有給休暇の時効を延長することに大反対している経営法曹に対して、どのように反論しますか?
 
頭の体操だと思って、考えてみましょう。
(私の反論は次回、紹介します)
>無料メールマガジンを配信しています。
弁護士のテクニックなども盛り込んだおもしろい記事を予定しています。
次回は6月19日(火)配信予定です。
現在、非正規社員と正規社員の格差是正を命じた最高裁判決について、解説を続けて、実務に生かせる点を連載しています。
ご期待ください。
 パソコン・スマートフォンの方はこちらから登録
 携帯電話の方はこちらから登録