結婚式を挙げる意味はシンプルに考えた結果、「親のため」というところに私は行き着きましたが、お客様によって理由や目的はもちろん様々です。
そして今回は私が出会ったお客様の中で特に印象深かったお二人のお話をご紹介させて頂きます。
大学生の頃に出会い、すでに6年ほど交際をしていたお二人でした。会場見学にいらした際に少し気になることがご新婦様の口から発せられました。
新婦「結婚式を挙げるならここの式場って決めてるんです。」
出会って間もなく聞くには差し支える内容かもしれないと思い、気になりながらもまずはお二人の結婚式のご要望をお伺いしました。
「どんな結婚式にしたいですか?」「なぜ⚪︎⚪︎⚪︎のような結婚式にしたいと思われたのですか?」
…結婚式の希望やイメージはしっかり持っているお二人でした。だからこそ先ほどのご新婦様の発言が気になります。
"結婚式を挙げるなら…"
私は会場のご案内をする中で絶対に譲らない決め事があります。それは「今日、この場で、申込みをすることを心から勧められない時はクロージングをしない」ことです。
一生に一度の結婚式だからこそお客様は決定に慎重にも不安にもなります。そんな一大決心をする中で、会社の都合や個人の都合ではなく、人として、ウェディングプランナーとして真正面にぶつかりたく、いつもそう心に決めていました。
一緒に結婚式を創り上げる上で信頼関係は必要不可欠です。誰よりもお客様のことを深く知り、感じることが大事です。
会場見学の段階で「今日、この場で、申込みをすることを心から勧められない」程度の信頼関係しか築けないならはじめから担当を辞退した方がよっぽどお客様のためです。
そして意を決してチャペル内覧中に聞いてみました。
私「結婚式を挙げない選択肢もあるんですか?」
新郎新婦「•••。」
新郎「⚪︎⚪︎さんなら話してもいいよね?」
新婦「•••(ご新郎様の方を向いて頷く)。」
新郎「実は彼女のお義母さんに結婚を反対されているんです。僕が大学生の頃チャラチャラしてて…。第一印象で嫌われちゃったみたいで。」
新婦「母は結婚=我慢としか考えてなくて、彼うんぬんだけではなく結婚自体にネガティブなイメージがあるみたいなんです。だから私たちが結婚式を挙げるには母を説得する必要があって…。母は結婚式には参列しないって言い張ってるんです。」
結婚式には過去のわだかまりをも溶かす不思議なパワーがあると信じてますが、さすがにお義母様を説得して、参列して頂くまでに話を進めるのは難しいそうだなとお二人の話を聞きながら感じていました。
ただ、そんな事情を聞いて、よりこのお二人には結婚式を挙げてもらいたいと強く思いました。そしてこの二人に私だからこそできる提案はないだろうかと考え、こんな提案が口から出てしまいました。
「今日、申込書を書いて帰ってください。」
驚いた表情を見せるお二人。
「ウェディングプランナーとしてじゃなくて1人の人としてお話します。お二人のお話を聞く限り、結婚式にお母様をお呼びすることは難しいと感じています。だったら結婚式をきっかけにすればいいじゃないですか。
たとえばご新婦様のご親族から「⚪︎⚪︎くん、しっかりしてたよ。」とか良い感想がお母様の耳に入るかもしれません。
結婚式場の申込みをしたことを報告するだけで、お母様にお二人の結婚への本気度は少なからず伝わります。
お二人にとっての結婚式はお母様とのわだかまりをなくすために戦う、"これから"を決心するための場だと思います。
その日がいつ訪れるかは分かりません。もしかすると和解できないかもしれません。でもお二人にはやらない選択肢はないですよね?
ここで申込書を書くことはお二人にとっても"これから"を戦い抜く宣誓になるはずです。
だから今日、申込書を書いて帰ってください。」
もちろん契約を獲るためにとりあえず書かせた訳ではありません。本来は内金を頂かないといけないのですが、支配人に相談をし、キャンセルをしても良いという特例を頂いての申込書記入でした。
ご新郎様は「⚪︎⚪︎さんに出会うまでは結婚式できたらいいなって思ってましたけど、今は結婚式をしたい!と思っています。」とおっしゃいました。
会社員としては間違った行動かもしれません。ただお客様のことを想っているからこそ出た提案だと思いますし、お二人は本当に喜んでくださいました。
事情や背景が変われば、結婚式を挙げる意味や目的も変わります。ただ結婚式を挙げる価値はきっとどなたにでも同じくらい重要なものとしてあるんだなと思います。
-元•結婚式屋-