「コーヒーを淹れたいんだけど。」

 

 うちのボスが台所で叫んでいる。

 沸かしておいたお湯(子供が明日持っていく麦茶用のお湯)を、彼は早くやかんから出したいようだった。

 今年度部署異動があったボスは、異動したからなのか働き方改革だからなのか残業を極力しないで帰宅する。

 私たちとの夕食は、残業がんばりまっせのボスにとっては早い時間に食べるものだから、今夜も寝る前にお腹が空いてカップラーメンを食べようとしている!とばかり私は思っていた。

 

 しかし、今夜のボスは違った。

 先日行われたザ・健康診断で医師から「で、いつから痩せる?」と聞かれたことにより、夜食でなくコーヒーを選択したのだ。

 まぁ・・・「で、いつから痩せる?」という言葉は、結構グサッとくるね・・・。

 

 「このお湯、麦茶ポットに入れればいいんだよねー?」

 うんうん。入れてくれるの?ありがとう。助かるわ~。と少々大きな声で返事をしたものの、別の部屋にいる私のもとにはコーヒーの香りが一向にしない。

 ん?と思い、台所にいくと、シュポーと怒り狂っている、やかん。。。

 ちょっとー!!と叫びながら私はガスの火を消した。

 「ごめんごめん~。ついでにコーヒー淹れて~。」 

 ボスは居間に移動してゴロゴロしている。

 まぁ、仕方ない。いつものことだと思いながら、私はコーヒーを淹れた。

 まだ宿題を終わらせていない子供が居間で、

「いい匂い~。」

 とコーヒーの香りに反応する。

 素直に反応してくれる良い子供だ。

 その反面、うちのボス。

 私が、「コーヒー淹れたよー。」と持っていったが、一向に飲まない。

 見かねた私は、

「携帯とコーヒー、どっちが大事なのって誰かに言われるよ。」

 と皮肉を込めていったが、ハハハと笑いながらまだ携帯をいじっている。

 大人のおしゃぶりかー!(笑)。

 

 そのあと、ボスから一言。

「今ね、香りを楽しんでるんだよ~。」

 ははは。あなたは、コーヒーの置いてあるダイニングテーブルより離れた居間で携帯をいじりながらゴロゴロしているそこでコーヒーの香りを楽しむのね。

 分かったよ。今度コーヒー淹れてダイニングテーブルで飲むときには、居間のテレビの前に置くわ。

 そうしたら、香りを楽しめるものね。

 

 oatogayorosiiyoude。