で、バレエの稽古場が家庭からの避難場所だった私は、そのまま先生に見守られながら大きくなり、バレエが縁で裏方になった訳です。

バレエを習いに来る目的は様々。
私は運動音痴の鈍臭いところをなんとかしたい、
でした。
プロになりたい、指導者になりたいという目的(幼少の頃は、母親の願望を肩代わりしている子も多いですが)の方もいるでしょう。劇団に入りたい、海外に行きたい、綺麗な衣装を着たい、ポワントを履きたい、、、。


プロになれるのは、ほんの一握り。
目指しても、素質があると言われても、懸命に努力しても、舞台で生計を立てることは今の日本ではほぼ不可能ですし、いるとしても限局的。
バレエ教室の名は聞くけれど、輩出されたダンサーの名は思いつかない。そんな名物先生もおられますし、ダンサーが育つには絶望的な土壌の国です。(都さんにしろ、熊川さんにしろ、名が知られている人は、海外でキャリアを積んでますよね。国内純粋培養の著名なダンサーって、いるかな?)
この辺りは語り尽くされてるし、問題提起もすでにされていることなので、また語るのは別の機会にします。

私の先生は、そのあたりをよく分かっていたというか、割り切っておられました。

なりたくても、プロになれない。
なったとしても、怪我や出産などでキャリアを諦めなければならない。
バレエ団に入れたけれど、それだけでは食べていけなかった。

そんな時に、その子を救うのは知識であり、その基礎は勉学だと。

パリ・オペラ座のバレエ学校ではバカロレア(baccalauréat大学入学資格)を取得しないと卒業できないと聞きます。
ダンサーを諦めて、例えば、整体師、理学療法士、看護師になるならば、教室の経営に専念するならば、勤め人になるならば、その時に人脈以外にやはり知識と頭脳が必要になってきます。

だから「よく勉強しなさい」と仰られました。知識は貴方達の味方になるから、と。
踊らなくても良い時期が来た時に、セカンドキャリアに悩まなくて済むように、と。

そう言い聞かせてくださったお陰で勉強はちゃんし、学校も休まず、私は首席で高校を卒業できました(首席が大学に進まなかったのは、私が初めてだったとかで、職員室がざわつきました)
勉強の仕方や読書習慣が身についていたお陰で、裏方を離れた後もすんなり次の職を見つけることができました。今も、大学に進んだ同級生と比べても年収は遜色ないです。

何かに熱中し、その道でプロになろうとするあまり、その年齢の時にしなければならなかった事を蔑ろにしては、そのしっぺ返しは必ずきます。
勉学を疎かにする、栄養を摂ることよりダイエットでの体型維持に拘る、バレエ以外の人とのつながりをおろそかにするなどなど。

健全に育たなかった方が、秀でた芸術家になれるかどうか、私は疑問に思います。
才能と素質があればあるほど、その道に依存しすぎて育つことのないよう、本人とその子の親に言い聞かせる必要があるのだと考えています。

今、子供を育てながら、先生と呼ぶ方に預けることが増えてから、実感する日が多くなりました。



※あくまで私感です。