母、63歳。2016年2月下旬。


突然の電話。


「あのね、ちょっと今話せる?大したことないんだけど」


母が、大したことない、と言う時は、大抵大したことある時で、

なんとなく嫌な予感がした。

離れたところに暮らす母の言葉を、ただただ携帯電話から一方的にいつものように聞くしかなかった。


「あのね、

こないだ健康診断したらね、

レントゲンで肺に影が見つかってね。

もしかしたらガンかもしれないから、とりあえず伝えておくね」


そんな、、、、そんな、、、。

何を言ってるんだ?この人は。


突然の告白に、ただただ驚き、

「なあに言ってるの、大丈夫に決まってるじゃん。あはは。」

と笑って応えた。


「そうなんだけどね、念のため精密検査を受けるから。

3月末には結果がわかるから。よろしくね。」

母も笑いながらそう言って電話を切った。



「まさかね、だって元気じゃんあんなにさー」

確かに元気ピンピンの母。その姿を空に描きながら、

私はつぶやいた。まだこの時はなんの恐怖心もなかった。

可能性は低いと思っていた。

だから、検査結果がやってくることもその時が来るまで頭の片隅にしか置いていなかった。