やっと読み終わりました。

 

まず、読み終えた後の率直な感想は、「やっぱり、世の中には不条理なことが多い」という印象。

真実のみが世の中に発信されていると信じていたが、権力者とか黒幕の都合のいいようにアレンジされていることが改めて確認されたとともに、発言者に全責任を負わせる風潮があるということ。

逆に、最近のSNSでは匿名性を重視しているため、好き勝手なことを書いて責任なしという風潮があり、これまた問題であると痛感している。

 

次に、このブログでも、新型コロナに関する雑感を書いてきましたが、あくまでも一般人としての感想ではあったものの、詳しい内情を知らずに書いていたことがわかり、恥ずかしかった。

でも、世間一般の方とは同じレベルと思っているので、キッチリと書くためには、更なる情報入手力が必要と非常に感じました。

 

つまり、例の尾身副座長で有名な「専門家会議」への助言組織である「クラスター対策班」、その内部の「接触者追跡チーム」「データ解析チーム」などで、当初(1月初め)から新型コロナ陽性感染者の聞き取り調査(保健所だけでなく、専門家のヒヤリングも含めて)内容を念入りに解析し、感染経路を割り出す作業をしていたことに対して非常に驚いた。 このようなこともやられていたのだと。

ただ、感染者が多くなった現在では、そこまでのフォローができないので、「感染経路不明」という原因が多くなってきた。

ただ、最近であっても、「三密」を破ったことがあるとか、「5つの場面」に入り込んだとかの情報は最低限必要であると思う。

 

さらに、西浦教授は自らの数理モデルを各メディアの記者にわかりやすく説明(YouTubeのTHE PAGEのホームで発信(4月))していたことをこの本で知りました。

つまり、実際には、様々な解析も実施しつつ、手法や結果を公に発信されていたにもかかわらず、情報を貪欲に入手しようしていなかった私には全くわかりませんでした。

 

せっかく、膨大なデータをもとに様々な解析で流行性などを予測したのであるが、「8割おじさん」と呼ばれるキッカケとなった解析結果に対して(一般人や評論家など)世間からの批判が激しく、西浦教授は心身ともに疲労困憊の状態だったと思われる。

このような解析結果に関しては、(解析内容がセンセーショナルな内容であったということもあり)往々にして評論家的に結果論でバッシングされることが多いのは当然であり、しかも前提条件が吹っ飛んで結果の「数字」だけが独り歩きする傾向にある。

また、最悪を想定しての係数設定は当然の選択であり、その後の状況変化で結果も変わることも当たり前であるものの、「やっぱり、そのような(最悪の)事態にはなってないじゃん」と批判する人たちの無神経さに唖然としてしまいました。

正当な評論家であれば、「最悪の想定で出されて数値だったので、発表当時は世間も驚く数字だった(何も対策を講じなければという前提で)けど、その後、様々な対策を講じたので、これだけに落ち着いたよね。よかった。」というようなコメントぐらいしてほしかったと思います。

 

この本は、2020年1月から(メンバーから外された「分科会」再設置までの)6月まで間(第1波)、大学のメンバーとともにビッグデータを利用した解析成果を、その結果の公表までの経緯や社会への影響、政府や厚労省の高官から担当者との人間模様などを付加して研究者(医師)の視点でまとめたものと理解している。

 

その後の感染者増加による「第2波」「第3波」が世間を賑わせているが、当初想定の「クラスター」による感染拡大のみならず、無症状者による無意識感染拡大によるものが大多数を占めるようになっている現在では、ロックダウンなどの強硬手段が必要かもしれないが、経済活動を考えると、もはやできる状態ではなく、やはり個々人の行動制限に頼るしかないのか。

その時には、(単に三密を回避するだけでよいのであるが)西浦教授の「8割の接触削減」を実践してみてはと思っている次第です(笑)。

 

上記の感想は、あくまでも個人的な見解ですので、ご了承ください。

 

 

      西浦博教授(当時:北海道大学教授→現:京都大学教授)の本の表紙及び帯