サメハダー（サン＆ムーンシリーズ収録）を鑑賞する：「子供の絵の芸術性」

  • 名前　　　　　　　サメハダー
  • 収録パック　　　　サン＆ムーンシリーズ　強化拡張パック「ナイトユニゾン」 
  • 購入価格　　　　　50円
  • イラストレーター　こみやトモカズ

今回はこみやトモカズ氏の描かれたサメハダーのポケモンカードを鑑賞します。
こみやトモカズ氏はアクリルガッシュ、色鉛筆やマジックなどを用いて、子供のイラストのような雰囲気を持つイラストを描くイラストレーターさんです

 

 

イラストの世界観

まず、サメハダーとはどんなポケモンか、ポケモン図鑑の説明をまとめると以下になります

 

 

  • 海を時速120キロで泳ぐ
  • 鉄板を噛み砕ける


このイラストでは、サメハダーが荒れ狂う海を飛ぶように泳いでいる様子を描いています。

サメハダーは丁寧に描かれている一方で、背景の船や人は子供の落書きのように描いています。
人が真横になって宙に浮いている「下手くそ」な描き方は、荒れ狂う海で人が立っていられない状況を明確に表現できています。

もし船上で人が転んでいる様子を上手に描いたとしたら、このイラストほど分かりやすくはならないでしょう。
何故なら、「上手な」描き方をすると、余計な情報（人の焦る顔、服装、身体の動き等）が含まれてしまうからです。
ですが、このイラストでは「人が転んでいる」以外の情報はありません。だから、このイラストを見る人は、その大事な情報だけを明確に理解できるのです。

ピカソは子供は誰しも絵の天才と言いましたが、それは子供は描きたいところしか描かない（描けない）からです。
情報の大胆な取捨選択は近代芸術の基本です
余計な情報を捨てることで、伝えたいことが、よりダイレクトに表現できることがあります。

イラストの構図

斜めになった波面は、荒れる海の不安定さや激しさを表現しています
サメハダーの傾斜角度は、波面の傾斜角度よりも高く描かれており、荒れる海に更に逆らって泳いでいる様子が表現できています。

イラストの配色

アクリルガッシュはツヤのない不透明な絵の具で、ベタ塗りをすると子供のイラストのような雰囲気を表現できます。
ですが、それは子供の落書きのように見えるというだけで、実際にはプロならではの巧みな色使いが感じられます

船、人、波、サメハダーの後方のスピード表現を子供の落書きのように描いているせいで目立ちませんが、色の塗り方は非常に丁寧で、夕陽を反射して刻一刻と変わる水面を、多くの色を用いて表現しています