これは

誰よりも愛する

旦那を亡くした姉の言葉




子供ができず

結婚十五年目にして

四十過ぎて子供を授かった


 


一粒種の娘




子供にも言ってた

ママの一番はパパ

◯◯(娘)は2番目だよ




その娘が幼稚園に上がった歳の夏

旦那さんは還らぬ人になった





夜に爪を切ると言われた




親の死に目に会えなくなるよ







親?

只 いるだけじゃん

別に望んでない




だから?

何か問題でも?

ってなもんだった




ある程度の年になると

あぁ 成る程ね

ってわかったけど




今で言う毒親を持った自分には

悲しみとか泣くとか

そんな感情持ち合わせてないと  

高を括っていた




だから

そんな言葉 気にもしてなかった




実際に親の死に目に会えたのは

母親だけだった




親の死に目に会えない事に

なんら執着もなかった




だけど…




実際は

自分が予想だにもしなかった事態




父親の時

その姿を見た途端

涙が溢れて止まらなくなった




その時に

姉に言われた言葉




やっぱり あんたはちゃんと心のある人間だったね

安心したよ





毒婦の母親の時も

危ないとの知らせに夜中病院へ行くも

持ち直して




何か有れば知らせます

の医者の言葉に

取り敢えず数人が残った




次の日も仕事の私に

姉は何かあったら連絡するから

取り敢えず帰って休めと  言った




だけど

わかってしまったんだ




母親を見た途端




あぁ 最後なんだね   と




だから




帰らないよ 残る   と




明け方

数人の看護師と共に廊下を横切る医師を見て




あぁ とうとうきたか

そう思った




暫くして呼びに来た




初めて

人の死に目にあった




最期迄 泣きながら母親のおでこを撫でていたんだ




私は決して泣き叫ぶ事はない

そのまま病室を出て外へ行った




雨上がりで早咲きの桜が舞っていた

流れる涙を拭う事もせず

ただ だだ つっ立っていた




妹が心配そうに来て

隣に寄り添っていた事を覚えている




親の死に目と我が子の死に目




同じ様で 全く違う




死に目になんか会わない方がいいんだよ

決して忘れられないから




他の事を思い出したくても

それだけが脳裏を占領するんだよ




うん

やっとわかったよ

ホントだね




姉の言葉が

忘れられない