遠雷が少しずつ近づいてきたかと思うと突然の激しい通り雨
ウチのベランダの正面の電線で1羽のツバメが立ち往生して
いた。かなり怯えている様子だった。勇気を出して飛び立と
うとすると稲妻が走ってよろめき、体勢を立て直したかと思
うと腹の底に響くような雷鳴。雨足は一向に衰えず無情にも
ツバメの小さなからだを強く打ち続ける。
事態は変わらず15分ほどの時間が過ぎた。人間が雷雨を眺め
ている15分と、ヤツらが雷雨に打たれる15分の長さは相当
な差があったに違いない。雨足が少しずつ弱まり薄日が差し
始めると、遠くでスズメの声が聴こえた。仲間だと思ったの
かツバメは辺りをキョロキョロ見回した。
雨も小降りになり、からだをぶるんと振るわせると羽根を濡
らしていた水がはじけ飛び、ツバメがツバメ本来のカタチに
なった。ふわふわと丸味がある……! そぉか、雨の空を見
上げるように時々大きな口を開けていたけれど、コイツはま
だ巣立ったばかりの子ツバメだったのだ。
大きく口を開けると親が助けに来るとでも思ったのだろうか
この春に卵から孵った雛ツバメは巣の中で大きな口を開けて、
エサになる虫をせっせと運んでくる親ツバメをじっと待って
いた。そして梅雨が明ける頃に、巣から飛び立ち空の広さや
青さを知る。親ツバメはひと春に二度の繁殖をするらしいの
で、この子は一度目の雛かもしれない。
一度目の雛は二度目の卵が産まれる頃に巣を飛び立たねばな
らないため、親の手を借りず自分で飛行訓練をする。このと
きに天敵であるカラスやトンビに食べられてしまうことも多
いようだ。雨上がりの子ツバメは、電線のジョイント部分に
ある陶製の部品の上に乗って遊び始めた。
さっきまでの心細さをすっかり忘れたかのように無邪気に、
部品の上に乗ったり滑ったりを繰り返す。濡れた部品がツル
ツル滑るのがそんなに楽しいのだろうか。何度も繰り返すう
ちにバランスを崩したツバメはそのまま空に飛び立った。怖
れや不安を脱ぎ捨て青い空に飛び立った。





