若年のアスリートに鉄剤注射をしていたことが問題になっています。

 

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栄養を学んでいる人にとってはありえない話です。

 

まず基本的なことを整理していきます。

 

血液の中の赤血球の中には『ヘモグロビン』があり、『ヘモグロビン』が酸素を運んでいます。この『ヘモ』という言葉は鉄からきています。

 

生理のある年代の女性は、毎月生理で出血し、ヘモグロビンを含む赤血球を失うので、それによって赤血球が少なくなる(つまり貧血になる)と酸素を運ぶ能力が少なくなり、さまざまな支障をきたします。

 

よくアスリートが高地トレーニングしていますが、高地は酸素濃度が低いので、高地にいると体がそれに順応しようとして、赤血球を増やすのです。その状態で平地に戻ってくると酸素を運ぶ能力が強化されているのでいいパーフォーマンスがだせるということで高地トレーニングが行われているのです。

 

鉄が足りない人つまり貧血の人が鉄を補うと容易にさまざまな症状が改善することがあります。ただ鉄は活性酸素を発生する諸刃の剣と考えられているので栄養の分野でも鉄の補充は慎重になっています。

 

肝臓が悪い人に瀉血療法といって血液を抜いてわざと貧血にする治療法が行われることがありますが、これは活性酸素を減らして、肝障害を減らそうという治療です。貧血になるのでパフォーマンスは落ちるのですが、それを我慢しても肝障害を減らそうとしているわけです。

 

鉄の補充方法には食事内容からや薬やサプリメントからなどがあります。

 

薬の中には口からとるものと注射剤があります。

 

栄養を詳しく学んでいるドクターは注射剤を使うことはほとんどなくなっていると思います。

 

そこまで急激に鉄を補充する必要が通常はないことと活性酸素による障害を避けるためです。

 

食事から摂取して鉄過剰になるということはほぼないと思いますが、薬やサプリメントだと過剰になってしまうことがあると思います。

 

ただ口から摂る分だと自分の腸からの吸収の過程があり、吸収するしないを完全ではないにせよ自分の体が判断してコントロールするのでまだそこまでひどいことにはなりません。

 

注射だと無理やりすべての鉄がいっきに入ってしまうので危険なのです。

 

しかも鉄を補充する際には血液検査で赤血球の量も測れますし、からだのなかに貯蔵されている鉄もフェリチンという検査で判定できます。

 

つまり過剰はすぐわかるのです。

 

鉄の注射を使っていいかどうかは意見がわかれるかもしれませんが、検査をせずに鉄を注射し続けるということはありえない話です。

 

栄養も学ばず、後先を考えず、鉄剤を注射させるスポーツ指導者がいることにも驚きますが、検査をせずに鉄剤を注射し続けるドクターがいることにも驚きました。