より。その後のふたり。
(side S)
「翔ちゃん、おまたせ!」
「よっ」
手を上げればニコッ、て笑ったニノがこっちに小走りにやってきた。
時間は夜10時を過ぎた頃。
夏休み頃からニノは、駅前のハンバーガーショップでバイトを始めた。
俺は塾の帰りがちょうどこの時間になるから、って、バイトがある日は店の前で待ち合わせて一緒に帰る。
時間も遅いし、一緒に帰ってくれたら安心だから……ってお互いの母親が言っててさ。
もう高2だっていうのに、ほんと過保護。
まあこいつは……いつまでも童顔で中学生にも見えるから、心配になる気持ちはわかるんだけどさ……。
ていうわけで今日もそのハンバーガー屋の前で待ち合わせ。
「今日はどうだった?」
「今日も忙しかったぁ。ちょっと失敗もしちゃったし…ヘコむよ〜」
ヘコむなんていいながら全然平気そうに笑う。
「でもまた岡田先輩にフォローもらっちゃったんだぁ〜。すっごいかっこよかったぁ、仕事も早いし対応もいいし。」
「……ふーん」
「あのね、すごいんだよ、岡田先輩はね、」
岡田センパイ、ていうのはニノと同じバイトの大学生。
ニノのトレーナー、つまり指導係で、
入ったばっかの頃から相当お世話になってるらしい。
だからかなんか知らないけど、いつの頃からかニノの話には必ずその岡田って先輩が登場して……
岡田先輩が、岡田先輩がって毎日毎日。
なんか。
なーーんか。
「ねえ、聞いてんの?」
「え?あー、聞いてるよ、失敗したんだろ?」
「もう!じゃなくて褒められたとこもあるんだって!失敗しても、でも今日は昨日よりここが良かったよなって言ってくれて〜。ちゃんと見ててくれてんだなって思って〜。」
「ふーん」
なんか、なーーんか。なんだよな……。
面白くない気持ちを隠そうともせず、ついつい適当な返事になっちゃう。
そんな俺に気づいてんのかわかんねーけど、
ニノはニコニコしながら隣りでずっと喋ってる。
ふたりで自転車を押しながら歩く家までの道。
一人で歩けば遠いのに、だから自転車て来てんのに、
二人で喋ってたら結構あっという間なんだよな……。
「それよりお前、バイトばっかりしてて大丈夫なのかよ?もうすぐ実力テストだろ?」
岡田センパイについての話がなかなか終わりそうもなくて、
話を切り替えたら、ニノはわかりやすくハッとした。
「そうだった……。次もだめならゲーム禁止、って言われてたんだ……」
「次も、って。前もだめだったのかよ?」
「うん……。あー、やばい!どうしよう翔ちゃん!」
「そんなの、勉強するしかねーじゃん。仕方ないな、一緒にする?」
「する!するする!」
やっぱり翔ちゃんがいてくれてよかった!なんて笑顔で言われて、
そのニノの俺に向けた笑顔が……なんか、なんか。
なんとなくモヤモヤしてた気分が、ぱっと晴れやかになった。
さっきまで押すの重かった自転車も、なんだか軽くなった気分。
口笛も出てきそう。いや、夜に口笛吹いたらだめだってばあちゃんが言ってたからしないけど。
ふと見上げれば、大きな月。
ああそうか、今年は中秋の名月と満月が重なるんだってニュースで見た。
「月が……、綺麗ですね……」
呟いてニノを見る。
「ん?なに?綺麗だね?っていうかなんで敬語?」
くふふ、っておかしそうに笑う。
へんなの、翔ちゃん!て言われて急に恥ずかしくなった。
「お前やっぱりもっと勉強したほうかいいな」
「なにそれ!あー、でも確かに!明日からしよう、ね?うちでやる?翔ちゃんちでやる?」
「どっちでもいーよ、隣同士なんだし」
「あ!そうだ!こないだ買った新作ゲームやろうよ、持ってくから」
「ばっか、勉強するんだろ?」
「終わったら!ちょっとだけ!ね?」
「……しょーがねーな」
「やった!」
鼻歌歌いながら自転車を押すニノを横目で見ながら並んで歩く。
少しづつ涼しくなってきた秋の夜の空気を感じながら、
なんだかウキウキした家までの帰り道だった。
明日からが楽しみだな。
(おわり)
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ちょっと遅れちゃった!
けど、10/1の磁石の日の小話です。
書いてたんですけど、書いてたんですけどね?
月末の衝撃によってそれどころではなくなってしまって。笑
現実の世界は残酷なまでにいろいろありますが、
ここの磁石さんはこんな感じですし、
わたしは磁石が好きです!!
なので、
「耳塞がないで目ぇ閉じないでちゃんと見ろよ!!!」
とたとえ沖野くん(検察側の罪人)に言われたとしても、耳塞いで目を閉じて見ない事にするよ〜ママ〜ママ〜(松倉)(見てなかったらわけわかんないやつ)
で、前に書いたコラボの『いい天気』のかわいい二人です。
中高生とかの設定にするとどうしてもニノが可愛いキャラになってしまう。
違うんだよなぁ〜とか思いつつ。笑
そしてこのバーガーショップ店員のニノが、成長してコレになるという……笑
誰も知らないであろう女子語り妄想。笑
ここには書いてないんですけど(つぎの記事に書いた)
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二宮先輩に着信が入って、
「あ、もしもししょうちゃーん?うんうん、わかった、タマゴ買って帰んね、またねーん」
て甘えた声で話すのを見て、
あーん、彼女さん?失恋しょぼん、
みたいな展開もつけたかったんですけども、長くなるのでやめました(笑)
彼女っていうかカレシですけどね!的な!ぐふっ。(だからやめなさい)
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ていう後日談含め、
好きな設定なので勝手に思いつきで結びつけちゃいました。笑
なにはともあれ、
わたしは!磁石が!すきだ!!
と叫んでおわります。
蛍