(side N)
それは俺達がまだ若かった頃の話。
「すっごいの見つけた!」
相葉さんちに入るなり興奮気味にそう言われて。
何を言ってんだかコイツは、って思いつつソファーの定位置に腰掛けた。
今日は仕事が巻きで終わって、久しぶりに家でゆっくり早い時間からゲームができるって思いながら帰ろうとしたところをこの人に呼び止められて、
ちょっとうちにおいでよ、って誘われて。
大丈夫オレごはん作るから、って何が大丈夫なのかわかんないけど、そう言われて。
それでまあなんとなく、この人んちにつれて来られて。
家に入るなり、これですよ。
「アンタ相変わらず主語がないよね」
「いやでもニノ、マジだって!すごいよ!」
「…なんの話よ」
相葉さんはそれを聞いて俺を見てにやん、と笑って、「ま、とりあえずメシね」ってキッチンに入った。
「先に風呂、入ってていーよー」
「なに泊まってくこと前提で言ってんのよ」
「だって明日オフだって言ってたじゃん。いいだろたまには!」
ゆっくり飲もうぜ、って、出来ないウインクをしながら言うから、それ見て笑って。
風呂から出てきたら、テーブルに料理が並んでて…。
ここ最近、おかげさまで忙しくさせてもらってるから、この人んちに来たのも久しぶりだけど、それだけに手際よく用意されたメシに舌が驚く。
ワクワクした顔で「どう?どう?」って聞いてくる顔は前と変わらず。
「美味いんじゃないの、ふつーに」
「ふつーってなんだよ、とびっきりうまいって言えよ!」
なんてやり取りも前のまんま。
そんなこんなでメシも食って軽く飲んで、ゲームでもしますかってソファーに深く座ってたら、
わくわくわくって顔に書いてある相葉さんが飛び跳ねるみたいにして隣に座った。
「お・ま・た・せ」
「だから、なんなのよ…」
「これこれ、オレ、すっごいの見つけたの!」
パソコンの画面を開くと、すぐその画面は現れた。
なに、これ。
「こないだ検索してたらさ、見つけたの」
画面には、嵐の文字。
いわゆる、ファンサイトってやつらしい。
写真やイラストとともに、俺達のテレビ番組やらコンサートやらの感想なんかが書いてあって。
「あー、こういうのね」
「すごいよねー、イラストも超上手で!細かいところもよく見ててくれてて!」
「ありがたいことですね」
俺もチラッと見たことがあるけど、そこには俺達への愛が溢れてて、ほんとにありがたいなって思うんだ。
「すっごいのとかいうからさー、いったいどんなエロサイト見せられんのかと思ったわ!」
ソファーの肘掛けに頭をのせて仰向けに倒れ込みながら笑ったら、ふっふっふ、と相葉さんが意味深にニヤついた。
「それがさー、見てよ」
そのサイトの下の方にあるリンクをクリックする。
「パスワード設定…?」
「そう!これ、ちょっとむずかしかったけどね」
クイズかなんかになっているそれを、負けず嫌いのこの人は必死になって解いたらしい。
ある意味野生の勘というか…。
メモに残したそのパスワードを入力すると。
ぱっと画面は黒背景になった。
「え…?」
「ほら、ここ」
相葉さんがクリックした先には、少女漫画みたいな可愛いイラストが書かれていて。
もしかして、これ、俺と…相葉さん?
俺と、相葉さんみたいなふたりが…
キス、してる。
「えっ…」
「凄くない??絵も小説もあるんだよ。オレ、見つけてびっくりして、これニノにも見せなくちゃって思って」
「見せなくちゃってどういうことよ…」
「ちょっと見といてよ、オレ、風呂入ってくるから!」
「え?!は?!」
ひらひらと後ろ手を振って風呂場に消えてった。