あの頃の俺は、叶わない想いを抱えていた。
抱えながらも、あいつの側にいたくて…少しでもあいつのまなざしが欲しくて、もがいていた。
この会見の時…あの取材の時も、隣に並んで俺が、どれだけドキドキしていたか。
おまえは知らないだろうな。
そんなことを思いながらふと、隣を見ると、カズもこっちを向いた。
「なんかこのころ、俺と翔ちゃん隣が多いよね?」
琥珀色の瞳をキラキラさせて言うから、
「そうか?」
なんて、余裕のあるふりをしてみる。
「そうだよ、ほら、この時もさー、この前もそうじゃなかった?」
そんな風に…はっきり覚えてないってことは、本当にこのころ俺は眼中に無かったんだろうな…なんて思えば、苦笑いしかできないけど。
若い頃の俺の目が、伸ばした手が、あまりにも甘くて。
想いが溢れてた。
それでもこの想いが届くことはないんだろうなって諦めて。
だけど、諦めきれなくて…。
そんな、悩んでた自分が見えて。
それと一緒に…画面の中で相葉くんをみるカズの目を見て…
その目の中に切ない恋の炎が見えたような気がして、もう見てられなくて。
立ち上がって風呂へ行った。
リビングに戻るとカズはもうテレビを消していて、転がってスマホゲームしてて。
いつも通りの姿を眺めながらキッチンへ行く。
冷蔵庫から出したビールをプシュッとあけながら、「カズもいるー?」って聞けば、「俺はいいやー」って声。
飲みながら缶を片手にいけば、スマホを置いて「ここ、ここ」って床を叩いた。
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