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「聞いたよ。ぶっ倒れたんだって?」
部屋に入ってきてキャップを脱いで、前髪をバサバサとかき混ぜながら言うのに、オレは慌てて否定した。
「違う違う、ちょっと寝てただけだって。知らない間に」
はーーっ、とため息をついてニノは、オレを上目遣いに睨んだ。
「それを”ぶっ倒れた”って言うんでしょうよ」
「……そうかな」
「そうだよ。だいたいあんたは、いっつもドラマのたんびに痩せちゃって…。体調管理も仕事のうちでしょ?」
ぶつぶつ文句を言ってるニノの目が、『心配した』って言ってて、
怒られながらなんとなく嬉しくなっちゃった。
明日も早いから今日は泊まらずに帰る、って言うニノに、ビールじゃなくコーヒーを入れてあげながら、
オレは、今日見た夢の話をした。
ニノとオレに、赤ちゃんができたんだよって言ったら、飲んでたコーヒーを吹き出しそうになってむせて。
「あんた、何考えてんのよ…」って、真っ赤な顔をして呟いた。
「すっごい元気な赤ちゃんだったんだよ!お腹の中でムニムニ動いて…オレの呼びかけに返事するみたいにさあ!」
「ふーん…」
「もう少しで産まれる所だったのに、具合悪くなっちゃって…。あのあと、どうなったんだろう」
「何言ってんのよ、夢の話でしょ…」
「そうなんだけどさ」
「あなた、見るからに子ども好きだもんね…」
「うん!子どもは、好きだね」
夢でよかったな、って気持ちと、やっぱり心配って気持ちと、
産まれてたらどんな赤ちゃんだったんだろうってちょっと残念な気持ちと…
いろんな思いが巡りつつ、ふと見るとニノはなんとなく暗い顔をしていて。
オレはぎゅっとニノを抱きしめた。
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