「じゃあ…」


って言って、潤は目を閉じた。


至近距離、数センチのところで目を閉じる潤…こんな近くで見るの、久しぶりだ。
小さいころ、俺んちに潤が泊まりに来て一緒の布団で寝た時に、
寝返りを打ったら超目の前にいた時がある。



そんときも思ったけど…


ホントこいつ、まつ毛長いな…。
ふっさふさのまつ毛は閉じると余計に存在感があって。
意志の強そうな眉も今日は少し、下がり気味だ。


ぽってりとした、唇。
唇のホクロがセクシーで……
って、俺、何言ってんだ。こいつ相手にセクシーとか!



ぶんぶん、って頭を振って追いやって、そーっと近づいて…。

唇同士をくっつけて、ぱっ、と離れた。



「ほら、したそ!終わり、終わり!」



握りこぶしをぐっと握って目を閉じていた潤が、目を開けてきょとんとした。




「え?もう終わり?」

「終わり終わり終わり!」

「ほんとに?」




そう言って潤は、しょんぼりと頭を下げた。




「手抜き…してるでしょ。」

「はぁ?」
「だって……。こんなキスならもうしたことあるよ。幼稚園の時に」




よ、幼稚園……!
今度は俺がガクッと頭を下げる番。



「俺の相手なんか…その程度で充分だって思ってんでしょ。いつまでも子ども扱いしてさ…」



俯いたまま、上目遣いに俺を見る。
じわっと涙のつぶが盛り上がってくるのが見えた。
こぼれ落ちそうなほど大きな瞳から、今まさにこぼれ落ちそうな涙が、綺麗で……



なんなんだ!

くそ!

さっきから、俺、おかしい。



なんだよ……、潤が…子どもの頃から一緒の潤が、こんなに綺麗に見えるなんて。
ドキドキするとか、おかしいだろ!




「翔くん……」

気がつけば、目の前に潤が立っていた。
至近距離で見る長いまつげが、涙で光っている。
必死で零さず耐えている姿が、いじらしくて。




「子ども扱いなんか……してねえよ」



そう言って、潤の頭の後ろを掴んで、抱き寄せて。
そのまま、唇を重ねた。









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