✳︎蛍です。

『別れの曲』のふたりのその後の短編です。






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(side A)





「ありがとうございましたー!」




カランコロン、とドアベルの音ともに、最後のお客様は帰っていった。



四人がけのテーブルの上の、食器の乗ったトレーを運ぶ。
ダスターでさっとテーブルを拭いて、ついでに掃除もしてしまおう。


小さな店だから、テーブルの数も少ない。
たった4組ばかりの4人がけのテーブルと、椅子の座面も丁寧に拭いて。
たてかけたメニューも別のダスターでサッと拭いて。
カウンターも同じように。



床を軽く掃いて、おしまい。


箒を手に、知らず、ふう、とため息をつく。







今日は、なかなか忙しかった。


オレの店。green leaf。
20人も入ればいっぱいになってしまう小さな店だけど、それなりにやってきた。
高校の卒業式間近に、ここを引っ越してから、料理の道を目指して、修行して……
10年以上経って、
オレは、この街に帰ってきたんだ。


地元の人たちもとても親切で、
口コミでこの店のことを宣伝してくれて。
今は、常連さんもたくさん出来た。



とくべつ、シャレた料理が出てくるわけじゃなくて、どちらかと言えば家庭料理に近い店だけど、
そこがいいって常連さんたちは言ってくれてる。



今日も、そんな常連さんたちが集まって……なかなかの賑わいだった。


今日は久しぶりに、ニノも来たんだよな。


さっきまで友人が座っていた、カウンターの端の席をみて、なんだか口角が上がる。





ニノ。二宮和也。
幼稚園のひよこぐみさんからの腐れ縁。
小学校も、中学も高校も、同じ学校に通った。
高校でオレが引っ越すまで、ずっと、ずっと一緒だった。





オレの1番の友達。






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