「翔ちゃん!来てくれたんだ、久しぶりだね!」

「あ…うん、久しぶり…」


なんだか、翔ちゃん、ぼーっとしてる。


「どうしたの?」

「あ…いや……
あ、そう!久しぶりに聞いたらさ、すげえ上手くなってんじゃん、ピアノ!」

「でしょ!?オレ、翔ちゃんが来てない間もすっごい練習してたからね!」



ホントだよ?オレ、翔ちゃんがまた来てくれた時に、すごいって言ってもらいたくて、頑張ったんだから!

まあ、モヤモヤしていたのをごまかす為もあったかも…。

絶対、翔ちゃんに完成版を聴いてもらわなくちゃ。
そう思って、頑張って練習したんだから!



「ありがとね、翔ちゃん。
これも、練習に付き合ってくれたおかげだよ。
オレ一人だったらもしかしたら、途中で投げ出してたかも知んない…。ホント、ありがと。」

「…っ!あ、うん…。そんな、俺は、別に…」


いつもハキハキした翔ちゃんが、なんかモゴモゴしてて…


「どうしたの?なんか変。」

「いや、そんなことない!全然、あ、いや…変かもしれない、あれかな、ちょっと疲れたのかもな…うん、うん」

「…大丈夫?勉強のしすぎ?」

「あー、うん、そうかも!なんか…ごめん、俺、今日は…」

「もう帰って、今日は早く寝た方がいいよ?」

「そうだな、うん、じゃ、また…。わっ!」


半分閉まったドアに肩をぶつけて、大きな音をたてながら帰ってった…。

どうしたんだろ、変だな、ホントに疲れてんだろうな。

久しぶりに会えたのにな…。


あっという間に帰っちゃった翔ちゃんに、ちょっと寂しい思いをしながら、オレも家に帰った。


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