「それに……、さっき、あの子の楽屋で言ってくれた言葉が、ニノの本心だって……
そう思っても、いいんでしょ?

ニノも、俺と同じ、でしょ?」



翔さんの鼓動が、さらに早くなる。
コンサートの時だって、あんまり心拍数が上がらない強心臓な翔さん。
今はその早い鼓動が俺のからだに直接響いてる。


「どうなの?あれは…あの場を収める方便だった?」



不安そうな声に……、俺は、身動ぎして顔を翔さんに向けた。


翔さんは、両手で俺の頬に流れる涙を、拭ってくれた。



その手に触れて、手の温もりを感じる。

この手は、いつも俺を包んでくれた。

どんな時も、俺を……。




不安そうに俺を見る翔さんに、手を伸ばして。

そっと、キスをした。





触れる唇から伝わる想い。
これだ……。


俺の求めるものは。
これなんだ、って。
じわりじわりと唇から、まるで暖められるような。泣きたくなるような、そんなしあわせを感じて。
ただ、触れるだけのキスをした。



「翔さん……好き、好きだよ……」

涙がひとしずく、翔さんの頬に零れる。

「ニノ……」

「やっぱり……俺は、翔さんが好きだよ…。もう、翔さんじゃないと、ダメなんだ……。
俺も、ぶれてないでちゃんと向き合わなきゃいけないって、思ったから……。だから……」



こんな俺でも、いいですか?って、言いたかった言葉は、
翔さんの唇の中に包み込まれてしまった。




噛み付くようなキスに、からだが痺れる。

苦しくて開けた口の中で、翔さんの舌が暴れて、その勢いに吐息が漏れた。


はぁ……って、色っぽいため息とともに唇が離れて。


翔さんの目の中に、炎が点って。
きっと、俺も……。



「ニノ……、

和也…、愛してる」


そう、囁いて。
今度は、優しく。
唇をぺろっと舐められて、ビクッとする。

好き、好きだよ、カズ…って、甘い囁き声の合間にキスをくれて、

それが、すごく気持ちよくて……。からだの力を抜いた。




あんだけ悩んでいたのは、一体なんだったんだろうって思うくらい、
初めての夜は、とても……しあわせで。
流れる涙すら、暖かくて。



どんな迷いも、不安も、乗り越えていけるって、
翔さんの腕の中で、そう、感じたんだ……。







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