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次に目が覚めると、見知らぬ天井が見えた。
頭がガンガンと痛い。
何か飲まされたんだろうか…普通の二日酔いでは経験したことのないだるさに、顔をしかめる。
広いベッドに、俺は1人、横になっていた。
着ていたスーツは脱がされ、クローゼットにかけられてはいるものの、シャツやアンダーウェアは身に付けたまま。
ベッドも、特に乱れたところは見当たらないことに、ホッとする。
そもそも、彼女は……?
痛む頭を出来るだけ揺らさないようにゆっくり起き上がると、ベッドサイドのテーブルにメモが置かれているのが見えた。
──昨夜は、ありがとう。また、お会いしましょうね
クソ!
俺は舌打ちしながらそのメモを手の中で丸めてゴミ箱へ捨てようとして…思いとどまってカバンの中に突っ込んだ。
こんなメモ、誰かに見られでもしたら…。
華奢な彼女が意識を失った俺を1人でここに運べるわけがない。
まさか、ホテルの従業員に頼んで…?
それとも、フラッシュをたいただろう、カメラマンか、記者…。
考えようとしても頭が痛んで考えられなくて。
だるい身体を奮い立たせながら昨日のスーツを身につけて、急いでホテルをあとにして自宅へ帰ったんだ。
その後……特に彼女からの接触も無かったし、
もうこのことは無かったことにしようって、思ってた。
心配かけたくないから、誰にも……メンバーにも、もちろん、ニノにも、言わなかったんだ。
言う必要は無いって、判断したんだ。
だけど。
彼女が、俺に接触しなかったのは……このためだったんだ、って。
このための準備だったんだって。
気づいたのは、事務所に呼び出されて、記事のゲラを見せられた時だった。
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