いつの間にか、そのまま浅い眠りに落ちていたようで。


夢うつつのなか、遠くにインターホンの音が聞こえたような気がして、うっすらと目を開ける。


思ったよりカラダも疲れているのか、ぼーっとして動けない…。





しばらくしたら、玄関でガチャガチャと音がして、



「おじゃましまーす」


て、小さな声が聞こえた。




え?!なんでよ?!


ビックリして、とっさに目を閉じて、
寝たふりをしちゃった…。







廊下と、リビングを隔てるドアが、そっと開く音。



ソファーの前に、静かに座ったのが気配でわかる。



俺の前髪を、そっと指ですくって、耳にかけて。


ふわっと香る、翔さんの匂い。


こないだ、合鍵、渡したんだよね。
使ってくれたんだ…。





「ニノ…。」


耳をくすぐる、翔さんの低い、甘い、声…。

俺だけが聞ける、声。




指が、髪を撫でる。




「ごめんな、寝てるのに…。

どうしても、顔が見たくなって。

何となく、さ。声に元気がない気がしたから。

気になって…。」



小さな声で囁きながら、するすると髪を撫でる。




.俺は…。


髪に触れる指が、気持ちよくて。

声が、心地よくて…、




触れられた指先から、声色から、
翔さんの、俺への気持ちが伝わってくるような気がした。



髪をなでていた手が、静かに離れて、立ち上がりかけた気配がしたから、
慌てて目を開けて翔さんの手を掴む。



「うおお!び、っくりしたー!!なんだよ、ニノ、起きてたのかよ?」


「んんん、今起きた」


手を引いて、離れようとする翔さんに、慌てて縋るように抱きついた。






「…翔さん…。」




「ご、ごめん、急に来たりして。寝てるってわかってんのに。なんか、電話の声が、さ、気になって…。
顔だけ見て、すぐ帰るつもりだったんだ。起こすつもりもなくて…。驚いただろ?」



一生懸命に言い訳してるけど、
そんなの…どうだっていいのに。



俺は、もっと強くぎゅーって翔さんに抱きついた。
おでこをぐりぐりと翔さんの胸に擦り付ける。





「翔さん……、翔さん、しょう、さん…」


「ふふ、なんだよ…。」


翔さんも、腕を俺の背中に回して、ぎゅっと抱きしめてくれて、
俺の頭に、チュッ、てキスをする。



俺も、
顔を上げて、翔さんの目を見つめた。
両手で頬を包む。
この、触れた手から、視線から、吐息から、
俺の想いも届くように。