どこをどうやって帰ってきたのか…
気がつけば自分ちに帰りついていて、
そのまま、よろよろとソファーに倒れ込む。



目を閉じると、浮かんでくる後ろ姿。
まるで…幸せ家族を絵に書いたような…。





あれが……。

普通の姿なんだよな…。



そうだよ。



翔さんの隣には、ああいう女性が、似合ってる。




わかってたんだ。






わかってたけど…

現実に、目で見ちゃうと、ちょっとキツイ。







ソファーに置きっぱなしだったブランケットに潜り込む。



このブランケットは、翔さんが気に入って持ってきたやつ。



手触りが気持ちいいからって、自宅で使ってるやつをお揃いで俺んちにも買って持ってきた。


ここで、テレビ見ながら、ふたりでくるまって…。


翔さんは、ブランケットの端っこをクニクニと触りながら、うとうとしてたりして。


疲れて寝ちゃった翔さんに、掛けてやったり、したな…。




目の下までブランケットをかぶって、息を吸い込むと、
ほんのり、翔さんの匂いがした。


もうしばらくうちにも来てないもんな…。




このまま、ソファーで寝ちゃおっかな。

そんなふうに思っていたら、スマホが鳴った。




「もしもし…。」

『あ、ニノ?俺だけど。』

「…なに?オレオレ詐欺?」

『フフッ、何言ってんだよ。
今日、スタジオに来てくれたんだって?スタッフさんから聞いた。』

「…うん」

『なんで声掛けてくれなかったんだよ。
会いに来てくれたんじゃねぇの?』

「いや、別に…。近くを通ったから、お世話になったスタッフさんに挨拶しようと思って。」

『ふふ、そうなの?』

「……。」

『どした?眠い?』

「…ん」

『そっか、ごめんな。』

「…ん」

『じゃ、また撮影の時な。
おやすみ。』

「おやすみ…。」




声が、震えないように返事するのがやっとだった。


翔さんの声は、優しくて、甘くて、
電話もらえてホントに嬉しかったのに。



ぶっきらぼうな返事しか出来なくて。






ジワッと浮かぶ涙には、気付かないふりをして、そのまま目を閉じた。









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