「はぁ……。」



ひとり、楽屋で。
知らず知らずにため息が出たのを、バレないように飲み込んで、
俺は、ゲームの画面に集中した。
どうせ一人の楽屋なんだけど。
ため息ばっかりついている事が、なんだか気恥ずかしくて、意識してしっかりと口を閉じる。




あれ以来…っていうか、ここ最近全然翔さんとふたりで会えてない。


仕方ないんだけどさ。
翔さんは…ドラマの撮影も始まったし、ロケも多いみたいだし。
ニュース番組で地方行ったりもしてる。
俺も、忙しくさせてもらってるし。
仕方ないんだ。


わかってんだけどさ…。



「あーあ!」

今度は隠さずにデカイ声で言って、手に持ったスマホ用のタッチペンを机に放り投げた。


ゲームもイマイチ気が乗らなくて、さっきから失敗ばっかしてる。



お互い忙しくて、なかなか会えなくて、
電話するのもタイミングが難しい。
ロケやなんやらで遅いかも、だし。
明日、早いかも、だし。
実際、そうだろうし。


メールしても、なかなか既読にならなくて、
「今日、時間ある?」って送ったメールに、
夜中に、『ごめん、今日は、無理っぽい』みたいな返信があったのを、俺が朝見る、みたいな。



そうなるとさ…。
なんだか、メールすんのも悪いような気がしてきて、
俺のメールに気を取られるくらいなら、休める時にゆっくり休んでほしいし…。
なんて。




「あーあ!」

もう1度、でっかい声を出して。
ソファーに寝転んだ。



こうやって、自然消滅…してくのかな…。



寝転がった先に見える、楽屋のドア。



あの日、
仕事の合間に時間を見つけて、この楽屋に来てくれた翔さん。



正直、あの時俺はムカついてた。


俺のこと、あんなふうに振っといて何しに来たんだよ、って。


それなのに…。

翔さんは、俺を抱きしめて、好きだ、って…。
付き合って欲しいって…言ってくれて。



あれから、そんなに時間が経ったわけでもないのに。
俺って、こんなに女々しい人間だった?






むーっとドアを睨むようにしていたら、
コンコン、とノックが響いた。

反射的にガバッと起き上がる。




「二宮さん、撮影…開始します、けど…」

「なんだ…」


ADくんか。ちぇっ。

ま、そうそういつも翔さんが来るわけないじゃん。
俺も大概だよな、って、ちょっと笑った。


「どうしました?」

「なんでもなーい。さ、行こー。」





スタジオに向かいながら、あとでマネージャーにスケジュール聞こう、と決めた。









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