ふたりが作ってくれた料理をたくさん食べて、久しぶりに腹いっぱい。
すっごいいい笑顔で、へろへろに酔っ払った相葉さんと、それを見守る潤くんに見送られて、潤くんの家をあとにした。
乗り込んだタクシーの窓には、大きな月。
軽く酔って、フワフワした頭でそれを見る。
綺麗だな…。
この月、翔さんも見てるかな。
…逢いたいな。
柄にもなく、そんなこと思った俺は、きっとラブラブな相葉さんたちに当てられちゃってたのかな。
自分に苦笑しながら、運転手さんに声をかけた。
一か八か、インターホンを押す。
帰ってきてるかな。
居なかったら、なんてことはあんまり考えてなかった。
そん時は、そん時だ。
『え?あ?ニノ?何で?!』
モニターの向こうで大慌ての様子の翔さんは、それでも、上がってきて!ってすぐロックを解除してくれた。
エレベーターの中で、自分の行動に改めて苦笑する。
こんなこと…。するような俺じゃなかったのに。
エレベーターのドアが開くと、目の前に翔さんが立っていた。
「わ!びっくりしたー!」
「こっちこそ、びっくりしたよ!」
ふたりで笑いあいながら、翔さんちへ。
「ちょっと、散らかってるけど…」
と、招き入れてくれた部屋は、うん、散らかってる、っていうか、ものが多いというか、
ごちゃごちゃした印象だったけど、そんなこと、気にならなかった。
それよりも、あの日、
飲んだあと俺を呼んだ日、あの日は、ちょっと片付けてくれてたのかな、なんて思う。
ふふ。
「え?え?なに?ごめん、散らかってるよな…」
「ふふ、そうじゃなくて。
こっちこそ、ごめんね?急に来たりして。」
「いや…びっくりしたけど、嬉しいよ」
冷蔵庫からビールを出して俺に一缶くれる。
わざわざグラスに注いだりなんかしない。
缶のまんま。
ゴツン、と缶をぶつけ合って、乾杯して。
「松潤のとこ、行ってたんだろ?」
「うん…。もうね、あてられちゃったよー。あのひとたち、ラブラブで。」
「ふふ、そうなの?」
「だから、かな?」
「ん?」
「逢いたくなって、来ちゃった」
ばっ、と音がしそうな勢いで翔さんがこっちを見る。
目を見開いて、ふふ、こぼれそうだよ?
普段は、照れくさくて絶対こんなこと言わない。
今日は、なんか俺、おかしいかも。
だけど…、たまには、ね。
「好きだよ」
「は?え?ニノ?」
「ふふ、びっくりしすぎでしょ…」
「いや、だって…」
「結局、まだ言えてなかったから、さ。」
そう言って、驚いて固まってる翔さんの手から、缶を取ってテーブルに置いて。
俺から、翔さんを抱きしめた。
「翔さん、好き。」
固まったままの翔さんに、そっとキスをした。
翔さんはカチーンと固まってて、ふふ、突発的事象に弱いんだよねこのひと。なんて思って、
抱きしめたままクスクス笑ってたら。
翔さんに痛いほど抱きしめ返されて。
「あ、再起動した」
翔さんのなかのスーパーコンピューター、よくフリーズするよねって笑って。
そりゃフリーズもすんだろ、ってすねた唇が、
俺の唇を塞いで、
ぎゅうっと抱きしめられた。
いろいろあったけどさ。
これからも、いろいろあるかもしんないけどさ。
翔さんに包まれて、
俺の、今の幸せを噛み締めた。
この愛に祝福を。
(end)