(side M)







ニノから電話をもらった時、俺はタクシーに乗っていた。
仕事のあと、友達の誘いに乗る気にもなれず、ひとりで行きつけのバーに行って少しだけ飲んで…。
それから、タクシーで自宅に帰ろうと思っていたんだけど。


あまりにもまーと会えなくて…正直いって、限界だった。
このまま、いつゆっくり会えるかわからないままでいても、埒が明かないし。
第一、黙って待っているなんて俺の性に合わない。
だから、運転手さんに伝えた行き先を、まーの家の方向に変えてもらったところだった。


さすがに、この時間なら自宅に居るだろ…。


その時、ニノからの着信があったんだ。
一も二もなく、すぐ行くって答えて、電話を切ったあと、シートに深くもたれかかった。
流れる景色を窓から見ながら思う。


まーに何を言おうか…。
アイツの本心を聞き出さなくちゃ。



それにしても…。

ニノには会ってんじゃん。
俺のことは避けてるのに。

そんな、嫉妬心がふと芽生えて、頭を振った。


アイツを信じて。ちゃんと、話をしなくちゃ。











まーのマンションに着いた時には、もうニノは帰っていて居なかった。


まーは今日も目を赤く腫らしていて、でも、その目は俺を見ることはなく、気まずそうに俯いている。


まーに断って冷凍庫を開けさせてもらって、保冷剤を取り出す。
前にケーキをここで食べた時の保冷剤。
結構マメなまーが取っておいてあったのを、覚えてたから。
それを、タオルに包んで渡す。



「目、冷やしな?」

「…ありがと…。」



俺は、ソファーに座り、トントンと座面を叩いてまーを呼び寄せ、隣に座らせた。