「まー、どうしたんだよ…」
「……、だよ」
よく聴き取れなくて、聞き返す。
「何?」
「オレだけ…しあわせになるなんて…出来ないよ」
それは、小さな小さな声だった。
いつもの、甘い、癖のあるまーの声…俺の大好きな声とは、別の声のようだった。
震えて、掠れる…冷たい声。
感情を失ったような声だった。
「とにかく、今日は帰って!」
そう言って俺をグイグイと押して玄関まで追いやってくる。
帰って、の一点張りでもう、何も話そうとは思ってくれていないようだった。
いったい、何があったんだよ…。
俺のことを、『特別な恋人だ』って…『あったかくて安心する』って言ってくれたのは、ついこの間の事なのに。
クソッ!
自宅に帰ってきた俺は、ゴミ箱を蹴っ飛ばして八つ当たりしながら、
それでも、次に会うまでには、なんとかまぁの本心を聞き出さなくては、と心に誓っていた。
それでも。
こんなことは今日だけの事だろうと。
なんか虫の居所が悪かったのかな、と。
疲れてたのかな、と。
そんなふうに気軽に考えていたのに。
次にあった時も、その次に会った時も。
それからずっと、まぁは俺を避けているようだった。
電話をしても、出ない。
メールの返事も来ない。
LINEは既読にすらならない。
こんな時に限って仕事も忙しくて、なかなか会うことも出来ない。
焦りばかりが俺を支配していた。
まーに会いたい。話がしたい。
会いたい。会いたい。
会いたいよ。
あの黒目がちな丸い瞳が、俺を見るのを見たい。
華奢な身体を抱きしめたい。
まーが、好きなんだ。