だから、俺は自分のその想いに蓋をして、鍵をかけたんだ。
その、パンドラの箱は、きちんと手の届かないところに仕舞った筈だった。



なのに。




あの日、相葉くんと松潤が、付き合うことになったって宣言して。
俺は、驚きのあまり「おめでとう」としか言えなかった。



てっきり…相葉くんとニノは付き合ってるとばかり思っていたから。
ニノは…その時、笑ってた。
笑って、平気そうな顔をして、ふたりを祝福していた。



平気なわけ、無いだろ…?
笑うなよ…ニノ、そんな目をして、無理して笑うなよ…。



俺の見たいお前の笑顔は、そんなんじゃない。




だから俺は、アイツを元気づけたくて。
ふたりで飲む機会を作った。
辛いなら、吐き出せばいい。そうしたらまた、アイツの笑顔が戻ってくると思って。




思いがけずニノは、早々に酔いつぶれてしまった。
そこまで飲ませたつもりは無かったんだけど…。
店を出る時には、完全に眠ってしまっていて、とてもタクシーで自宅に帰らせる事は出来なかった。
だから、仕方なく俺の家に連れていったんだ。





俺のベッドで、無防備に眠る、ニノ…。
愛しいひとがそこにいる。
俺も、少なからず酔っていて。
だから…、そっと、ベッドに近づいた。
仕舞ったはずの想いが、胸の奥で暴れだす。
触れたい。
自分のものにしたい。
心臓が耳のそばにあるように、大きな音で鳴っている。
顔を、ニノのそれに近づける。
吐息がかかるほど、近く。
間近で見るニノは、やっぱり綺麗で…。
その、薄めの口唇が、少し開いて、赤い舌が見えた…。





「う…ん…あ…いば、さ…」

ガバッ!とはね起きて、ニノから離れた。
俺は…いったい何を…!

ニノは、まだ眠っていて…それなのに、眠りながらも、相葉くんの名を呼んでいた…。
目尻に、涙の粒がたまっている。


「ニノ…」


俺は、罪悪感に蝕まれながら、部屋をそっと出て、頭を冷やそうとシャワーを浴びにバスルームへ向かった。