《side S》




音もなく病室のスライドドアが閉まって、しん、と静寂が訪れた。
はぁ…とため息をこぼす。
自然に振る舞えていただろうか?
いわゆるメンバーに対する普通の対応が…できていただろうか…。
月明かりのなか、自問自答する。




ここ最近、何となくだけど…ニノとの間がぎこちないような気がしていた。
どことなく、目が合わないというか。さり気なくそらされているような…。
それも気になって、忙しい仕事の合間も、自宅に帰ってからも、ちょっと隙間があくと、考え込むことが多かったように思う。
だからかな…体力には自信があったのに、ダウンしちまって。
みんなにも迷惑かけちゃったな…。




さっき会ったばかりのニノを思い出す。
いつもの、楽屋入りする時に見る服装もいい加減だるっだるだけど、さっきのはそれ以上…
本気の寝巻きだったな。
なんかシミとかいっぱい付いてたし。
帽子もかぶらずに二宮和也丸だしで。そんだけ慌ててきてくれたのかな。
ふふ。自然と笑みが出る。






知らないうちにニノの事を目で追っていた。
いつから、なんてはっきりした事は思い出せないくらい、前から…ニノと居ることが楽しくて、嬉しくて、ずっと一緒に居たいって思って。
ニノの事を知りたくて。
ずっと見ていたから、すぐ気づいたんだ。

ニノの視線の先にはいつも、相葉くんが居るって事。





ジュニアの頃から、ふたりは凄く仲が良かったのは、もちろん知ってる。
いつもふたりで子犬のようにころころと、じゃれあっていたことも。
最初は、俺もその中に混ざりたいだけだと思ってたんだ。
だけど…。
いつしか、ニノの、笑顔も、泣き顔も、一緒にふざけている時のドヤ顔も、皮肉たっぷりな顔も、冷めたような顔も、照れて真っ赤になった顔も、全部全部自分のものにしたいって思ってる自分に気づいて。
相葉くんに…嫉妬した。
いつでもアイツの隣に居られる相葉くんに。




それに自分で気づいた時。
俺は、自分の想いに蓋をした。
ニノが、相葉くんと居るときの笑顔が、心からの笑顔なら。
俺は、その笑顔を守りたい。
その笑顔が、たとえ俺の為のものでなくても。
ニノの事が……好きだから。