「ごめん、ちょっといつもより疲れてたみたいでさ、取材のあとクラクラっとしちゃって。
安静にしてたら大丈夫、って言われたんだけど、クラクラして倒れた時にアタマ打っちゃってさ、念のため1晩泊まってく?って入院になっちゃったんだよ。
明日には帰れるから。な?」
そう言って俺の頭をポンポンと撫でた。
確かにここ最近の翔さんは凄く忙しい。
コンサートの準備に加え、レコーディング、特番の司会やキャスターとしての取材、ドラマや映画の撮影に新CM。
国内だけじゃなくて海外も飛び回ってる。
しかも、休日ができれば旅行に行ったりしてるだろ。
一日中、一年中、隙間なく予定が詰まってるんだ。
ワーカホリックってこういう人のことを言うんじゃないかって思うくらい。
「ニノ、心配してくれたんだ。そんなカッコでこんな夜中に駆けつけてくれて。
ありがとう。」
はっと自分を見ると、だるっだるのTシャツにぶっかぶかのスウェット。足下はサンダル。
完全なる寝巻き。
「…別に、こんなのコンビニ行けるカッコだし」
「ハハッ、そうだったよなー、前に見かけたことあったもんな。
…泣かして、ごめんな。」
そう言って俺の目の下をそっと撫でた。
かあっ、と顔が赤くなるのが自分でもわかる。
そして、俺にもわかるほど、翔さんは…愛しいものを見る目をしていた。
心臓が、派手に鳴り出した。
「メンバーが倒れたって言ったら誰だって心配すんじゃん、何だよ、倒れるまで仕事するとか、バッカじゃないの?!体調管理ぐらい出来ねーのかよ!」
鳴り出した鼓動をごまかすように、俺はしゃべり続けてた。
「翔さんが…死んじゃうかと思って、俺…すげービックリして…だから…
もう、心配して損したよ!ゲームも途中だったのに、そのまま置いてきちゃったじゃんか!」
「うん、ごめんな。」
寝起きのせいもあってか、なんだかとろんとした翔さんが、ふっ、と笑った。