早歩きで廊下を歩く。

ずんずん歩いて、空き部屋を見つけて入る。
バタンとドアを閉めて、しゃがみこんだ。



これ…あの日と一緒だ。
潤くんと相葉さんが、俺達に所謂、交際宣言、した日…。
俺はあの日もタバコって言って楽屋を出て、こうやって空き部屋に入ったっけ。




そう言えば、あれ以来…
翔さんちで飲んで、その…衝撃発言を聞いちゃった時から、俺、あんまり相葉さんのこと、考えてないな…。
いや、永年の片想いで染み付いちゃってるからさ、全く考えないってことはないよ?
もう、何見ても思い出しちゃったりはするよ?
あれ?俺、ちょっと気持ち悪いこと言ってる?
片想いしてたらさ、みんなそんなもんじゃないの?
だよね、だからさ、考えちゃうとしても、
くよくよするほど考えてない…かも。

それほど衝撃的だったんだよね…。
だってさ、ぜんっぜん知らなかったから。


ふたりで撮影とかだっていっぱいあったし、
一緒にいる事だって多いし、
プライベートで会ったことだって。
でも…俺、ぜんっぜん気づかなかった。


翔さんも、何見ても思い出しちゃうようなことがあるのかな…。
切ない夜を過ごしたことも。
届かない思いに苦悩したことも。



はぁ…俺、何なんだろ。
俺が好きなのは、相葉さんでしょ?

相葉さんの顔を思い浮かべてみる。
ずっと、ずっと密かに思い焦がれてきた笑顔。
胸がぽっとあったかくなる。
長い間あたためてきた想い。


何度も、告白しようと思ったよ。
もう、言っちゃおうかなって、溢れ出しそうなこと、あった。
だけど、その度に臆病な俺が顔を出す。
もしも、ダメだったら?
気持ち悪いって思われたら?
その瞬間に俺は、好きな人だけじゃなくて、大親友を失うことになる。
そんな賭け、俺にはできなかった。


翔さんの、あの日の切ない目を思い出す。
これは…この気持ちは、きっと同情だ。
翔さんは俺と同じ。
叶わない想いを抱えたまま、どうしようもなく佇んでいる。
俺が、そこにいる。



しばらく俺は、しゃがみこんだまま、立ち上がることが出来なかった。