この晩翔さんは、すごい饒舌だった。
オシャレ居酒屋でも、この人んちに移動してからも、よく喋りよく笑っていた。
そして、よく飲んだ。
結果。
「なぁ~。ニノぉ~。もう飲まないのかよぉ~。俺、明日珍しく予定入ってないんですけどぉ~。」
完全なる酔っ払いが出来上がっていた。
うん。
まあ、こないだは俺が酔いつぶれてお世話になっちゃったわけだし?
ぜんっぜんいいんですけどね?
それにここ、翔さんちだし。
手に負えなくなったら最悪、置いて帰ればいいし。
「はいはい、もうやめときなさいよ。飲み過ぎ!」
「いーんだよ!お前ももっと飲めよ!」
なんか、俺の話聞いてやるとか言ってた件は、完全にうやむやになってるし。
俺は、焼酎を少ーしづつ薄くしていきながら、そのとりとめのない話に相槌を打っていた。
「だからさぁ、俺達もじゅう…何年だ?ながーい時間一緒にぃ、運命共同体としてやってきてるわけだよ。な?」
「はいはい、そーですね」
「お茶の間の皆様にもぉ、じゅうぶん知っていただいて、愛していただいて、今があるわけだよ。な?」
「はいはい、そーですね」
「だからさぁ…今更、波風立てたりなんか、しちゃダメなんだよな…」
「はいはい、…え?」
「ニノがさぁ、相葉くんのこと好きだなんてさぁ、もう、昔からずーっとわかってんだよ。俺だってさ…」
「………。」
「わかってんだよ。昔からさぁ、ずっと一緒で、もう、仲がいいとかそんな言葉じゃ足りないくらいのさ…。」
「……」
「わかってる。じゅーーぶんわかってる。
だけどさぁ…俺…俺は…俺だってずっと前から、アイツのこと。ニノのこと、好きなんだ…。」
「……っ!!」
ガタン、と大きな音を立てて、立ち上がった。
テーブルの上のグラスが倒れる。
「ニノはぁ、相葉くんが…すきだから…俺は…諦めて…あきらめようと…。なのに潤と相葉くんがぁ…
ニノのあんな顔…見てらんねーよ…」
翔さんはいつの間にか、テーブルにもたれて目を閉じている。
話し声も途切れ途切れの、独り言。
だけど…
「ニノが、好きなんだよ…ニノのこと…ずっと…」
衝撃の展開に俺は、わけがわからなくなって、荷物を持って、翔さんの家を飛び出した。
ドアが閉まる瞬間まで、翔さんの切ない声が、俺の名を呼んでいるのが聞こえていた。
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