で、俺んち。

途中で適当につまみを買って、ビールも買い足して。
勝手知ったる俺んちのキッチンで相葉さんが簡単なつまみ作ってくれたりして。
まあ、いつもの感じ。



「で?ニノ、どうした?」


「いきなりだな…。」


「なんかあったんだろ?お兄さんに相談してみな?」


「誰がお兄さんだよ。」


「オ!レ!」



ニヤリ片頬を上げて言う。



「オレ達何年一緒にいると思ってんだよ。お前が普段と違うなんてすぐわかんだよ。
なんかあったんだろ?」



確かに、相葉さんは意外と勘がいい。
よく見てんだよ。人のこと。
相手のことよく考えて、察して。
相手の幸せを考えて。
ホントにいい人なんだ。
そんなヤツだから、俺は…




だけど…

これだけは、
この悩みだけは、気づかれちゃいけない。
いけないんだ。
絶対に。




大丈夫、いける。
俺の演技力、なめんなよ。




「や、ゆうべちょっと遅かったからさ、寝不足だっただけだって。
何でもないっつーのにわざわざ来ちゃってさ。
ホント、迷惑だっつーの。
今から行けばまだ間に合うんじゃないの?潤くん待ってるかもよ。
ホント、俺のせいでデート邪魔されたとかさぁ、言われたくない訳よ。
早く行ってやったら?」




相葉さんは、真剣な顔で俺を覗き込む。

長いまつ毛の下の黒目がちの瞳が俺の顔を映す。
瞳の中の俺は、眉間にシワを寄せていかにも迷惑そうな表情だ。
大丈夫。
大丈夫…。



その瞳が、くるんと動いて、相葉さんは、困った顔をした。



「うん……そっか。ニノがそう言うなら…。」


そして、優しい…本当に優しい目で俺を見て、ニコッと微笑んだ。



「言いたくなったら、いつでも言えよ?」


「っ、だから、何でもないって言ってんだろ!」


「うんうん、わかった。」



余裕な表情で頭ポンポンすんじゃねーよ。
急に年上づらすんの、ホント困る…。



「ま、今日はニノんち泊まるから!」


「はぁ?何でよ?」


「いーからいーから!風呂借りんねー!」




そう言って勝手に行ってしまった相葉さんの背中を見送りながら…
今日も寝不足決定だな、と力無く思うのだった。