日々を明るく過ごせる女性を、食の力で増やしたい
スポーツ選手の栄養サポートや、スポーツ愛好家の体作りと食事についてのサポートに携わる管理栄養士・公認スポーツ栄養士の田澤 梓さん。
最近ではBeaulilyの美プロメンバーとして“みそ玉作り”のワークショップを開催するなど、3人のお子さんのママながら、精力的に活動しています。
ほんわかとした優しい雰囲気を持ちながら、「自分がやりたいと思ったことはやる!」というバイタリティー溢れる彼女に、お話をうかがいました。
Photo:小川麻央 Text:佐藤季子
――まずは“食”に興味を持ったキッカケから教えてください。
田澤 実家がパン屋なのが大きいと思います。父は2時半頃には起きてお店に向かう毎日で、夕飯の時間に一度帰宅して、家族みんなでご飯を食べ、夜7時の閉店に合わせてお店に戻るという生活でした。
忙しい中でも父が食事での家族団欒を大切にしてくれたおかげで、“食という場の大切さ”を知ることができたと思います。
――お父様は味にもこだわりがありましたか?
田澤 家での食事は母が全て作っていたのですが、父なりにこだわりがあったと思います。
例えば私がクッキーを焼く時も、砂糖とバターの合わせ方が悪いという指摘が入るんですよね(笑)。
美食家と言うと大げさですが、おいしさを追求するという意味で、普段の料理から厳しいところはありました。
――そんなご両親のもと育った梓さんですが、お店を継がずに栄養士になったのには、どんな理由が?
田澤 高校の家庭科の授業で、食が体に与える影響を習ったんですね。それが面白くて、食についてもっと深く学びたいなと思ったんです。
同じ時期に長野オリンピックが開催されて、スポーツでこんなに人を感動させることができるんだ、すごいなぁという思いから、スポーツにも関わりたいと思うようになって。
それで管理栄養士専攻コースのある大学に進学し、病気の方にはどういった食事を出したらいいかといった臨床栄養学や、食べたものが体の中でどう代謝されるかといった基礎勉強をして、卒業後に管理栄養士の免許を取りました。
――大学卒業後はどういったお仕事を?
田澤 委託給食の会社で、社員食堂のお昼の提供や、老人ホームの朝昼晩の食事提供、献立作成、給食のマネジメントなどをしていました。
13年間勤めたのですが、その間も食でスポーツ選手のサポートをしたいという気持ちがずっとあったので、給食管理の仕事と並行して、社会人野球部のサポートや、同じ会社の仲間とセミナーを開くなど、スポーツ栄養の勉強もしていました。
その後、公認スポーツ栄養士の資格の取得をキッカケにスポーツジムに配属され、栄養相談の仕事がメインになって、やっとスポーツの現場に来られた! と喜んでいたところ、駅伝チームのサポートの話をいただいて。それが3年前ですね。
――念願のお仕事に辿り着けたわけですね。
田澤 はい。しばらくして国立スポーツ科学センター(スポーツに関する各分野の研究者・医師等の専門家集団が連携しあって、国際競技力向上のための支援に取り組む機関)から非常勤職員のお誘いをいただいたのですが、そこは私にとって夢のような場所だったので、スポーツジムで1年半くらい働いたあと、大学在学の駅伝チームのサポートと並行して、国立スポーツ科学センターの非常勤職員になりました。
3人のお子さんの末っ子である0歳のお嬢さんと一緒に取材に応じてくださいました
――スポーツ栄養学というと、普通の食事とは気を付けることが全く違うわけですよね。
田澤 栄養素はそこまで変わらないのですが、摂取するエネルギー量が全く違いますね。
子どもだったら1日のエネルギー摂取量が1000キロカロリー前後のところを、体を大きくしないといけないスポーツ選手の場合は6000キロカロリーだったりするんですよ。
でも、長距離走の選手の場合は、たんぱく質は多いけれどエネルギーはもっと下げるというふうに、スポーツ選手の状況や要望によって変わってくるんです。相手によってどこに目標を持っていくかを考えるのが、また楽しいんですよね(笑)。
――スポーツ選手との関わりの中で、食事が身体に与える影響を実感した経験はありますか?
田澤 学生野球部のサポートをしていた時に、汗の匂いが変わってきたと言われたことがあります(笑)。
食べるものが変わったことで、汗が臭くなくなった、と。あとは、朝昼晩の3食を決まった時間に学校で食べるようになったことで、少食だった子もちゃんとお腹がすくようになって、たくさん食べられるようになったと聞いた時は嬉しかったですね。
些細なことですが、食事をちゃんと摂るという積み重ねが基礎体力のアップに繋がることを思うと、本当に食事は大事だなと思います。
――ほかに、お仕事をしていて喜びを感じたことがあれば教えてください。
田澤 栄養面談で、食事の話や栄養素の話をしないで終わってしまう時がたまにあるのですが、それでも私と話せて良かったと言っていただける時は嬉しいですね。
栄養士との面談というだけで、食事のことを色々言われるんじゃないかと不安になる方もいると思うんですね。
でも、スポーツ選手の場合、競技成績が上がらなくて悩んでいる時に息抜きになるような話をするだけでも気持ちが軽くなると思うので、直接的なサポートになっているかどうかは分かりませんが、お力になれたと感じられた時は、良かったなぁと思います。