赤司君と苑さんです。
ちと、シリアス。































赤司とつまらない事で喧嘩した。

発端はちょっとおしゃれをしようとしてスカートを上げた。その事に赤司が気が付く訳で…。
「苑は僕以外の奴らに抱かれたい訳?」
「はぁ!?」
「そんなにスカートを短くして、いつからそんなに淫乱になったの?」
「何言ってんの…?」
冷たい目で見られた。
違うのに、本当は赤司に可愛いねって言われたいから、恥ずかしいのを押さえて頑張ったのに…。何も知らないで…。
涙がこぼれそうになった、でも、グッと堪えて口を溢した。
「何で赤司にそんなことを言われなきゃいけない訳?赤司なんかに関係ない!!」

「っ!そうだな、僕には関係ないな。」
「赤司の馬鹿!!大っ嫌い!!」
赤司を見ずに走って逃げた。これ以上涙を押さえられない。学校を走り出ていった。











『赤司の馬鹿!!大っ嫌い!!』
苑に言われた言葉が木霊する。
部活も身に入らない、相当ショックだったんだろう。自分でも驚いている。
「あれ、赤司君、苑さんはどこに行ったのですか?」
「苑は帰った。」
「…。もしかして、赤司君、苑さんのスカートについて何か言いましたか?」
「!!」
「やっぱり、言ったんですね。多分、酷い事を。」
テツヤの言葉を強く否定できない。
「あのスカートは赤司君の為にした事なんですよ?桃井さんに聞いてまで頑張ってましたよ?」
「っ…。苑…。」
苑が恥ずかしそうに僕の前に立つ姿が浮かぶ。照れて笑う苑の姿。胸が締め付けられた。だが、僕が醜い嫉妬で苑を傷つけた、桜色の唇ギュッと噛みしめて、涙を堪えた姿を思い出す。辛く苦しくなった。
「僕は苑を傷つけたのか。」
「今からでも間に合います。苑さんを追って下さい。きっと、苑さんも許してくれると思います。いつもの公園にいると思いします。」
「!!すまない、ありがとうテツヤ。」
苑を追って、学校をあとにした。










夕暮れに染まるブランコにしょんぼりと座っていた。いつもの公園でもれなく、反省中…。
「言い過ぎた…。」
なんて事を言ってしまったんだろ…。
ごめんね、ごめんね赤司…。赤司を傷つけた…。
「ごめんね赤司…。」
自然に涙がぽろぽろ出てきた。
「帰ろ…。」
ブランコから腰を浮かせた。
子供がバスケをしながら笑ってる。
ボールがぽーんと道路の方へ行ってしまった。幸い、横断歩道は青だった。
子供がボールを持ち上げた時、
大きな音と黒い車が子供に突っ込もうとしていた。
「っ!危ないぃいぃぃ!!」子供に向かって走り出していた。











公園まで後少し、横断歩道が目の前で、子供がいたバスケットボールを抱えた子供、そして後ろから大きな音が聞こえた。
「危ないぃいぃぃ!!」
切り裂くような声、聞き慣れた。愛しい人の声。
目の前に見慣れた白い制服が子供を包んだ、
そして、




キキィーーーーーーー!!
ドンッ!!




白い制服は中を浮き、いつの間にか立ちどまっていた僕の足にあるのはあの子供が持っていたバスケットボール。

「苑!!」

僕は必死に呼んだ、そうでないことを願いながら。

「苑っ!!」

そして、白い制服の少女をくるりと自分の方へと向けた。
桜色の唇からは紅い紅い血が零れ、白い肌からも紅い血が見える。
うっすらと開かれた目は、僕を捕らえた。
「苑っ!!」
言いたくない言葉が口から零れた。










包んだ子供の体温が腕のなかにあった、だけど、右側から大きな槍に刺されたみたいな激痛がして、浮いた。
鳥になったみたいに地面が離れて見えたけど、すぐに灰色の板に叩きつけられた。
私の体はもう動かない。腕のなかにある体温は逃げて、叫んでいた。その時、私はずっとある名前を呼んでいた。
征十郎、征十郎、征十郎、征十郎、会いたいよ。征十郎ぉ…。
くるりと自分の体が回った。そこには、会いたい人がいた…。
征十郎ぉ…。
泣きそうで儚い征十郎がいた。










「苑っ!!」
「征十郎ぉ。」
ふわりと笑う苑。
「征十郎ぉ…、ごめんね…。」
じんわりと征十郎の制服を濡らす。
「しっかりしろ!!苑っ!!」
「征十郎ぉ…、ごめんね…、ごめんね…。」
「苑は悪くない!!」
「なかないで征十郎ぉ…、嘘だから…、」
「苑っ!!」
「大好きだよ、征十郎…。アイシテル…。」
白い手を僕の頬に這わせて、ゆっくり目を閉じて、幸せそうに笑って。
手が滑り落ちる。
「目を開けろ!!苑っ!!苑っんんんんんんんんんんんんんんんんんんん!!」
征十郎、ごめんね、アイシテル…。















「っ!!」
はっと目覚めた。
「あら、珍しいわね、征ちゃんが夢見だなんて。何を見てたの?」
玲央が僕に話し掛けた。
「昔の事だ…。」
ふっと捨てるようにコートへと向かった。










苑はもう僕の隣にはいない。
あの笑顔も見れない。
苑のあの言葉を返す事も、もう、許されない。













ピッピッピッピッピッピッピッピッピッ

定期的な音が白い部屋に響く。
真ん中に無数の管が集まっている。
そこには、一人の少女が眠っている。安らかに清らかに待つように眠っている。























end
続きです。


























部活後に、日毬を訪ねてきた。
「あの、ここに音無日毬さんは居ますか。」
柔らかい物腰で人あたりが良さそうな人だった。
「えっと、どちら様ですか?」
「あ、日毬の叔父です。」
ふわりと答えた。
「日毬の叔父さん…、日毬!!」
「日毬………?」
「はぁーーーい!!」
パタパタと日毬が来たが、
「お、叔父さん…?」
日毬の表情がピタリと止まった。
「日毬!」
日毬の叔父さんの表情がパッと明るくなったけど、日毬は反対に青くなっていった。
「日毬、話したい事があるんだ、いいか?」
「あ、はい…。」
暗い表情で叔父さんについていった。











翌日。
「今日限りで部活を止めさせて頂きます。突然ですみません…、部長…。」
「む、そうなのか。しかし、本当に突然だな。何かあるのか?」
「あ、い、家の事情で…。」
「そうか…。監督には、話してあるのか?」
「後で、話します…。」
「わかった…。」
「日毬!」
「た、辰也先輩…。」
「ちょっと、こっち来て!!」
日毬の細い手首をおもいっきり引っ張った。





「どう言う事だ!!いきなり止めるんなんて!!」
「か、家庭の事情です…!!」
「じゃあ、どうして目を見ないんだ!!」
「…っ!!」
日毬が嘘をついているのは、火を見るより明らかだった。何で、俺に言ってくれないんだ!!何で、こんなにも好きなのに!!どうして、俺に嘘をつくんだ!!俺から離れるんだ…!!
俺は、日毬の肩を掴んだ。
「日毬、俺は君の事が好きなんだ…。」
「えっ…。」
「好きなんだ…、日毬。離れないでくれ…。」
「っ!!た、辰也せんぱ」
「日毬!!」
後ろから大きな声が響いた。
びくっと日毬が反応して青くなった。
「日毬!!ここに居たのか、迎えにきたぞ。行こう。」
「はい…。」
叔父さんについていこうとしたが、日毬が叔父さんと少し話して俺の方にきた。
「辰也、先輩、私、大好きです。大好き…。────。」
「え?」
「では。」
パタパタと叔父の方に走っていった。










日毬は涙を浮かべて。
小さな可愛い口で
─タスケテ。─
と…。










「日毬は!?」
暁と唄夜が血相変えて俺に聞いてきた。
「叔父さんと一緒に」
「叔父!!」
「あいつ、出てきたのか!!」
「どう言う事だ?」
「日毬が危ない!!」























「辰也先輩っていうんだな、さっきの奴は。」
人懐っこい笑顔で叔父は私に言った。
私は、"それ"がすごく怖い。
「奴も日毬の事を呼び捨てだったな。」
背中の産毛が声に反応して震える。
「そんなに仲がいい奴がいたなんて、知らなかったよ…。」
細めにゆったりと描くカーブの目を感じるたび奥歯がカタカタとなりだす。
「なぁ、日毬…。」
小麦色の肌が、私の手を這う。
「日毬は、俺のだよな……?」
「ひっ!」
やだ!やだやだ!!私のすべてが否定する。
私の家族を奪ったこの男を。
ただ、私が欲しいというだけで家族を殺したこの男を。
家族を殺したにもかかわらず、精神異常で刑務所から出てきたこの男を。
私ノ全テガアノ男ヲヒテイスル。
タスケテ!タスケテ!
タスケテ!
助けてぇ!!辰也先輩!!
「日毬!!」
私の声に答えたかの様に、私の求めた人がいる。
「辰也、先輩…!!」
辰也先輩があの男を殴り、駆け寄ってきた。
「日毬!!日毬!!」
暖かい…。氷を溶かす焔が熱をくれる。
辰也先輩が助けてくれた。
「ふっ…、た、辰也せんぱ……い……!!」
「日毬…、もう、大丈夫だから…、安心して。側に居るから。もう、泣いていいんだよ…?」
「っ!!う、うわあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁあぁああぁあぁ!!」
関を切った様に私は泣き出した。
辰也先輩の暖かい体温に包まれて子供の様に泣いた。















日毬の叔父の異常さを二人から聞いて夢中で日毬を探した。
日毬を見つけた時は頭が真っ白になった。
気付いた時には、男は伸びていて、日毬を読んで抱き締めていた。氷みたいに冷えた体を暖める為に俺の熱を上げる。まだ、不安な顔が残る、泣いていない日毬…。もう、日毬は泣いていいんだ、いいんだ、日毬。





















「日毬、俺の事好きって本当?」
「っ!!ぇ!!」
「本当?」
「本当です…。」
「俺も日毬が大好き。付き合ってよ、日毬。」
「!!はぃ…。」
俺は日毬にキスをした。
俺の暖かな日だまりに俺の大好きな人。
私は唇に暖かさを感じながら受け入れた。
私の焔、氷の焔、優しい柔らかい暖かな私の大好きな人。

































happyend
こんばんは、お久しぶりですね…。
最近は、どうも忙しくって、なんか本当にすみません…。
今日は、ずっとほったらかしだった氷室さんと日毬の話です。氷室さんにライバル出現!?どうなる氷室さん!!みたいな、話です。それでは、どうぞ!!













「おはよう、日毬。」
外の色の白が黒くて小さな可愛い塊を強調している。後ろでリボン結びの赤いマフラーふんわりと翻して俺の方へくるりと回る。
「おはようございます。辰也先輩!」
暖かい笑顔が俺を出迎える。
「あ、あの、辰也先輩、昨日のお礼です。」
暖かいピンクとオレンジの間に白色のレース柄が緩やかな螺旋を描いたの包装紙に薄い水色のリボンが結ばれた小さな袋を出した。
「クッキーです。苦手だったら捨てても構いません。あ、ありがとうございました…。」
俯きながら渡してきた。頬に朱が刺してとっても可愛い。
嗚呼、捨てる訳がない。
このまま、腕の中に閉じ込めてしまいたい。困らせたい。そんな思考がぐるぐると回っていると。
「ひーまーりーぃ!!」
「まりーぃ!!」
俺の後ろから2つの塊が"俺の"日毬に抱き付いた。
「日毬!日毬!暖かぁーい!!」
「まりーぃ…。」
1つは、明るい声でターコイズブルーのマフラーの女子、2つ目は、静な声で灰色のマフラーの男子。
「暁(あき)に唄夜(うたや)!おはよう!!」
まあ、女子はいいとして…、問題は日毬の腰に巻き付いているコイツだ!!唄夜とか言う奴!!敦みたいなおっとりとした声の癖に行動が大胆だ!!
早く離さないかなと鋭い視線に気付いた2人が俺を見てにやりと笑って更に強く日毬に抱き付いた。
こんなところに、思わぬライバルがいたとは…。油断ならないね…。























その時に俺は甘味に浸透していて、本当の日毬を見ていなかった。たまに見せる憂いの顔は日毬を犯す毒がそうにさせていた事など知るわけが無かった。















「辰也、先輩、私、………………大好き、ありがとう、さよなら。」

































氷と日だまり-3-<思わぬライバルと毒の華>
続く-4-<毒の作用と氷の焔>