「人間万事塞翁が馬」、「禍福は糾える縄の如し(かふくはあざなえるなわのごとし)」。いずれも“不幸と思えることが幸福であったり”、“幸福と不幸は交互にやってくる”ことを意味し、陰陽の法則と同等の意味だと思っています。
 大切なことは、すべての出来事は、今後の幸せのために必要な出来事であり、すべてプラスの意味合いしかないと捉えることだと思います。

 でも個人(人間)は弱い。すぐに暗闇に心が奪われて、「自分の人生は情けないものだ、不幸だ、運がない」と考えてしまいます。

 しかし、そうではないのです。すべての出来事は幸せなことなのだと解釈できること、生きていること事態がプラスマイナス零以上の幸福の方向にあるという事実を知ることが必要です。(ただし、利己的な欲は可能な限り小さくしなければなりません。利己的な欲は幸福を打ち消します。)
 そして、私は未だ出来ていませんが、何があっても“明るく”“感謝する”“自分は運がいい” “有難う”と念じることが、心を楽にし、心の整理に必要なのだと思っています。
            
 森村グループ創業者 森村市左衛門( 1839年-1919年大正8年)は次のように言っています。
 「労働は神聖なもので、決して無駄になったり骨折り損になったりなどならない。正直な労働は枯れもせず腐りもせず、ちゃんと天が預かってくれる。どしどし働いて、できるだけ多く天に預けておく者ほど大きな収穫が得られる。私は初めからこういう考えで、ただ何がなしに天に貸すのだ、天に預けるのだと思い、今日まで働いてきたが、天はいかにも正直。三十年貸し続けたのが、今日現にどんどん返ってくるようになりました」と。

                              
 松下幸之助は次のように言っています。                                                         
 「自分の境遇や自分が置かれている立場をあれこれ悩んだり苦しんだり、情けなく思ったりするのではなく、すべて受け入れること。そうすれば、人生が拓ける。現状を受け入れると、肯定的・建設的・積極的な生き方に変わり、大変なパワーになる」と。

 京セラ創業者 稲盛和夫は次のように言っています。
 「世の現象はすべて、自分の心、考え方が招いたもの。よって、心の有り様、心の考え方次第で、人生も仕事も180度違ったものになる。よって、未来に希望を抱き、明るく積極的に行動していくことが、人生をより良くするための第一条件」と。

 トランプ関税により世界経済および日本経済界に激震が走っており、トランプ大統領の政策に対する非難が世界的に益々高まるのではないかと思います。

 一方、今から30年前に出された「平岩レポート」を思い出しました。
 そこには『世界と共に生きる日本』として、「日本が目指すべき経済社会として、内外に開かれた透明な経済社会、創造的で活力のある経済社会、生活者を優先する経済社会、世界と調和し世界から共感を得られる経済社会」と書かれており、“世界経済の調和ある発展”、“相互依存関係のある世界経済”、“国際的に調和のとれた世界均衡への貢献”となっていました。

              
 日本がこの30年間(空白の30年)を、平岩レポートに提示された“日本が目指すべき姿”をコツコツと実行し、世界をリードする国としての自覚を向上させていれば、今回のようなトランプ関税に一喜一憂することはなかったのではないかと思います。

 しかし、トランプ関税の中身や今回のやり方は、日本流でいうところの「三方良し」や、フランス語の「ノブレス・オブリージュ(noblesse oblige)」や、ノーベル平和賞受賞者(1952年)であるアルベルト・シュバイツァーの「我々は何かを得ることによって生活しているが人生は与えることによって豊かになる。戦に勝ちし国は喪に服するの礼をもってこれに処さねばならない」、そして「先義後利」等に反する所業ではないでしょうか。

                               
≪しかし、しかしです。見方を変えると・・・≫
 トランプ関税は、日本が世界と共にどう生きるべきかを考える機会を与えてくれました。
 アメリカに依存し過ぎてきたこと(対外不均衡の是正を怠ってきたこと)を反省し、新たな世界の秩序作りに、日本が歴史的に有する倫理観や道徳などの価値観をベースとする考え方を役立てる時が来たのではないかと思います。

 世界が和を以て貴しとなし、中庸をもって新たな価値観を築いてくれると嬉しい限りです。

                

 數土 文夫さん(すど ふみお。1941年~、JFEホールディングス元社長など)が、次のようなお話をしています。
 1990年前後、日本は世界の羨望の的でした。GDP順位、世界競争力ランキング等で、世界一位、二位を争う地位にありました。「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と称され、おだてられ、日本は浮かれていました。 
 しかし、急速に失速します。2024年のGDPは39位、G7の中でも最下位。世界競争力ランキングは過去最低の38位という悲惨な状態。失われた20年、30年と言われ続けながら、その失敗の原因がどこにあるのか、我々の過ちの本質が何かを明確にせず、無為に過ごしてきました。
 政治、経済、社会風潮において明らかな過ちを犯しています。特に社会風潮については、日本人が持っている美徳や恥の文化、伝統に培われた倫理観や道徳心はどこに消えたのでしょうか? 

 今から40年以上も前に、松下幸之助さんは松下政経塾を創立しましたが、創立の背景には、日本の将来を憂い、新しい国家経営を推進していく指導者の育成がありました。

 そして、エリート中のエリートと呼ばれた第一期生に対して最初に発した言葉が 
「君らには、ぜひ日本を代表する政治家になって欲しい。世界を代表するような立派な代表になって欲しい。ついては明日からしっかりと毎日勉強してほしいことがあるんや。明日から誰よりも朝早く起きて、身の回りの整理をしてほしい」、「知識の大切さは決して否定しないが、知識の量を増やす教育はここではしない。政経塾は生きた知恵を磨く場だ。知識も大事だけれども、知識はしょせん道具だ。どんな立派な道具を持っていても、それを使いこなす自分自身が人間として成長しなかったら、立派な道具も宝の持ち腐れだ」。
             
 また、京セラ創業者の稲盛和夫さんは、「私たちは戦後、荒廃した日本を再建し、豊かな人生を送ることをめざして懸命に働いてきました。やがて、世界第二位の経済大国となったことで、その願望は達成されたかのように思えました。ところが、物資的には豊かな生活が実現できたにもかかわらず、多くの人は満たされず、不安を抱きながら生きています。それは、人間の生き方や考え方について真剣に考えることなく、また足ることも、人を思いやることも忘れ、ただ利己的に生きているからではないかと思います。いま私たちに必要なことは、『人間は何のために生きるのか?』という根本的な問いに真正面から対峙し、人間としてもっともベーシックな哲学、人生観を確立することだと考えます」。

 

 今、日本人に求められていることは、日本人の根底にある勤勉性やその背景にある、自分の命や利益よりも社会の公益性を優先する利他の心、和の心、武士道などの精神性、言葉を換えれば、倫理道徳観を改めてひも解くタイミングに来ているのではないかと思います。