思考の整理日記 - アメブロ時代 -22ページ目

コンテンツの価値はタダになるのか?

日経新聞10月19日朝刊の経済教室に、「知的資源大国へ戦略を持て」という題で知的財産についての記事が掲載されていました。今回のエントリーでは、この経済教室の内容整理とコンテンツの価値について考えてみます。


■経済教室の内容整理

先端技術やアニメや漫画など、日本が生み出した「知的財産」は諸外国からの評価が高いものが少なくありません。今回の経済教室の筆者である金沢大学工業大学の杉光一成教授は、このような財産により、日本の経済・社会の活性化へどうつなげるかという視点も大切であると主張しています。知的財産を「資源」として海外に輸出して外貨を得ることで国富を増大させることを国家の目標とする「知的資源立国」を目指せ、という主張です。

著者は知的財産を石油などの天然資源と同様に資源とみなしていますが、一方で相違点もあると言います。第一に、知的資源は「無限」であること。例えば石油はいずれ埋蔵量を使い果たし枯渇する有限のものですが、特にアニメなどのコンテンツは人が思考をやめない限りは無限の産出が可能です。相違点の第二には、知的資源の「もろさ」。すなわち知的資源は究極的には情報にすぎず、石油などのモノが盗まれることに比べ、容易に流出する可能性があります。しかも、情報は一度流出してしまえば、その回収は非常に難しいのです。

こうした知的資源の特徴を踏まえ、著者の指す「知的資源立国」とは次のような考え方になります。「知的資源の国外への流出を最小化し、輸出を最大化することで国富を増大させることを目標とする国家戦略である」。なお、ここで言う輸出とは、外国で取得した権利を有効活用した海外事業収入および外国企業からのライセンス収入です。

経済教室では、特に知的資源の流出最小化という観点から具体的な政策例として、模倣品・海賊版拡散条約の交渉などを含む外交政策の強化、知的財産権侵害の取り締まりが緩い国に対しては毅然とした態度で臨む、などを挙げています。 

ここまでを整理します。すごくざっくりと書いてしまうと、以下のようになります。

・日本には知的財産があるが、外貨を稼ぐ資源として有効活用されていないのではないか
・コンテンツなどの知的資源は「情報」であり容易に流出する特徴がある
・よって、知的資源の流出最小化・輸出最大化を目標とする国家戦略を目指せ


■コンテンツの価値

マルクスとエンゲルスによる「資本論」では、商品には大きく2つの価値があるとしています。1つ目は「使用価値」。これは、個人の主観や状況によって異なり比べることのできない価値のことです。例えば、極端な例ですが、遭難して何日も食糧を口に入れていない人には食パンとダイヤモンドはどちらが使用価値があるでしょうか。おそらく、空腹を満たすパンのはずです。一方で多くの人にとってはダイヤモンドのほうが魅力がある。このように人やその状況で変わるのが使用価値です。2つ目は「交換価値」。商品の価値を数で認識し、客観的な価値のことです。例えば、つくられるのに要した労力や資源、時間の度合で価値を判断します。パンとダイヤモンドで言えば、その製造工程ではダイヤのほうが労力も時間もかかります。よって、交換価値が高いのはダイヤとなります。

ちなみに、お金になぜ価値があるかというと、上記のような商品の価値と交換できる存在だから。正確には、交換できると「信用」されているからです。お金があれば、それに応じて様々な物・サービスを買うことができます。でもお金に価値があるのは、(発行しているその国の)信用力が前提としてあることも忘れないようにしたいです。

さて、コンテンツには様々な種類があります。音楽データや映画・アニメ・ドラマなどの動画、漫画や書籍、ゲーム、など、あらためて考えてみると日本ではたくさんのコンテンツがあります。これらのコンテンツはコンピューターやネットなどのデジタル技術が発達したことで、ほぼ全てを情報やデータとして扱えるようになりました。例えば、音楽データはダウンロードでき、アニメなどはYouTubeで、ゲームもPCや携帯からオンラインで楽しめます。最近では、ようやく日本でも電子書籍について議論されるようになりました。

ここが重要な点だと思いますが、コンテンツがデータだということは、(規制がなければ)簡単にコピーできるということです。理論的には無限に増殖させることが可能で、かつコストはほとんどかかりません。そして、無限に増やせるということは希少価値は限りなくゼロになり、すなわち、価格はゼロとなってしまうのです。別の言い方をすれば、コンテンツにお金を払う価値がないということ。


■コンテンツでどう稼ぐか

ここで上記の経済教室です。著者は天然資源とは異なる知的資源の特徴として、無限と流出のしやすさの2点を挙げました。これを考慮し「流出最小化・輸出最大化を目標とする国家戦略」を目指せとしています。しかし、一方でコンテンツはタダなのです。

そこでどうなるかと言うと、1つは知的財産権などの規制により、コンテンツの無限増殖を防ぐことです。これでコンテンツに希少価値が生まれます。もう1つは、コンテンツは結局は時間を使うためのコト、あるいは減らないコトなので、いかに有限の(減ってしまう)モノに転換して、お金を稼ぐかではないでしょうか。具体的なイメージとしては、アニメ自体はコンテンツというコトなので、アニメ内の人気キャラをフィギュア化したモノを売る、といった感じです。フィギュアを作るには、石油などの有限資源が必要であり、つまりコンテンツのように無限に増やすことができず、それはすなわち希少価値があるということだからです。

コンテンツなどの知的資源に対して、「流出最小化・輸出最大化を目標とする国家戦略」を掲げたとしても、コンテンツの特徴を大きな流れで踏まえた上で実行しなければいけないなと思います。

Amazonの競争戦略ストーリー

「この商品を買った人はこんな商品も買っています」 - アマゾンには協調フィルタリングと呼ばれるレコメンド技術が使われています。レコメンドにより、自分と嗜好性の近いユーザーが好む商品が提示されます。


■Amazonのコンセプト

一方、別の商品をクリックすると、こんなメッセージが出てくることもあります。「お客様は、2010/8/9にこの商品を注文しました。」 このメッセージを見て、初めて自分はすでに買ったことがあることに気づき買うのをやめるでしょう。

なぜアマゾンは、このようなメッセージを表示してくれるのでしょうか。アマゾンにとっては機会損失とも言えます。それは、アマゾンのコンセプトを見ると理解できます。「ストーリーとしての競争戦略」(楠木 建 東洋経済新報社)という本には、アマゾンのコンセプトは次のように書かれています。「モノを売るのではなく、人々の購買の意思決定を助けるサービスを提供する」。アマゾンのレビュー機能や、アマゾン・マーケットプレイスにより中古品と新品が比較しやすいようになっているのも、このコンセプトに基づいています。


■Amazonの戦略ストーリー

書籍「ストーリーとしての競争戦略」の趣旨は次のようなものです。「優れた戦略とは思わず人に話したくなるようなストーリーだ」。アマゾンの戦略ストーリーの概念は下図のようになります(図1)。
思考の整理日記-101017 アマゾンの戦略ストーリー

アマゾンでしかできない経験を顧客に提供することで、それがトラフィックが増加につながり、サイト訪問者を増えることで売り手もまた多くなります。そうなると、ユーザーからすれば、選べる商品が増えますます顧客の経験を充実させます。このような成長サイクルにより、低コストが実現し、ひいては低価格で顧客に提供できる。これも顧客の経験につながります。アマゾンの戦略はこのような好循環のストーリーでまわっています。


■戦略ストーリーの5C

同書では、ストーリーの構成として、以下のような5Cを提示しています(表1)。
思考の整理日記-101017 戦略ストーリーの5C


■クリティカル・コア

この本で特におもしろかったのは、4つめのクリティカル・コアでした。ストーリーを起承転結で考えた場合、クリティカルコアは「転」に当たります。その特徴は「一見して非合理」としています。別の表現をすれば、部分最適ではないが全体で見ると理に適っているというもの(図2)。

思考の整理日記-101017 クリティカル・コア

「ストーリーとしての競争戦略」では、アマゾンのクリティカル・コアは「巨大な物流センターにある」と著者は指摘しています。ネットで店舗を持つということは、一見すると在庫管理やそのスペースから解放され身軽になることが期待できます。しかし、アマゾンは2000年当時から巨大な物流センターへの投資を続けていたようです。アマゾンのベゾスCEOは次のように公言しています。「倉庫こそアマゾンの最大の資産である」。

ではなぜアマゾンは物流センターと在庫を持つ道を選んだのでしょうか。アマゾンを利用していて感じるのは、商品の豊富さと確実な手配です。これにより、欲しい商品の検索・比較・購入・配送まで大きなストレスがなく、商品が手元に届きます。プレミアム会員であればエリアによって注文した商品がその日の当日に届けてもらうことも可能です。前述のアマゾンのコンセプトやストーリーという全体にとって、自前で物流センターを構築することは、彼らにとっては「合理的な」選択なのです。

しかし、外部の人間、特に競合他社にはアマゾンの全体像は見えず、物流センターは「一見して非合理」に見えます。ここだけを考えると、むしろやるべきことではない選択に映ります。一方のアマゾンにとっては、物流センターというクリティカルコアがあっての戦略ストーリー。このような競合他社によるクリティカルコアの模倣の忌避により、差異化も実現できます。


■最後に

「ストーリーとしての競争戦略」はなかなかおもしろい本でした。上記のようなコンセプトやクリティカルコアの説明だけではなく、多くの事例も掲載されています。アマゾン以外にも、スターバックスやサウスウエスト航空、マブチモーター、あるいは中古車販売のガリバーの戦略ストーリーなど、「思わず人に話したくなる」ものばかりでした。500ページ以上のボリュームのある本ですが、読んでよかったです。




次世代ネットTVとこれからの視聴率

TV番組の人気を知る指標の1つに、視聴率があります。


■視聴率の意義

日本では2000年3月以降、「ビデオリサーチ」(以下、VR)の調査結果がそのまま世帯視聴率となっており、同社のHPには視聴率を調査する意義として、以下の点が挙げられています。
 ・スポーツ番組や大事件が起きた時の特別番組などの視聴率から「国民の関心の高さを探る」
 ・視聴率の移り変わりから「社会の動きを知る」
 ・テレビ局や広告会社等が広告取引をする際に、テレビの媒体力や広告効果を測るため
 ・視聴者がテレビをよく見る時間帯やよく見る番組を知ることで、番組制作・番組編成に役立てる


■VRの視聴率調査

視聴率には「世帯視聴率」と「個人視聴率」の2つがあり、VRが集計をしているのは世帯をベースにした世帯視聴率です。例えば、視聴率が10%の番組というのは、テレビ所有世帯のうち10%の世帯でそのテレビ番組がつけられていた、ということになります。

少し専門的な話になりますが、視聴率の調査方法は大きく3つあります。1.PM(ピープルメータ)システム、2.オンラインメーターシステム、3.日記式アンケート(詳細はビデオリサーチHP)。現在のVRの視聴率調査仕様は以下の通りです(図1、表1)。

思考の整理日記-101016 VR視聴率調査エリア

思考の整理日記-101016 VR視聴率調査仕様

なお、VRでは視聴率の対象となるのは、地上波放送、BS放送、CS放送、CATVなどのテレビ放送で、VTRやDVRの録画・再生、テレビゲーム、パソコンによるテレビ放送の視聴などは視聴率に含まれません。


■Apple TVとGoogle TV

今年になって、アップルとグーグルのネットTV発売が話題になっています。アップルTVの特徴は、保存機能をなくしストリーミング放送に特化している、本体価格は99ドル、コンテンツレンタル料金はHD映画を4.99ドル・テレビ番組を99セント、などにあります。

一方で、グーグルTVの特徴は、TVとWebの融合で、TV番組から提携コンテンツやネットまでキーワードで検索できるという点にあります。例えば、TV番組を見ていて、最近気になる商品のCMが流れたので、関連情報をYouTubeや商品のウェブサイトをチェック。あるいは、ブログ、アマゾンや楽天市場、比較サイトなどで口コミや価格を調べる。場合によっては、ツイッターやSNSで友達にシェアしたりなどが、グーグルTVで全部できてしまいます。

おそらく、アップルTVとグーグルTVはそれぞれiOSとアンドロイドOS(あるいはクロームOS)で動くので、モバイルなどの周辺端末とも相性がいいはずです。具体的には、リビングで見ていた番組の続きを、外出先でモバイルで見ることなどの連携ができそうです。


■次世代ネットTVのコンテンツ

このように、特にグーグルTVにおいては従来のTVで視聴できるよりもコンテンツの種類が大きく増えます。動画系のコンテンツとそれ以外のコンテンツに分けて整理してみました(図2、図3)。
思考の整理日記-101016 コンテンツマトリクス(動画)
思考の整理日記-101016 コンテンツマトリクス(動画以外)

それぞれ、ぱっと思いついたままに挙げていますので厳密な意味ではないかもしれませんが、ここで強調して言いたいのは、グーグルTVのような新しい価値を提供する次世代ネットTVでは、従来のテレビで見られる番組と比べ多様なコンテンツを楽しむことができるという点です。


■これからの「視聴率」

日本の広告費は約5億2000億円で、うちテレビが約1兆7000億円、一方のネット広告は7000億であり、まだまだテレビのほうが1兆円ほど大きい状況です(2009年の電通調べ)。上記のように、ネットTVが普及し、テレビとネットの広告費は2つの相乗効果が認められればこれらの数字を単純に足し合わせた水準にとどまらず、合計額以上の規模になるかもしれません。

そう考えた時に、上記のような幅広いコンテンツを楽しむことを前提にした場合、冒頭で触れた視聴率では正しく知る指標としては物足りないような気がします。あるいは、前述の視聴率の意義を十分に果たせなくなるように思います。視聴率もまた変わらなければならないのではないでしょうか。

例えば、視聴「率」ではなく、視聴人数や視聴回数などの絶対数のほうが広告効果を測りやすいかもしれません。あるいは、視聴者はどういうリンクをたどり情報を得たのかも気になるところです。多くのコンテンツがオンライン上にあり、また各端末がアンドロイドなどのOSがベースになれば、現在の視聴率調査とは全く異なる新しい手法によりこれらのデータが得られることが期待できそうです。


※参考情報

○視聴率関連

視聴率について (ビデオリサーチ)
http://www.videor.co.jp/rating/wh/index.htm

視聴率 (Wikipedia)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%96%E8%81%B4%E7%8E%87

消費動向調査 - 平成22年3月実施 (内閣府)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/shouhi/2010/1003honbun.pdf

○Google TV / Apple TV

今度こそテレビとWebの統合なるか 「Google TV」は従来のWebテレビと何が違うのか? (@IT)
http://www.atmarkit.co.jp/news/201005/21/tv.html

グーグルTVでテレビはどう変わる? 広告主は歓迎、安いコストでテレビ広告が可能に (日経ビジネスオンライン)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20100528/214662/

Apple TVなんて目じゃない、ソニーが「Google TV」採用した理由 (Tech Wave)
http://techwave.jp/archives/51511941.html

早く日本にもやって来い! 新発売のApple TVに驚きの絶賛評価が続出中... (GIZMODE)
http://www.gizmodo.jp/2010/10/apple_tv_review.html

やはりアップルはインターネットテレビを出してきた (大西 宏のマーケティング・エッセンス)
http://ohnishi.livedoor.biz/archives/51124653.html

Apple TV対Google TV、勝つのはどちらか (ITmedia)
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1009/10/news011.html

○広告

2009年の日本の広告費 (電通)
http://www.dentsu.co.jp/news/release/2010/pdf/2010020-0222.pdf