相手も自分も動かす「自分ごと化」のススメ | 思考の整理日記 - アメブロ時代

相手も自分も動かす「自分ごと化」のススメ


メールを送って仕事の依頼を伝えたつもりが、こちらの意図が正しく伝わっていたなかった。仕事をされている方であれば一度はこんな経験があると思います。

■「伝える」と「伝わる」は同じではない

このような「伝える」と「伝わる」ことが必ずしも同じではないということを、マーケティングや広告の世界でも起こっているのではないか、という問題意識で書かれいてたのが「どう伝わったら、買いたくなるか」(藤田康人 ダイヤモンド社)という本でした。著者は、消費者が得られる情報が今ほど多様ではなかった時代では、メディアや企業から得られる情報が多くを占め、「伝えること」とはそのまま届くことであり、「届くこと」と同じ意味だったと言います。しかし、今や情報を伝えても、簡単には消費者に届かなくなり、届いたとしても伝わったことにはならない。そして、買ってもらうという行動につなげるのが以前よりも難しくなったという主張です。

では、伝えるためにはどうすればいいのか。本書のポイントは2つで、1つめが消費者が本当に聞きたいことを把握すること、そのためには消費者を観察し彼ら/彼女らのことを深く知ることといういわゆる消費者インサイトの重要性が挙げられています。2つめが伝えたい相手(ターゲットとなる消費者)にとっていかに「自分ごと」として受け取ってもらうかという発想でした。今回のエントリーでは、1点目の消費者インサイトについては論点とせず、2点目の自分ごとをテーマにして書いてみたいと思います。

■そのためには「自分ごと」として受け取ってもらうこと

自分ごとについての著者の主張をもう少し見てみます。「自分ごと」というのは、その情報が自分にどれだけ関係あると思うということを指していますが、確かに自分のことを思い返してみても自分には関係ないと思った瞬間に興味・関心は薄れてしまうものです。いかに自分ごと化できるかは、その情報にどれだけベネフィットがあるかがポイントであると書かれています。ベネフィットには2種類あり、その情報を得ることでトクをするという0⇒プラスのものと、それを知らないと損をするというマイナス⇒0の2つ。

広告だったりマーケティングというのは、ほとんどのものが消費者に自社のモノ・サービスを買ってもらうということを1つの目的としています。上記の考え方は、そのためにはベネフィットが伝わることで消費者にどれだけ自分に関係する情報だと認識してもらう、それができなければ「伝わる」までには至らないということなのだと思います。

受け手側にいかに「自分ごと化」してもらうか、この視点はマーケティングや広告以外にも応用できそうな考え方ではないか。これが本書を読んだ中であらためて気づいた点です。そしてこうして記事にしようと思った動機でもあります。

冒頭でメールの例を挙げていますが、メールを書く際にもこちらの言いたいことを書くだけではなく、相手の立場で文章構成がつくれるか、その中でプラスなものがあるメリットやマイナスになる事態を防げるなどのベネフィットがあれば、読んだ相手もこちらの伝えたかった内容が伝わりやすくなるのではないでしょうか。

ビジネスにおいてはメール以外にも、上司への報連相であったり、プレゼンなんかもこの考え方は活かせそうです。プレゼンでは受け手側の視点で見ると、発表資料を見ただけでも、オーディエンスの目線でつくられているのとそうではないものは結構分かれます。資料がオーディエンスにとって自分ごと化されている構成になっていれば、プレゼン自体もそのような形になっていき、例えばプレゼンの目的であるオーディエンスに次のアクションをとってもらうことにつなげられそうです。

■日経も自分ごとで読む

ここまではいかに受け手側で自分に関係があると思ってもらえるかという送り手側からの発想でしたが、自分が受け手側になった場合も、自分ごととして捉えるような意識が大事だと思っています。これと関連すると思ったのが以下のブログ記事で書かれていた内容でした。
正しい日経新聞の読み方。(特に新社会人へ)|My Life After MIT Sloan

この記事の内容を簡単に整理すると、ビジネス界にいる人が新聞を毎日読むのが大事であり、そのためには日経を例にどう読めばよいかがわかりやすく書かれています。具体的には、それぞれの記事から「意味合いを考える」ことであり、1.記事内の事実、2.解釈、3.自分は何を考えるべきか、という3ステップで構成です。例えとして、空・雨・傘が使われていて、イメージとしては、カーテンを開けると曇り空という事実から、雨が降るのではないかと解釈し、じゃあ今日は傘を持って出かけようというものです。一般化すると以下になります。
1.「空」=「事実」は何かを見極め
2.「雨」=そこから得られる自分の業界への影響を考え
3.「傘」=何をすべきか、どう手を打つべきか

2つ目の解釈、3つ目の自分は何を考えるか・行動するかという視点は、今回の記事のキーワードである「自分ごと化」と通じるものがあります。新聞記事を漠然と読むのではなく、事実をつかみ、そこからいかに自分に関係のある情報として得られるか。情報収集という意味でも、あるいは記事から連想することで世の中の流れをつかむためにも、このような読み方は意識するかしないかで、得られることが全然違ってくるのではないでしょうか。

■最後に

上記のブログ記事では、新聞を読む理由として、「理由は世の中で何が起こっているか、最新情報を捉え、それがどのように自分たちのビジネスに影響するか、どうすべきかを毎日考えなくてはならないから」と書かれていました。これには同意で、そのためには新聞に限らず、ネットでのブログやツイッターなどで情報を得る時、仕事でまわってくる資料やメールに触れる時にも、こういった発想が有効になると思います。そのためのポイントがいかに「自分ごと化」ができるかを意識してみてはいかがでしょうか。


※参考情報
正しい日経新聞の読み方。(特に新社会人へ)|My Life After MIT Sloan


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