あかねーさん
ちょっと物語を書いてみました。


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何十年か前

私は「鳥」でした。

鳥の中でも渡り鳥ではなく
その土地に一生暮らす鳥でした。

天高く青い空に羽を広げて自由に飛び
下を見ると
美しい緑ある森が何処までも続いています。

食べ物も豊富で
透き通る川で水を飲んだり
水浴びをしたり

眠る場所も快適で
沢山の鳥の仲間もいるし
沢山の生き物も暮らしています。

この大きな森は
多くの生き物に
幸せな場所を与えてくれていました。

私はこの土地で素晴らしい伴侶に出会い
結婚、そして子供にも恵まれて
一生懸命育て、旅立たせました。

そして次の年もまた子供が生まれ、育てて、、
と、私には沢山の家族が増えていったのです。

なんと幸せなのでしょう。
次の世代へ子孫(命)を繋ぐことが出来ることの幸せ。

きっとみんなみんな幸せだとそう思っている。

この喜びを感謝の気持ちを込めて
私たち鳥たちは歌っているのです。


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何年か経ち
老いた私もそろそろ命が消える時となりました。

楽しかった。幸せだった。

もし、また生まれ変われるなら
出来たらまた鳥となって
この土地に戻りたい。

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何十年か後

私は目覚めました。

輪廻転生したようで
私の魂は次の形に宿ったようです。

私は「飛ぶ」ことは出来るのですが
「鳥」ではなく

なんと

「ドローン」という
人間が開発した機械に生まれ変わっていたのです。

しかも、前世の記憶を残したまま、、。

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ドローンは
自分の意思で自由に動くことは出来ず
人間が操作した所しか飛ぶことが出来ないので
ちょっと窮屈です。

前の鳥の方が良かったけれど
それはもう仕方ないし
今世は今世で私の役目を果たしていこう。

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ありがたいことに
私は前世と同じ土地に戻ってきたようです。

自由は効かないけれど
あの美しい空や森をまた見ることが出来るのだから。

仲間たちは元気で暮らしているかな?
もしかしたら私の子孫たちがいるかもしれない。

楽しみです。
さぁ、いざ、飛んでみよう!
高く高く、空に向かって、、、

そして、瞳を下に向けてみよう

懐かしい景色に、、


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私は驚きに

胸が震え

力が抜け

機体が揺れ

何度も何度もバランスを崩しそうでした。


見下ろした世界

森の緑は消え

木々が無くなり茶色の土が剥き出しになり

その土の上にに黒い大きなパネルが
何枚も何枚も
何十枚も何十枚も
何百枚も何百枚も
何千枚も何千枚も
何万枚も何万枚も
何十万枚も何十万枚も

遠くまで遠くまで

広がっているのです。

なんという事なんでしょう。

ここは私が、いや私たち生き物が愛した
あの土地なのでしょうか?

森は何処に行ってしまったのでしょうか?

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「おーい!誰かいるかい?」

と、私は(テレパシーで)叫んでみました。

しかし
少しの生き物の声は聞こえるけれど
昔のあの賑やかな沢山の声は聞こえません。

私の鳥の仲間たちの声は
どこに行ってしまったのでしょう?

そして木々や森の命の声は
パネルに接続している機械の音に変わっていました。

その音は生きている音、命の音ではなく
歌を歌っている訳ではなく
無機質で不気味な死んだ音は
一日中止まらず
ずっとこの空間に鳴り響いています。

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私はこの場から去りたかった。
もうこんな光景を見たくなかった。

しかし私を操縦する人間は
このパネル(メガソーラー)を撮影するのが目的で

何度も何度もパネルの上に私を飛ばします。

また時には
パネルから離れた場所で
木々がある所の上を飛ばすのですが

そこは土砂が崩れたり
木々が倒れたりしている所だったり

何故こんな所を飛ぶのでしょう。
私はこんな痛々しい所を見たくないのに、、。


苦しい
寂しい
悲しい

そんな思いを持ちながら私は飛びます。


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そんな中

遠くから同じ仲間(ドローン)が飛んでいます。

どうも彼も鳥から輪廻転生をし
前世の記憶を残してドローンとして生まれ変わったようです。

私はその仲間に声をかけてみました。

「おーい!君も同じ仲間だね!」と。


しかし、、

彼は大きな涙を流して
大声でワンワン泣いているのです。


「どうしたんだい?そんなに泣いて」
と、私は尋ねてみました。


彼は泣きながら、こう叫んだのです。

「あなたの役目は写真を撮る事だよね。私の役目は、、私の役目は、、」

彼は嗚咽を出して更に激しく泣き

「私の役目は除草剤を撒くことなんだ。パネルの脇でようやく芽吹いて育っている草たちを除草剤で殺しているんだ。私は何ということをしているんだろう!」

「私は私は、昔私たちを守ってくれた森の子孫たちを殺しているなんて、、音を仇で返しているのが辛くて、悲しくて、、」


そんな彼の気持ちに私も泣いたのです。

「ごめんなさい。ごめんなさい」
ーと彼は何度も謝りながら、パネルが続く遠くへと除草剤を撒きながら去って行ったのです。


それを見つめながら、私は深く呼吸をし
空を見上げました。

美しく青い空。
この景色も変わっていくのでしょうか。


おわり

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原案 ヤマサキノリコ

本当はイラストで描きたいのですが、画力がないので
もしどなたか描いてくださると嬉しいです。

また色々とここからストーリーが膨らんで行くのも面白そうですね。



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