まだ幼かった頃に祖母にしてもらった昔話が忘れられない。

 

寝る前にお布団の中で聞く祖母の優しい語り口の昔話が大好きだった。

 

祖母がしてくれた昔話には、メルヘンなものもあったがその殆どが戦時中の話、

 

戦後の話、食べ物がなかった話、学校に行けずに悔しかった話・・・

 

そして狐や化け猫の話などがあった。

 

 

 

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むかーし、むかし、一本松のふもとの高崎という農家のお嫁さんが赤ちゃんを産んだけども、

 

忙しいので畑の畝のところに赤ちゃんを置いて野良仕事をしていた。

 

ところがふっと目をやると、どうしたことか赤ちゃんがいない。

 

この手の話も好きだった。

 

変なサスペンスドラマよりも、祖母のお話のほうがリアリティがあってドキドキした。

 

話し終えるといつも祖母はこう言った。

 

「ハルちゃんはおばあちゃんと一緒ねぇ。多分見えるものも嬉しいことも悲しいことも一緒なのね」

 

毎回、そう言った。

 

通算で50回、いや、それ以上は聞いたかもしれない。

 

その最後の言葉の意味だけよく分からなかったが、今になってなんとなくわかる。

 

今は亡き祖母も、何度も死にかけているというのに、自分だけいつも生き残ってきたという話をしていた。

 

防空壕の目の前で、友人が死んだのに自分は死ななかった、今でも忘れられない。戦争はほんとにいけんね・・・

 

と言っていた祖母。

 

私も、時々思う。

 

私の命は、運が悪ければとっくにここにない命なんだと。

 

祖母の話は、遠野物語のような要素に、さらに哲学的な何かを足したお話だった。

 

まだまだ聞きたかった祖母のむかし話。

 

生々しい現実味を帯びた話は、これからいくつかご紹介出来たらなぁと思っている。